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家から考える日本人の心地よいツボ。NIHON NOIE PROJECTが手がける現代の和の家。
What is Japaneseness?

家から考える日本人の心地よいツボ。
NIHON NOIE PROJECTが手がける現代の和の家。

住宅ブランド〈ドライブ(Dolive)〉が「株式会社社外取締役」と京都の人気テキスタイルブランド〈ソウソウ(SOU・SOU)〉と手を組み、和の家を手がけるという。「株式会社社外取締役」といえば、建築家・起業家の谷尻誠氏、〈ビームス(BEAMS)〉コミュニケーションディレクター⼟井地博⽒、「BETSUDAI Inc. TOKYO」のCEO・林哲平氏がメンバーの百戦錬磨のクリエイティブプロダクション。となれば、どんな空間に仕上がっているのか興味は尽きないということで、モデルハウスが立つ大分の温泉地・湯布院に飛びました。空間を味わい、座談会から浮かび上がってきたのは、日本人の原風景やアフターコロナの暮らし方、地方がもつポテンシャルなど、これからの時代に考える新しい暮らし方のヒントでした。

  • Photo_Mina Soma
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Ryo Komuta

建築を作ることは、ロケーションデザインである。

建築、建造物はその土地や環境との対話の中で作られるべきだ。街並みを保全することが当たり前のヨーロッパに比べて、日本の街では、あまり街づくりのルールは厳しくない。街とどう関係付けるかは、施主や建築家、住宅メーカーに委ねられていると言ってもいい。その問題について、このモデルハウスを建てたことで、林さんの中で確固たるものができあがったという。

山の稜線が見える絶景のなかに、サウナを設置。このロケーションだけでととのいそう。

「建築は、ロケーションデザインだなと感じました。先ほどお話ししたように、軒の高さによって外が見える・見えないが決まるので、今回は建物と外の環境との関係性が強いんです。住宅のデザインをするときに、ロケーションデザインがないと、クリエイティブディレクションができないなと。常々そう思っていましたが、その思いを一層強くしました。あの建物のデザインが好きだから、あれを買いたいと買ってしまっても、例えば全然違うロケーションにそのデザインをポンとはめても違和感が残ってしまう」(林さん)

施主が決まり、土地が決まり、土地の詳細など含めて全体をロケハンして、どういう提案でいこうかという、そのアートディレクションが規格住宅に対してはされづらいんです。今回のようにこの土地にこうやってはめてみると、ずば抜けていいなと。以前『THE HOUSE GARAGE PROJECT by GORDON MILLER』という規格住宅を手がけたんですが、基本的には街中にある分譲地にセットするというやり方でした。建物はとてもいいものだし、僕らもよくやる手法ですし、暮らし方もなんとなく想像はできるんです。でも、今回の物件は元々こういう自然に囲まれた土地をイメージして作っている家だから、全体的な満足度はやっぱり変わってくるんだろうなと感じています」(林さん)

水風呂スペースもしっかり確保したサウナユニット。ひと昔前までは、自宅にサウナなんて夢のまた夢、全くもって現実感のない話だったけど、今なら違う。一家に一台といっても過言ではない?!

住宅購入を考える多くの人が検討するであろう規格住宅。家を建てるには大きな一つの選択肢になるだろう。でも規格住宅の弊害、というか、規格住宅が見過ごしている部分も確実にある。

「規格住宅を買うときの決め手は、間取りや値段……、あとは場所。場所と言っても、駅から何分という意味での場所。街の風景やその敷地内の庭との関係性をどうするのかという考えで作られた規格住宅というものは、まずないんです。でも、実際は町の一部であり、庭も含めた家を作るので、本当はそういったものとの関係について考えないといけなません。実際、ほとんどの規格住宅は、プロダクトのように作られて、買われていき、その土地に置くという考え。一方、この住宅は何かしら外との関係をいつも意識しています」(谷尻さん)

確かに、規格住宅でそこまで街や周りの環境との関係性について考えているものは珍しい。

「その関係性がないからこそ、シンプルモダンになっちゃうんですよね。家の建物でいえば、例えばシンプルな四角い箱の家がやっぱりうけてます。その理由は、セットしやすいから。だから、僕らみたいなプレイヤーがしっかり住宅自体をディレクションしないと、何も考えていないような建売住宅が増えて、街のデザイン自体が崩れていってしまう。そして、そういうことは、天才たちだけに任せていたらダメだなと。プロダクトを作るぼくらがしっかりと具現化して取り組まないといけないなと思います」(林さん)

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