オンとオフの切り替えがきちんとできるようになった。



「柿乃葉」を後にした柿本さんが最後に向かったのは、海。趣味であるサーフィンを通してその魅力を知り、ついには逗子に引っ越してくるほどに海が好きだと話します。
「時期にもよりますけど、週に2回はサーフィンをやりたいなと思ってます。海に入ったあとって頭がすごくクリアになるんです。ランニングとか、サウナもそうだと思うんですけど、ちょっと瞑想的な要素も感じますね。体のなかに溜まったものが全部外にでるというか、リセットされる感覚がありますね」

一方で、クルマに乗っている時間は柿本さんにとって「考える時間になっている」といいます。サーフィンがアウトプットだとしたら、運転はインプット。両者が生活の中でうまく共存し、いい流れを柿本さんにもたらしているのかもしれません。
「家から『柿乃葉』への行き来はクルマでしているんですが、運転中は音楽もつけづにひたすら考え事をしています。音楽をつけると思考がそっちに持っていかれちゃうんです。仕事のアイデアを形にするために、どうしたらいいのか? そんなことを考えるのに最適な場所なんです」



そろそろ日が落ちてきて、空が次第に暗くなってきました。この日はあいにくの曇り空で美しい夕焼けを臨むことはできませんでしたが、それでも微かに海が赤らんでいました。
「ここに一度住んでしまうと、もう東京には住めないと思うことがあります。いちばん大きいのは、オンとオフの切り替えがきちんとできるようになったこと。そのぶん、集中力もすごく増すんです。東京にいると、仕事じゃないときでもそういうモードに入っちゃってる感覚がありました。でもこっちに来ると、それが完全にオフになる。リラックスできて、着るものも変わります。それはここまで離れた場所じゃないとできないことなのかなと思いますね」



逗子と東京。その両方を行き来することで生まれるバランスは柿本さんにとって理想的で、「やっぱりこれだったという感覚があります」と語ります。最後に柿本さんに今後やりたいことについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「あと少しでぼくは40歳になるんですけど、もっと自由に自分のやりたいことを貪欲に形にしたいですね。それを実現するために『柿乃葉』をつくったので、いまはお店を充実させたいと思っています。お店は伝える場所だし、出来るだけ小さくシンプルな編集をして、ぼくひとりでやることに意味がある。いまは有難いことにお店に来てくれるのは東京からのお客さんが多いので、もっと地元の方にも来ていただけるように、信頼感のあるお店づくりをしていきたいと思っています」
