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FEATURE
FASHION IN TURBULENT TIMESファッションにおける主観と客観。VOL.02
MONTHLY JOURNAL SEP. 2021

FASHION IN TURBULENT TIMES
ファッションにおける主観と客観。VOL.02

ますます細分化されていくファッションの世界。もはや絶対的な正解は存在せず、ひとそれぞれが自分の好き・嫌いを楽しむマイクロトレンド時代が到来しました。そんななかでのファッション特集、テーマは “主観” と “客観” です。いまフイナムが注目するブランドと、ショップバイヤーに聞く、ダイナミックなトレンド動向を一本ずつの記事にまとめます。今回は “客観” 編。オープンから10年の節目を迎えた石川・小松の「フェートン(PHAETON)」、今年10月に東京への進出を控える関西の雄「ロフトマン(LOFTMAN)」、いつの時代も “ベーシック” を巧みに咀嚼する神戸発の「ビショップ(Bshop)」にフォーカスしました。長引く自粛生活で服が売れないと言われる時代、そんななかでも攻めに出る3つのショップの秘策とは。

  • Photo_Shinpei Hanawa, Kazuma Yamano
  • Text_Shohei Kuroda
  • Edit_Ryo Muramatsu

PROFILE

坂矢 悠詞人
「フェートン」代表

石川の小松空港からほど近いロードサイドにポツッと佇む「フェートン」をはじめ、会員制ティーサロン「ティートン」や金沢に店を構える「ポータークラシック」「オールドジョー」など計7店舗を運営。メルセデスやポルシェ、ジャガーと十数台のクラシックカーを乗りこなす無類の車マニア。

パワフルなエンジンを積んだ服はいつの時代も美しい。

ー 坂矢さん自身が考えるこの秋冬のファッションの傾向を教えてください。

着やすくてコンフォートなデザインは当然として捉えていて、この秋冬は美しいカラーリングや柄使いに注目していますね。個人的には全身がピンクでもいいくらい(笑)。そういう意味では「フェートン」で取り扱っている、ロンドン発のデザインスタジオ〈トゥーグッド〉や糸の選定からデザインするイタリアの〈イザベラ ステファネッリ〉はその好例ですね。

ー ここ最近、思われていることなんですか?

1年前くらいからですね。正直、シンプルな服を見続けていることもありまして。クルマ好きの自分が表現するなら、どれほどのパワフルなエンジンを積んでいるかどうか。ただ単に派手だったらいいというのではなく、根底にあるものが不変的でないといけません。〈トゥーグッド〉や〈イザベラ ステファネッリ〉だけでなく、いつも最高のパンツをデザインする〈ナイジェル ケーボン〉、〈ポータークラシック〉と〈オールドジョー〉も素晴らしいですね。どんどん加速がよくなっていると感じています。

ー 〈ポータークラシック〉と〈オールドジョー〉は現在、「フェートン」ではなく金沢でそれぞれオンリーショップとして展開していますね。

そうですね。「フェートン」で販売もしつつ、もっとフルラインでお見せしたいと思いオンリーショップとして展開しています。オンリーショップで展開するのは、そういった意図がありまして。〈ポータークラシック〉は9年前にはじめた当初は1ヵ月に1着も売れなかったんですよ。その当時は「剣道着が15万円もするの!」なんて言われて(笑)。いまでは周知の通り日本を代表するブランドとして人気を博しています。〈オールドジョー〉は創業当初からいまも一貫してスタイルを変えない。どのシーズンのものも毎年着れるわけですから、ファンが増えますよね。

toogood “THE DRAUGHTSMAN SHIRTS” 「新しいワークウエア」と坂矢さんが言う〈トゥーグッド〉。こちらの「ドローツマンシャツ」はタフなシャツ生地に15世紀のスリップウエアの柄をハンドペイント。たっぷりと設けた身幅でコンフォートな着心地を実現。¥99,000

Isabella Stefanalli 「フェートン」の10周年記念で過去につくっていた不規則なギンガムチェック柄を復刻。特別にネイビーで染色した生地を、〈イザベラ ステファネッリ〉を代表するコートとトートバッグに落とし込んだ。(共に価格はお問い合わせ下さい)

ー 共にワークウエアをベースとしたブランドですよね?

