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ルーク・メイヤーが語る、OAMCはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのか。
Interview with Luke Meier

ルーク・メイヤーが語る、OAMCはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのか。

フイナムでたびたび取材してきた〈OAMC〉のデザイナー、ルーク・メイヤー。日本にも数多くのファンを抱える同ブランドは、ロゴアイテムやSNS映えするデザインが持てはやされる中で、トレンドからは幾分離れた地点で独自の美学を貫いてきた。とにかく、ものづくりの基準が全くブレない。一方で、「ピースメーカー」シリーズのヒットやサステナブルライン「RE:WORK」での挑戦、そして藤原ヒロシらとの協業を積み重ねながら、ブランドのあり方は着実に拡張している。実際に、ルークと話すたびにその内容はどんどんアップデートされていった。〈OAMC〉は、いまや孤高の光を放っている。このブランドはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのかーー4年ぶりに来日したルーク本人に改めて訊いた。

  • Photo_Naoya Matsumoto
  • Text_Hiroaki Nagahata
  • Cooperation_Miuko Nakao
  • Edit_Ryo Muramatsu

「この視点以外は存在すべきではない」というスタンスは取りたくない。

ー多少つっけんどんな質問になってしまうのですが、そのメディアを通して言いたいことは何でしょうか?

ルーク:何かひとつの視点を強く押し付けるものにはしたくはないんです。もちろん、自分の視点を表現したいはしたい。だけど、「この視点以外は存在すべきではない」というスタンスは取りたくない。というのも、そもそも〈OAMC〉のプロダクトは恵まれたひとたちだけが手に取れる贅沢品であり、けっして政治的なものではないと自覚しているので。

ー最近は『プロヴォーク』(60年代後半に中平卓馬らによって創刊された写真同人誌)や〈フラグメント デザイン〉〈ダブルタップス〉など、日本のブランドとのコラボレーションが続いています。もちろん裏原のカルチャーに多大な影響を受けていることは存じていたのですが、それにしてもここまでダイレクトな形で繋がることは予想していませんでした。

ルーク:え、本当に? 意外でしたか?

ーはい、あくまで個人的な感覚ですが。コラボといえば全く異なる個性、アプローチを持つ者同士で行うものだと思っていましたし、でも、今回は両者の “共感” がすごく自然な形でプロダクトに結実しているなと感じました。なかなか新しいやり方ですよね。

ルーク:そのリアクションは嬉しいですね。コラボレーションに関しては特に、予想できるようなことをやっても面白くないと思っていたので。日本のことは常に尊敬の眼差しで見てきました。私がジェームズと一緒に仕事をやりはじめた90年代後半、日本はエキサイティングな存在感を放っていました。はじめて日本を訪れたのは確か1998年のこと。日本のブランドが発しているメッセージ、ものづくりのクオリティ、インディペンデント精神に深く共感を抱きました。

ヒロシさんのこともずっと尊敬しています。長い間、素晴らしい仕事を続けていますし、とてもクレバーな方です。実は昨日も挨拶がてらランチを食べてきました。(生産の拠点を置いている)ミラノで会うこともあります。ヒロシさんとのコラボレーションは、お互いに似た視点を持っているのでとても自然で、まるでおしゃべりをしているような感じで進んでいきました。「こんな製品をつくって、ああして、こうして」という大袈裟なコンセプトがあったわけではなく、ただ自然にアイデアを共有した、というような。

ーその “おしゃべり” の内容を少し教えてもらえますか?

ルーク:「ピースメーカー」(「Peacemaker」のロゴが各アイテムにプリントされたシリーズ。2016年秋冬からスタート。一部の売上金が慈善団体「Immigration Families Together」に寄付される)のロゴ、シンボルについてぼくから軽く説明をしただけですよ。あとは…自然について話しました。自然由来のファブリックとか、オーガニックな染めとか、あるいは「街の外に出る」というアイデアについて。最近になって私もそういうライフスタイルを取り入れたいと思うようになったし、おそらく多くのひとが同じように感じているはず。パンデミックのことは横に置いたとしても、たまにはコンクリートだらけの街の外に出てみたいと思うのは当然のこと。今回のコラボレーションにあたって新たにシェアしたのはそれくらいですかね。

今年9月に発表された〈OAMC〉×〈フラグメント デザイン〉のカプセルコレクション。キルティングのライナーやヴィンテージのスノーパーカに両者のロゴとフラワーアートをあしらっている。天然染料によるオーバーダイも特徴のひとつ。

ーあまり企画会議っぽくなくて最高ですね(笑)。

ルーク:そう、ただのおしゃべりなので(笑)。今回はとにかく、自分のブランドとヒロシさんのブランドを合体させるだけでクールに感じられました。それと、90年代のブランドにあったバイブスを出せたのも気に入っています。こうやってロゴを大きく打ち出すデザインは、普段の〈OAMC〉ではやりません。だけど今回に限っては、(ロゴを活用することによって)自分の歴史やルーツを素直に表現できた気がします。

ー先ほど「日本のブランドが持つインディペンデントな精神に共感した」というお話がありましたが、特に『プロヴォーク』に関してはあくまで同人誌ですし、日本でも大勢が知っている媒体ではありません。ルークさんはインディペンデントという言葉をどのように定義しますか?

ルーク:インディペンデントでいるということは、自由だということ。もちろんその姿勢を貫くのは簡単なことではありませんが、私たちが一番求めているのは常にそれなんです。といっても、(ビジネスパートナーの)アルノーの意見はまた違うかもしれないんだけど…どう?(アルノーが「まあそれでいいよ」というジェスチャーを返す)よかった、彼も大体同じだって。

ー(笑)

ルーク:そもそもこの仕事に惹かれたのも、インディペンデントな精神への憧れからでした。幼い頃から、インディペンデントなスケートボードの会社や、ラジオ、小規模なレコードレーベルといったものが好きだったんです。それこそ、90年代の日本にはそういうものが豊富でしたよね。みんな大企業とは無縁で、ただ「クールなアイデアがあるんだから、やってみよう。それをひとにどう伝えるかは自分たちでコントロールしたい」という考えを持っていたんじゃないかな。最近は、そういうことを気にするひとが少なくなった気がしますが、私にとっては重要なことです。

『プロヴォーク』との取り組みでは、写真家の森山大道と写真家で評論家でもある中平卓馬のイメージ、そして岡田隆彦の詩による6点のコレクションが展開された。

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