時代に合わせたアップデートを。
今回のモチーフになったM-48テストサンプル（中）と、M-65フィッシュテールパーカ（左）のオリジナル
ー ディテールは、M-48のテストサンプルをモチーフにしているとのことですが、どの部分ですか？
森山：腕のシガレットポケットが一般的なM-48のディテールで、ライナー用のスナップボタンがテストサンプルのディテールです。デザインとして効いていたので採用しました。
栗原：そのディテールがおもしろいし、古着好きも「それ何？」って気になると思います。
比翼の横に配した4つのドットボタンはM-48テストサンプルがデザインソース。良いアクセントになっている。
ー 特にホワイトは、スナップボタンがデザインとして目立っていますね。
栗原：ここ数年、米軍のスノーカモなんかも人気があるから、ホワイトのミリタリーもいいですね。このアウターは近代ミリタリーのアウターと同様に洗えるから、ホワイトでも汚れを気にしなくて済みますし。なにより軽くて暖かい。
中綿はプリマロフトを封入しているので保温性は申し分なし。重厚な見た目とは裏腹に軽量なのも嬉しい。
森山：そうなんです。もともとM-65 フィッシュテールパーカが好きでよく着ているんですけど、もう少し軽いほうが着やすいと思っていました。前回はフード付きで作ったから、今回はフードをなしにして、着こなしで遊べる自由度の高いデザインにしました。インナーにパーカを着てもフードを出しやすいし、少し開ければシャツとかの首元も見せられます。
栗原：M-65 フィッシュテールパーカは数が少なくなってきているから、ライナーとフード付きのフルセットが高価なんです。でも、ぼくも森山さんも、結局フードを外して着ているんですよね。だから、アップデートするなら、フードはないほうが理想です。
首元はM-65フィッシュテールパーカと同様にフードなしのスタンドネック仕様に。
ー 栗原さんは、アップデートされたミリタリーウエアをどのように捉えていますか？
栗原：〈ワイルドシングス〉なら米海兵隊に納入していたハッピースーツを持っていて、タクティカルラインはチェックしていました。でも、この5年くらいは、そういった軍モノの放出品が減ってきて、探してもなかなか見つからない状況。だからこうしたアイテムを作ってもらえるのは嬉しいです。
ー しかも、オシャレに着られるように工夫されているのもいいですよね。
栗原：古着で存在するものは古着でいいと思っちゃうので、ディテールを完全に再現しているレプリカよりも、こういうデザインがアップデートされているものの方が個人的に好みです。
森山：M-65 フィッシュテールパーカは首元が留められないので、ボタンを付けて留められるようにアップデートしました。袖口のボタンは、女性が着ても留められる位置にしています。そういった変更点もありますが、実用的な部分はそのままに。例えば、ウエストのドローコードは内側に隠すこともできたけど、ジップを外して脱いでも、腰で留められるように、コードを外側に出したままにしました。
ー LとXXLの2サイズ展開も特殊ですが、その狙いは？
森山：前回のモンスターパーカは、メンズとレディースで分けていたんですけど、もっと幅を広げるために2サイズだけにしました。普通のオーバーサイズと、かなりのオーバーサイズ。生地の動きを楽しんで着こなしてもらいたいので、狙いとしては男性にLサイズ、女性にXXLサイズを着てもらうことを想定しました。男性がLサイズを着ても十分オーバーシルエットですし、女性が XXL サイズを着るとワンピースのようになります。もちろん、皆様の感覚でサイズは選んでいただければと思いますが。
栗原：M-65 フィッシュテールパーカは、2010年くらいまでサイズはXSが主流でしたよね。それが少なくなって、Sサイズも人気になり、ここ2年くらいはオーバーサイズの流行りもあってMサイズも動くようになりました。昔は買い付けもしなかったLサイズやXLサイズの問い合わせも来るんですよね。ぼくは自分用にXSをストックしていますけど、いま着るなら大きめにSサイズ。同じアイテムでも、需要が変わってきて、大きいサイズが求められているのでいいと思います。
森山：若い世代の古着に対する価値観も変わってきていますよね。〈77サーカ〉は、基本的に古着の再構築が中心なので、こういったディテールを見て、古着に興味を持ってもらえたら嬉しいです。背景を知った上で着た方が、ファッションが楽しくなると思いますからね。
