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ルーク・メイヤーが語る、OAMCはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのか。
Interview with Luke Meier

ルーク・メイヤーが語る、OAMCはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのか。

フイナムでたびたび取材してきた〈OAMC〉のデザイナー、ルーク・メイヤー。日本にも数多くのファンを抱える同ブランドは、ロゴアイテムやSNS映えするデザインが持てはやされる中で、トレンドからは幾分離れた地点で独自の美学を貫いてきた。とにかく、ものづくりの基準が全くブレない。一方で、「ピースメーカー」シリーズのヒットやサステナブルライン「RE:WORK」での挑戦、そして藤原ヒロシらとの協業を積み重ねながら、ブランドのあり方は着実に拡張している。実際に、ルークと話すたびにその内容はどんどんアップデートされていった。〈OAMC〉は、いまや孤高の光を放っている。このブランドはどこから来て、いまどんな場所にいて、これからどこへ向かうのかーー4年ぶりに来日したルーク本人に改めて訊いた。

  • Photo_Naoya Matsumoto
  • Text_Hiroaki Nagahata
  • Cooperation_Miuko Nakao
  • Edit_Ryo Muramatsu

できるだけ “作品” と “実売用のアイテム” を同じにしたい。

ーなるほど。そういえば、昔のインタビューで将来コラボレーションしたい相手として、川久保玲さんの名前を挙げていましたよね。

ルーク:インディペンデントな姿勢を貫いている、という意味でも素晴らしいデザイナーであることは間違いありません。ファッションとはすなわち、商業とアートの融合であり、デザイナーはその2つの仲介者なんです。川久保さんは、アートの部分をピュアな状態に保つことに成功していますよね。その誠実さを保つことはとても難しい。パリという老舗ラグジュアリーブランドがひしめく街に飛び込んで、「他人のことなんて気にしない。私は自分が信じることをやるんだ」というスピリットを保ち続けているという点でも、言葉では言い表せないほど尊敬しています。

ーでは、〈OAMC〉のコレクションの中で、アート的な側面と実用的な側面を繋ぐ際の工夫、技術的な解決法を教えてもらえますか?

ルーク:その2つを分けて考えているわけではありません。両方の側面で上手くやる必要があります。私はアーティストとして作品を発表しているわけではなく、あくまでビジネスとしてファッションブランドを運営している…「どこまで大きくするのか?」という点については、それだけで一本のインタビューになるくらい話すと時間がかかるので、ここではやめておきますが(笑)。ビジネスとして成立させるためには、〈OAMC〉のアイテムが現実の世界で着られるものでなくてはいけません。誰かのライブを観に行く時に選ばれるものであってほしい。できるだけ “作品” と “実売用のアイテム” を同じにしたいんです。

ーそういう意味で、「RE:WORK」のコレクションはひとつの理想的な形でしたね。まず、ものづくりがサステナブルであること、アートピースとしての魅力、そして着用性。そのすべてが備わっているように見えました。

ルーク:それはものすごく嬉しい意見です。私も同じような手応えを感じていました。「RE:WORK」で特に難しかったのは、マテリアルの形がひとつひとつ異なっていたこと。ですから、ある意味では “オートクチュール” だった。いわゆるインダストリアルなものづくりとは違って、それぞれのピースを丁寧に扱わなければいけなくて。けれど、仰る通り、同時に実用的なデザインを目指していました。結果として、マテリアルを上手くアップサイクルできたと思っています。

今年2月に発表された「RE:WORK」のコレクションはミリタリーウェアを使って製作。

ー古着を使って現代的な見た目をつくる、というのは、言葉にするのは簡単ですが実際は難しいことですよね。何かロールモデルになったようなものはあったんですか?

ルーク:オーバーダイの手法に関しては、自分たちは割と早くから実践してきました。そもそもファッション業界がサステナブルではないことは、みんなよく理解しているはず。航空会社が「私たちはサステナブルです」と言っているようなもので、そんなことはあり得ない。けれど、いまよりずっといいやり方はあるはず。「RE:WORK」は「もともと素晴らしいピースを使って、より現代的なものにできるか? フィーリングを変えられるか? さらに何らかの形で〈OAMC〉の世界観と融合できるか?」というチャレンジに挑んだコレクションでした。例えば、ライナージャケット。ミリタリーやスポーツの服というのは、それ以上改善する余地がないという意味で完璧なデザイン。けれど、それをどうにか自分たちの世界に融合させたかったんです。

ー実は以前、「ロンハーマン」まで「RE:WORK」のコレクションを見に行ったんですが、その時はお金が足りなくて買えなかったんです(笑)。ですが、これはある意味で “オートクチュール” なんだというお話を伺って、その価格の背景がよく分かりました。

ルーク:「RE:WORK」のアイテムがけっして安くないことは承知しています。「RE:WORK」のピースをつくるのはとても大変だから。通常のシャツやジャケット、パンツをつくる際には、布を何枚も重ねて機械で一気に切り抜き、一度に100ピースを進行していくことも可能です。しかし「RE:WORK」の服は、ひとつずつしか進行することができません。ですから、ほぼハンドメイドのようなものなんです。ただ、「RE:WORK」はまだはじまったばかりなので、もっと工夫できることがありそうです。

ーそれでは最後の質問です。いまの商品ラインナップを拝見するとかなり完成されつつある印象を受けるのですが、〈OAMC〉として今後どのような展望をお持ちですか?

ルーク:ただ新しいプロダクトをつくるためだけに大きなコレクションをやることはないと思います。プロダクトを増やすことなんて、誰も求めてないですから。最近は「自分たちのやっていることを、いかにもっと多くのひとに見せていくか?」ということについて、アルノーとよく話しています。私たちはまだそんなに有名なわけではないので。昨日、東京でいくつかお店を訪ねて、自分たちの服がそれなりの規模感で置かれているのを確認できて、手応えを感じることができました。なので今後も、小売とポップアップを通じてアイデアの全体像を見てもらえる場をつくりたい。少なくとも今後5年間は、そのことに集中して取り組んでいくつもりです。

撮影中にルークがポケットから取り出したピンバッジは、2020年に亡くなったラッパー、MF DOOMのもの。

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