CLOSE
FEATURE
加賀美さんと梶さんに質問です。 「カッコいい」ってなんですか?
What is Cool?

加賀美さんと梶さんに質問です。
「カッコいい」ってなんですか?

現代美術作家の加賀美健さんと、スタイリストでありファッションブランド〈サンセサンセ(SANSE SANSE)〉のディレクターでもあるの梶雄太さんは、古くからの友人同士。ふたりのは何事に対してもフラットな目線をもち、誰にも媚びず、独自のスタンスを貫いていてカッコいい。単に奇をてらうのではなく、きちんと意味があって筋が通っているのです。そんなおふたりに「カッコいい」について語ってもらいました。いつになく真面目(?)なトーンで話す加賀美さんと梶さんによる回答は、表現者として持っていたい矜持のようなものでした。

自分の言葉で語ることが大事なのかもしれない。

ー 若い世代と同じように、おふたりもフラットな目線をお持ちですよね。おもしろいと思ったものを素直におもしろいと仰ってるじゃないですか。

加賀美:大人になりきれない大人ってことだよね(笑)。

梶:だけど、俺の周りにいる人格者っていうと健くんだと思うんだよね。

一同:

梶:だってそうじゃない? それが健くんのおもしろいところでさ。

ー たしかに取材の申し込みをするときも、メールの返事がすごく早いですし、その上とても丁寧に返していただいています。

梶:子供もいてちゃんとしてるんだよ。でも、ユニークな感性を持っていて。その振り幅がいいよね。俺たちはちゃんと礼儀とかそういうの気にしながらやってるから。そうゆうマナーって言葉にできないじゃん。

加賀美:俺も梶くんも20年間、媚を売ってないよね。そういう人たちと絡むことはあっても、つっぱねたりしないんだけど、一方では媚を売ることもない。だからあっちも近づいてこないのかな?

ー きっとコントロールしづらいのではないでしょうか? メインに行けばいくほど完成された隙のないものをつくりたがると思うんです。だけど、おふたりの場合は枠組みを超えた何かをつくろうとしますよね。

加賀美:枠組み嫌いだし、コントロール嫌いだからね。枠組みの中に入れて、手っ取り早くお金儲けしたがるのかもね。おしゃれな言葉を書いて服をつくろうとしていたら、俺はダサい言葉書きたくなっちゃうんだよね。

梶:たとえば完成度が高い服ってあるでしょ? それを着ていれば他に合わせる必要がないような服。でも、そういう意味で〈サンセサンセ〉は100点の服じゃないんだよね。昔はみんな完成されたものにお金を払っていたけど、最近は未完成なほうが遊べるようになってきたと思うんだ。要は余白だよね。

俺や健くんが学生の頃もそんな時代だったと思う。おしゃれなやつって、学年にひとりかふたりしかいなかった。ファッションは本当に好きな人の趣味だったというか。だからクセのある服屋さんとかが成り立ってたんだよね。でも、ここ20年で誰でもおしゃれできる時代になったじゃん。ファストファッションの影響も大きいと思うんだけど。ある意味飽和状態になったからこそ、服に興味をなくす人もでてきたし、逆に自分らしいファッションを追求する人もでてきたと思う。つまり、昔に戻っているような気もするんだよね。

ー いまのおふたりにはスタイルがあると思うんですが、それは様々な時代を経た結果できたものですか? それとも、むかしからまったくブレずにいまの道を進んでいるのでしょうか?

加賀美:結果論じゃない?

梶:そうだね。感覚的って思われがちなんだけど、誰でも服に対するロジックって絶対あると思うんだ。そのロジックっていうのは、自分で紐解くから楽しんだよね。いろんなものが入り混じっての現在地点だから。

ー だけど、自分のロジックを見失ってしまう人も少なくないと思うんです。

梶:指標になる人っているじゃん。たとえば俺の場合はそれが健くんだったり、友達なんだよね。いま言ってたように、自分だけだと見失っちゃう。ひとりよがりになると時代に取り残されたりするし、頑なになりすぎて異質になっちゃうこともあり得る。俺は健くんとか友達がいて、その人たちとの社会やコミュニティができあがって、そこに身を置くことで自分を俯瞰して見やすくなっているんだと思う。

ー 単位が“自分”ではなく“社会”になることで、より視野が広がるということですね。

加賀美:共感できる人がいないとおもしろくないよね。それが大多数じゃなくてもいいんだけど。

梶:俺は裸で歩いていた時期もあったし、スタッズベルト巻いたり、革パンも履いてたな。でも、基本は変わらないね。ベースボールキャップはむかしから被ってた。アメカジから入って、ジーパン履いてっていう世代だからさ。

加賀美:本当におもしろい人なら裸になってもきっと魅力的なはずなんだよ。

梶:だから自分の言葉で語ることが大事なのかもね。俺も健くんもいろんな人の影響を受けているけど、最終的には自分で咀嚼して、自分の言葉で発信しているから。

加賀美:そうだね。結局ファッショニスタもインフルエンサーも、セレブリティも、みんな徒党を組んで発信してる感じがする。個人の力じゃなくて、集合の力になってる。そうやって仲間をつくれるのは素晴らしいことなのかもしれないけど、個人になったときに薄っぺらくならないようにしたいよね。

梶:そうだね。みんなの声じゃなくて、あなたの声を聞きたいと言われたときに、何を言えるかが大事だよね。きちんと自信を持って自分っていうものを定義できているかが重要。

ー 「自分の言葉で発信する」。これも3つ目のメモですね。

加賀美:かっこいい人はかっこいいもん、やっていることが。

梶:あと、発信するのに勇気がいるからね。失敗のリスクだってあるわけだから。

INFORMATION
このエントリーをはてなブックマークに追加