
PROFILE
音楽レーベル会社から独立後、イベントの主催からギャラリー、レストラン経営などを経て、2017年にアウトドアと旅のコンセプトショップ「パーヴェイヤーズ(Purveyors)」をオープン。「森、道、市場。」「太陽と星空のサーカス」「パーヴェイヤーズ・ショー」などのイベントオーガナイザーの顔も持つ。最近は熱気球に興味あり。

アウトドア界は情報戦争真っ只中
ー 去年、今年とキャンプは世間的に取り上げられることが多々ありましたが、小林さんの目から見てどうでしょう?
小林:オープンエアーが推奨されたことでキャンプはすごく伸びたので、コロナウイルスの影響はすごくありましたね。業界全体が右肩上がりになっていると思います。一昔前とは違って、お金のあるひともキャンプやアウトドアに興味を持っている印象ですね。ハイブランドを持つ、海外に行く、みたいなところではなくて、自然のなかで過ごす時間を持つことが豊さの指標になっているような。「まあ2ヶ月に1回くらい、キャンプに行くのもいいよね」って感じで。

ー なんとなくウェルネスな気分は高まっていますよね。
小林:ただ流行りすぎて、ちょっと変な感じになっている部分もありますね。たとえば家族でキャンプに行くようなひとたちが、ソロ向けの道具を使っているような…。
ぼくみたいに山を登りながら渓流釣りを楽しむ場合、荷物を最小限に抑えなければならないのでコンパクトさ、軽量さを追求しますが、家族で車を使って行く場合はもっと適切なものがあるはずなんです。

ー とくに子どもが一緒なら、しっかりした座り心地のいいチェアや、広いテーブルを使った方が快適ですね。なぜそんなことが?
小林:いまや情報があふれすぎていますよね。そのなかには間違った内容も多いし、なかなか正確には伝わりきらない。売り手側もそこまでしっかり面倒を見切れない場合が多いんじゃないかなと。ぼくらもファミリー向けの〈ゼインアーツ〉とソロ向けの〈サマヤ〉のテントを一緒に扱ったりしているので、ともすれば混乱させかねないお店ではあると思います。

小林:アウトドアにまつわるブランドやショップはめちゃくちゃ増えていて、ぼくらのお店にも営業の電話や問合せなんかがしょっちゅう来ます。
「パーヴェイヤーズ」が桐生にできたばかりの5年前は、北関東にアウトドアのセレクトショップなんかほとんどなかったのに…。“「パーヴェイヤーズ」に感化されて、お店をつくりました!”なんて声もいただいて、どんどん業界が盛り上がってきている雰囲気もあって、最初のころはやっぱりうれしかったですね。

ー 市場が拡大するとそれだけ業界が発展していきますよね。
小林:その分すこし弊害もありますけどね。この盛り上がりを見て、まったく別の業界からもひとが参入するようになりました。それは“一緒にアウトドアを盛り上げていこう”ってひとたちだけじゃなくて、これまで草の根を分けながら土壌をつくってきた先人たちの周りで商売するようなひとも少なからずいます。
もちろん商売の世界でそれは往々にしてあることだし、ぼくが止めるようなことでもないですしね。ただその結果、アウトドアが文化として根付かず、去ってしまうひとが増えるかもしれないことが悲しいかなとは思います。