正解が分からず悶々とする日々が続いた。
KEN:みんなが立派すぎるから参考になるか分からないけど(笑)、ぼくが18、19歳の頃はラップ始めたての頃。高校生の時に始めたんだけど、普通に受験勉強して早稲田大学に入るまでは、友達と趣味でやってるくらいだった。サークルでみんなに会って、初めて本気でラップできるみたいになり、今日いる「FAMILY」とかで、平日のかなり前の時間帯に10分枠をもらって数人でやったり。でも人はほとんどいなくて、人を呼んで、呼べなかったらノルマ分を自分で払う。そんな感じだから、ライブがない日はバイトして、ライブのある日はライブの赤字を払ってみたいな生活。なんのために働いてるんだろうみたいな(笑)。
一同:(笑)。

収録は1996年にオープンし、数々のヒップホップアーティストを輩出してきた渋谷の「club bar FAMILY」で行われた。もちろん、KEN THE 390さんも大学生時代からライブを行ってきた所縁の場所。
KEN:とにかくライブの本数が欲しくて、空いてる日はいろんなクラブへ顔を出しに行って、SNSもない時代だから足で稼ぎまくってライブをもらって。でも当時、勉強して大学に入って世の中的には頑張って来たって感じだけど、ヒップホップ的にはそれがアウェイで。「なんでお前みたいなやつがいるんだよ」ってなるから、それもキツい。すごい好きだけど、本当にこれでいいんだっけ? って壁にもぶつかって。高校生の頃は周りの友達しかいなかったから、その中で一番うまかったら無敵というか、俺が時代を変えるんだくらいに思ってた。でも、そんなことはなかったし、アウェイな感じで正解が分からなくて悶々とする日々が続いてたかな。
イシイ:ちょうどいま、悶々としてますね。1年前に福岡から出てきたんですけど、イケる、絶対かませるみたいに思って上京してみたら、もうかまされまくりで。上京して半年ぐらい経った頃は、「ちょっともう自然に逃げ込みてえ…」みたいになって。
KEN:イケると思うよね、分かるよ!(笑)。すげえやつ、いっぱいいるぜってなるよね。
イシイ:ポジティブ人間だったんですけど、初めてネガティブな要素が体から出てきて。やばいなっていろんな人に相談して、結局やるしかねえ、とりあえずやり続けなきゃ何も変わらないみたいになって。いまは自分の才能とかも一旦疑っちゃうくらい悶々してます。成功するビジョンが見えて東京に来たんですけど、このまま俺はどんな大人になるんだろうかって。
KEN:みんな通る道だし、今後何回もあるんだよね。いろんな人に出会ったり、いままで接してこなかった年代の人に会ったりすると、自分の実力を客観視できたり、目指していた世界がより具体的に見えて、足りないことも分ってくる。社会人になってもう一段、急に40、50代ぐらいの人の前にポンって出ていって、そこでまた自分を見つめ直して。何度も何度もやっていくことの、ファーストステップにぶち当たるんだよね。

ズキ子:イベントをやっているんですけど、コロナが始まったタイミングで予定していたイベントが中止になって。ウン十万円の赤字になった時、17歳とかだったんですよ。地獄だな〜(笑)みたいにすごい参っちゃったんですけど、でもやっぱりヒップホップって無限大だなって思うので、勉強になりますね。
KEN:傍から見てても、あの人数感は10代が動かす規模感のイベントじゃないよね(笑)。ちゃんと自分でもう1回いけるところまで持って来れてるのはすごいね。白川くんはどう?
白川:ほかの大学もフリーペーパーをつくっているんですけど、見てみるとめちゃくちゃ面白いのがあるんです。そのあとに自分がつくったのを見返しちゃうと、そんなにだなって。超面白いと思ってつくってるんですけど、すごいのを見たあとに見ると、こんなにしょぼいので満足しちゃったんだって自分にイラっとします。その分、次にやる時はブラッシュアップして、もっと面白いものをつくらなきゃって思うんですけど。
KEN:オレらもリリースするまでは、超いい曲できたってずっと思ってるよ。めちゃくちゃ聴くんだけど、世に出るとそうでもなかったのかもしれないなっていうのもある。
白川:なんでこれそのまま出しちゃったんだろうとか。こういう風に変えようって話してたのに、「いや、こっちの方がよくない?」なんて出しちゃったけど、「直した方がよかったよね」みたいな感じで。
KEN:評価されることによって自信もつくし、自分を疑ってしまうところもあるよね。思ったほどの評価を得られなかった時とか、なんでだろうって。「見る目ねえぜ」って思い切れたらいいんだけど、なかなかその決断に辿り着けないからヘコむし。逆に思った以上に評価されると、モチベーションが上がったり。「オレはイケるんだ」みたいに(笑)。