衣食住における、ゆるさの重要性。

鳥羽:そういえば、常さんはSUPやってますよね。あれ、すごい楽しそうだなと。
長坂:神田川とか隅田川とか、江戸川から新川へと渡っていくような流れで進んでいったりしていて、すごい楽しいです。 お台場からレインボーブリッジの下をSUPで進んで、月島でもんじゃを食べて帰るとかも。暑くなったら、水に飛び込んで浮いていれば涼しくなるし。
鳥羽:めっちゃいいな、SUPやりたいっすね。じゃあ、SUPを持っていれば、日本のどこでも行けるってことですよね。
長坂:それこそヴェニスでもやったから。ボードはたためるし、軽いから旅行先に送っとけばいい。
鳥羽:ぼく、趣味がないんすよ。ネットで服やスニーカーを探すとかばかりで健康的じゃないけど、SUPは健康的でいいな。
長坂:最後の目的地だけ決めておいて、美味しいお店でご飯を食べて帰るのが結構いいんですよ。たとえば、荷物の袋を全部SUPに結びつけて、市川あたりからみんなでスタートして、錦糸町まで流れて、そこでSUPを上げて畳む。場所が場所なら、SUPの上で釣りができるから、釣って、料理したりとか。

鳥羽:めちゃくちゃいいですね。SUP、すごい気になっちゃってる。
長坂:楽なのがいいんですよ。おじさんに向いてる。あとは、横浜にも運河とか意外とあるじゃないですか。海よりも運河や川の方が面白い。たどって、いろんなところに行けるので。ビールを何本か持って、浮きながら花見にも行きましたよ。花火も見たいですけどね。
鳥羽:花火を見るSUPはやりたいですね。ぼく、おにぎりつくりますよ。常さんは旅が好きなんすね。
長坂:好きっていうか、それが仕事みたいなもので、いろんなところに行っては仕事してますから。
鳥羽:ぼくの理想は、全国に一緒にやっているレストランがあること。行けば自分の宿があって、そこで料理するみたいになったら、厨房もいらない究極の料理人みたいなものじゃないですか。
長坂:それは本当に羨ましいよね。ぼくは物書きが一番羨ましい職業で、建築家もそういうことができたらいいなってずっと思ってました。料理人はいまの時代であれば、できるんじゃないですか。

鳥羽:そうなんすよ。残りの人生を、誰と何をして過ごすかってめちゃくちゃ大事じゃないですか。その中で、その土地のもので、その土地の人たちと何かをつくり上げていく作業って、すごく魅力を感じます。地方がいま注目されているのもわかります。
長坂:ちゃんと情報をコントロールして、お客さんに来てもらえるようにセッティングできる時代になりましたからね。鳥羽さんが来るスケジュールを全部カレンダーにすれば、必ずお客さんは来るから。だから、持っている必要はあまりないかもしれない。
鳥羽:たしかに、場所を持っている必要がないっすね。
長坂:食材を求めていって、その場でつくれるようになったらすごいですよね。でも、建築はやっぱり時間がかかりすぎるんですよね。
鳥羽:そうですよね。最初の段階でぼくらはただ料理するだけだからいいけど、建物ができるまでは時間がかかりすぎちゃう。でも、その時間も含めていいっすけどね。

長坂:そうですね。以前、ニューヨークでお店をつくる時に、どうしたらニューヨークで、日本のつくり手として面白いことができるかと考えた末、壊される予定だった一軒家の部材を全部東京に集めて加工して、現地で立て直すというというのをやったんだけど、ああいうポップアップ的なつくり方はすごい面白いなと思いました。
鳥羽:そういう衣食住で、もっと気軽にポップアップして、その場所ごとに何かやっていくってのは可能性を感じます。
長坂:ですよね。いまは日本の物価が世界に比べて安いから、いろんなところに呼んでもらって、そういうことができるんじゃないかなって。
鳥羽:しかも、地方はめっちゃ安い。そういうフレキシブルさが今後の時代には必要なのかなと思うし、料理人もそうなってたらいいなって。思うのは、コロナで料理人はレストランにいるのが当たり前という概念が崩れた。じゃあ食を通して何をやるかと考える中で、外に出ていく話を衣食住まわりの人と話すと、服も重要ということになる。昔はおしゃれって、シュって見えるカッコいいやつだったけど、いまはビッグサイズ大歓迎! みたいに、年々着やすい服を着るようになっていっている。でも、そういうゆるさみたいなものがいいなと思うし、地方っていい意味でその余白がある。服も人生も余白があるのがいいなって思いますね。