まさに働くひとが着る働く服だと考えています。コンフォートなパターンを引きながら、堅牢性が高くて気負いなく着られます。ぼくはドイツ製品を愛用していて、なかでも〈ライカ〉のオールドレンズを全種類揃えているんですが、やっぱり壊れないものは素晴らしいですね。その一方で花にも目がなく、時間の経過とともに枯れていく美しさも好きなんです。ユーザーと歳を一緒に重ねてくれる〈トゥーグッド〉と〈イザベラ ステファネッリ〉の服は他のブランドにはない魅力が詰まっています。

ー その他に隠し球っぽいブランドがあれば教えてください。

この秋冬は〈シーピーカンパニー〉がスタートします。アウターは正直、このブランド一択。自分のなかで化繊のキングだと思っています。ぼくは勝手に “アカイカ” って呼んでるんですけど、羽毛が透けて見えるダウンジャケットはオンリーワンのでき栄えです。「フェートン」では新しいブランドをセレクトする際、“トライミーティング” と題してそのブランドでお店を一色に染めるイベントを開催しています。メーカーの方をお呼びして、顧客さんと一緒になってスタッフも説明を聞きながら。〈シーピーカンパニー〉のトライミーティングは10月の中旬を予定しています。あとはクルマで例えるとタイヤ部分になるシューズは絶対に外しません。なぜなら、あらゆるブランドの靴を解体して見てきたので。中身を覗くことですべてが分かるんですよ。そのなかでも〈フラテッリ ジャコメッティ〉は細部に至るまで本物。短靴とブーツを合わせて、新作として6型ほどが入荷します。

C.P. COMPANY “Co-Ted Down Jacket” 今シーズンから展開する〈シーピーカンパニー〉のダウンジャケット。裏面に防水・防染コーティングを施したタスランナイロンにダウンを封入。水や風を通さない重厚感のある素材によって、どんな環境下でも身体に沿うように仕立てた美しいフォルムをキープ。¥162,000

F.LLI Giacometti “MARMOLADA” 昔ながらの製法で作られたトレッキングブーツを、「フェートン」のオーダーでアフリカンエレファントの革を用いてアレンジ。世界でも特に珍しいレザーは表情豊か。¥209,000

ー 都会から離れた場所にあるからこそ、「フェートン」に行くのがひとつのイベントなのかなと勝手に思ってしまいました。

実は県外からのお客さんが8割を占めています。この場所にひとを呼ぶのは相当なエネルギーが必要でしたよ。今年で「フェートン」は10周年を迎えましたが、最初の2年間はひとなんて来なかったですから。「ブランキージェットシティ」の照井利幸さんを呼んでインストアライブをやったり、料理研究家・渡辺康啓さんによるイタリアンの料理会を開いたり、〈ポータークラシック〉の吉田克幸さん・玲雄さんをお招きしたワークショップは9年前から毎年のように開催しています。本当に小さいことの積み重ねですよね。お客さんとのコミュニケーションは常に大切にしています。10年前とスタンスが変わらないからこそ、コロナの影響も受けずに右肩上がりで成長できているんだなと実感していますね。

ー その結果、石川の新しい動線まで生み出したそうですね。

「ティートン」で紅茶を味わった後に「フェートン」でショッピングを楽しみ、そして「大勉強」(同店が独自に発行する雑誌)を読んで石川県の飲食店に足を運んでもらう。都会じゃ絶対にあり得ないですよね。田園風景のなかにある店ですが、いまはこの場所に「フェートン」を出店して間違ってなかったなと再確認しています。

石川・小松空港からクルマで約10分の距離にある「フェートン」。田園風景に突如あらわれるショップは圧巻。

INFORMATION

フェートン

営業:12:00〜20:00
住所:石川県加賀市伊切町い239
電話:0761-74-1881
オフィシャルサイト

ロフトマンコープ 京都

営業:12:00〜18:00(緊急事態宣言中のため時短営業)
住所:京都府京都市中京区寺町通蛸薬師下ル円福寺前町280
電話:075-212-5352
オフィシャルサイト

ビショップ

電話:03-5775-3266
オフィシャルサイト

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