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アーティスト電力ってなんだ? いとうせいこうが語る、新しい電力とライフスタイル。
Futuristic energy

アーティスト電力ってなんだ? いとうせいこうが語る、新しい電力とライフスタイル。

東日本大地震以降の時代を生きる我々が、電力について考えることはある種の義務と言えるのかもしれません。再生可能エネルギーとして名高い、みんな電力が新しく始めたのが「アーティスト電力」です。ブロックチェーンを活用することで電力のトレーサビリティを確保しつつ、アーティストの発電所で作られた電気を購入できると言います。しかも、アーティストとファンが再生可能エネルギーの電気で繋がり、楽しみながらともに地球環境を守ることができるのだとか。そこでみんな電力の押しかけ課長でもあり、本プロジェクトにも大きく関わっている、いとうせいこうさんに取材を敢行。いとうせいこう is the poetとして出演したみんな電力特別協賛の「アースデイ東京2021」の舞台裏にお邪魔し、この取り組みについて語っていただきました。

  • Photo_Shota Kikuchi
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Yosuke Ishii
「アーティスト電力」

電気の生産者や空気の「顔の見える化」で社会をアップデートする、みんな電力株式会社がスタートする電気の仕組み。ブロックチェーンを活用した独自のP2P電力トラッキングシステム「ENECTION2.0」を用いて、アーティストが再生可能エネルギーの発電に参加でき、さらにアーティストの発電所で作られた電気を購入できるというもの。4月12日(月)より、先着100名限定(まだ若干数空きあり)でみんな電力の押しかけ課長でもある、いとうせいこう氏の電気を購入できるプラン「アーティスト電力」を開始した。発電所所在地は、福島県二本松市。 「アーティスト電力」3つのサービス特徴として、①アーティストの電気を購入できる!②限定ライブなどの開催!③アーティストや音楽関係者を支援できる! がある。
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中央集権型ではなく、自律分散型の電力を。

ー 改めて、「アーティスト電力」を考えるに至ったいきさつを教えてください。

みんな電力(以降、みんでん)から「アーティスト電力」の話を耳にしたんだけど、当初はアーティストが太陽光パネルを所有して、消費者が買うというものだったんだけど、それだとアーティストへの負担が大きい。パネルも安くないし、ある程度の枚数がないと電力は供給できないんだよね。そこで、アイデアを思いつく予感がしたからと、みんでんの社長はじめみんなを一堂に集めて、ちょっと待ってねと。そうしたら、ちゃんとアイデアを思いついたんだよ。締め切りってすごいもんでね(笑)。

ー アーティストが実際に所有するにはお金がかかって難しい太陽光パネルを、どう変えたんでしょうか?

バーチャルに太陽光パネルを、所有するっていう形にしているんだよね。実際に福島にあるパネルを、バーチャルで1/10、1/100で割ると消費者が所有できる。実際のリアルなパネルを分割するのは難しくても、バーチャルで権利を分けて売るならできる。「アーティスト電力」の発展型として考えている「電力シェアランド」というのは、色々なアーティストがパネルを所有しているというヴァーチャルな島をイメージしているんだけど、今回のプロジェクトは、その一段階前のもので、ぼくが福島の二本松に所有している“としている”ソーラーパネルを分割するというもの。選んでくれた消費者が電力を購入できて、でも足りない分は、他の再生可能エネルギーを使って補う。

ー 他の電力との大きな違いはなんでしょうか?

これまでの中央集権型の発電所は、100人いたら、100人分の電力を丸々つくって、必ず供給しなきゃいけないという考え方。でもぼくは、自律分散型でいいし、全部まかなえずとも、一部の電気でもいいと思う。足りない分は、他の再生可能エネルギーでやればいい。大きな企業が、大きな供給で、大きい需要に応えるというやり方が原発を生んだと思うしね。足りないものは、他で補填しようということが、みんでんでできるようになった。それはブロックチェーンによって電力をトレースできる技術を、みんでんだけが持っていたから。「いとうせいこう発電所」というのは、あくまでわかりやすさとインパクトを考えた結果だね。

ー 再生可能エネルギーだけで、必ず全てを賄う必要はないということですよね。

農家や野菜と同じで、できた分だけを売るというやり方でいいと思う。大きな供給で全てを賄うのか、社会が変わってきていて、どっちのライフスタイルを選ぶかという話だと思うんだよ。みんでんのアーティスト電力の方が、アーテイストに還元されるし、代わりにアーティストはお返しとして、ライブとか本を書くとか、そういう双方向のやり方ができる。ぼくも二ヶ月に一回とか考えなきゃいけないんだけど(笑)。みんでんは、そうやって電力だけでなく、文化も再生したいそうで、それはとても素晴らしいこと。

ー 改めて説明を聞くと、なるほどと感じました。

こういう新しいものを始める時は、成功例をひとつつくるのがいい。いとうせいこう発電所は、アーティストへの対価がちゃんとあって、再生可能エネルギーをつかって、作品などの文化を発表できる。かたや、消費者は、再生可能エネルギーを使っているというプライドが持てるし、ぼくと繋がりたいと思っている人は、繋がることができる。それが電力を通してというのがキモかな。

ー せいこうさんの名前貸しというのは、やはりアーティストがやるからこそ意義がありますね。

広告塔だよね。でも、これまでの広告塔と違うのは、ぼく自身がパネルを持っているということ。ぼくのパネルで生まれる電力を、みんでんが仲介して、みんなに届けている。あるいは、みんでんが持っているものを、ぼくが仲介して届けているとも言えるわけ。消費者もヴァーチャルに所有できてしまう。いままではパネルを所有するのに、何千万円もかかっていたけど、ブロックチェーンによりバーチャルで分割して、それが可能になった。あとは、パネルにストーリーが乗っているのがいいよね。バーチャルではあるんだけど、いまやバーチャルもリアルだから。

INFORMATION

みんな電力

https://minden.co.jp/

いとうせいこう発電所 / アーティスト電力

https://minden.co.jp/personal/shareland/seikoito/

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