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Let’s Eat vol.2ファッションと通ずる、名店のカジュアルライン。
MONTHLY JOURNAL JUNE 2022

Let’s Eat vol.2
ファッションと通ずる、名店のカジュアルライン。

ミシュラン、ワールドベスト50、食べログの100名店などの格付けが食のすべてではありません。そこからこぼれ落ちる魅力もたくさんあるわけで…。とはいえ、てっぺんを目指して、しのぎを削ってきたレストランがおいしくないわけがない。今回はファッションにも通じるような、ミシュランの星を獲得したレストランの味を楽しめる、カジュアルラインのお店を紹介します。清水寺から飛び降りる覚悟も要らない、財布にも優しめな価格設定と抜群の味をお約束します。

01 SMOKE DOOR

薪火と聞いて、浮かぶイメージといえば、“組んだ薪の上に肉を吊るして火を当て焼く”ような豪快な料理かもしれない。でも、2022年にオープンしたばかりの薪火レストラン「SMOKE DOOR(スモークドア)」では、そんな光景を見ることは滅多にない。

熾火の中で瞬間火入れした 海老の薪焼き ¥2,508

「薪火は豪快なイメージが強いと思うんですが、実はすごく繊細なんです。(食材に直接火を当てる)直火で調理することは滅多にありません。薪火には、燻製、遠赤外線で調理する遠火、着火した薪が炎を出さずに芯の部分が真っ赤に燃えている状態の熾火(おきび)という3つの方法があります。薪火は、火の温度管理や食材にどこまで火入れするかなどの技術が重要です」

そう教えてくれたのは、代表の雨宮 龍さん。たとえば、カリフラワーは何日もかけて遠火で火入れすることで、外はカリカリなのに、中は水分を含んだ面白い食感に。他にも、エビを熾火に入れて瞬間的に火入れすることで、生の状態と焼いている状態を同時に味わえる。

薪火を操るのは、豊富な経験を持つシェフのタイラー・バージズさん。サンフランシスコにある、ミシュラン三ツ星の薪火料理レストラン「Saison(セゾン)」でエグゼクティブスーシェフを務めた人物。「Saison」を訪れたことのある雨宮さんは、同店をこう評す。

「アジアベスト50、ワールドベスト50のお店を重点的に回ったことがあるんですが、『Saison』が一番クオリティが高く、革新的なことをやっていると感じました。アメリカというと大味なイメージもあると思いますが、真逆でしたね。味覚が敏感だと言われている日本人でさえ驚くレベルでした。とはいえ、一人当たりの単価が80,000〜100,000円くらいするんです」

もちろん価格やコスパだけの話ではないけれど、ハイプライスの技術と味を、リーズナブルに味わえるというのは「SMOKE DOOR」の大きな魅力だ。

左手前:48時間調理したチキンの薪焼き ¥2,508、左奥:24時間炙ったカリフラワーの薪焼き ¥968、右:畑のキャビア じゃがいものガレットとパンケーキ ¥1,738

「この店の単価は、6,000〜7,000円くらいです。価格を抑えるために、使うのは高級食材ではなく、我々が“スイートスポット”と呼ぶ、食材の食べ頃を見極めることが重要です。そうすれば、高級でなくても、おいしく食べられます」

消費者にとって、お店の努力によってハイクオリティな料理をリーズナブルに楽しめるのはプラス以外の何物でもない。一方雨宮さんにとっては、営利だけではない、使命感と意思が原動力になっているらしい。

アボカドトースト(¥748)とサケベルムース ハイボール(¥858)

「わたしはこれまでにアッパーなレストランにずっと携わってきた人間で、たとえばタイラーとであれば、10席くらいの予約困難なハイクオリティなお店をやるのはそんなに難しいことではありません。でも、ここではこの価格帯でどこまでやれるかチャレンジしたいし、これだけの席数(134席)のお店として、色々なひとに楽しんでもらいたいんです。ホテルのダイニングという形を選んだのも地域に開かれているから。この場所からこの地域の魅力を発信できたら、食をやる意義があるなと思います」

PROFILE

SMOKE DOOR

住所:神奈川県横浜市西区南幸2-16-28 HOTEL THE KNOT YOKOHAMA 1F
電話:050-3174-8172
hotel-the-knot.jp/yokohama/smoke-door/

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