-about LE LABO-
2006年にアメリカ・ニューヨークで誕生したスローパフューマリー。クラフツマンシップを重んじ、厳選した原料のみを使用。ラベルに最大23文字を選んで入れられるパーソナライズサービスや、一部店舗でフレグランスをその場で生成してもらえるフレッシュ ブレンディング、使用済みボトルに同じ香りを詰め替えるリフィルサービスなど、手にした人にとって愛着が湧き、長く使用したくなるモノづくりをしている。
Selector
Selector 03_Ryo Takaiwa ジャズのスタンダードとオーバーラップさせるバラの香り。
今月のセレクターは高岩 遼さん。自身が営むウイスキーバー「Brother」にて、〈ル ラボ〉を介して香りとの記憶を辿ります。

PROFILE
平成が生んだ生粋のエンターテイナー。SANABAGUN.のフロントマンであり、ソロではジャズシンガーとして活動。三軒茶屋で大人の不良がたむろする隠れ家的ウイスキーバー「Brother」のオーナーでもある。
ここ、「Brother」はウイスキーバーでバーボンを扱っているんだけど、ウイスキーの香りをかぐと、それこそ過去のことを思い出すし、音楽のことも考える。いまじゃ半分商売になってるけど、ウイスキーの香りは常に自分の傍にあったように思います。記憶に結びつく香りという意味で言えば、海辺の潮風っていうのかな。海の匂いが漂ってくると、故郷でもある岩手、宮古の港を一撃で思い出す。あの生々しい生き物めいた感じ。自分にとって香りを象徴するのはそれじゃないですか。あの海からいまに繋がっている。そういう根源的なものでもあります。


オレは血筋的に鼻がいいんですよ。だから、自分の匂いが相手に不快な思いをさせないかどうかっていうのは常に気にしています。香水は、人と会うときの男の身嗜みという意味合いに近いかもしれないですね。毎日必ずって使うほどじゃないんですけど。
そして、バシッと気を引き締めたいときも香水を使うかな。ライブがあるときなんかは特にね。ステージに上がるときに自分を戦闘モードにしてくれるもの。そういう作用も香水にはあるかもしれない。ま、ジャズのステージでは戦闘って感じでもないけど(笑)。それでもスイッチが自然と切り替わる感覚があるからね。目には見えない香りが気分を変えてくれる。普段と気分を変えるっていうのはステージに立つうえで重要なことですから。

〈ル ラボ〉ROSE 31 ¥26,950[50ml](ル ラボお客様相談室)※2023年6月時点
南仏・グラースのバラが持つ濃厚な香りを、クミン、シダー、アンバー、ガイアックウッド、シスタスなどでウッディかつスパイシーに仕上げた「ROSE 31」。甘さを抑えた上品な香りは、男女問わず使うことができる。
〈ル ラボ〉のことは最近知ったんだけど、ブランド全体の世界観がすごく気に入りましたね。お店で香りを選んだあと、その場で調合してくれるっていうのは、やっぱり嬉しいことだし、使う人のライフスタイルに寄り添うフレグランスなんだと感じました。これまでいろんな香水を使ってきて、実際にリリックに入れたりしてきたけど、〈ル ラボ〉も今後オレにとって欠かせないスタンダードになっていくかもしれない。
セレクトしたのは「ROSE 31」。ローズと聞くと、甘くメロウな香りだから高岩には似合いすぎる? いや、それも含めて“あえて”のストレートなセレクトにしました。そもそも個人的に好みの香りだったし。ジャズマンなら誰でも演奏する古いスタンダードで『酒とバラの日々(Days of Wine and Roses)』という同名映画のテーマ曲があって、紳士と淑女が酒に溺れて家庭が壊れていくストーリーなんだけど、やっぱり良い曲だと思ってさ。一時期はみんなが演ってるからやらねぇって思っていたんですけど、最近じゃ絶対歌っているんだよね。そんな意味もあって「ROSE 31」を選ばせていただきました。バラのタトゥーも入ってるからね、バッチリでしょ。
そこからプレイリストをつくるとなると、やっぱり『酒とバラの日々(Days of Wine and Roses)』を軸にしたジャズのスタンダードやR&B、オレが好きで歌ってきた音楽たちをセレクトすることになるかな。大好きなディズニーからも1曲選んでいるけど、今回は『眠れる森の美女』からってところが「ROSE 31」っぽいんじゃないかな。バラがキーワードだからね。
ラベルには王冠に囲まれた「JAZZ LIFE」の文字。これは、長きに渡ってオレの座右の銘ですから。スタンス・オブ・ジャズだね。音楽的にジャズを示すということだけではなく姿勢として。ジャズっていうのが、自分の生き方ですから。今回つくったプレイリストも、そういうアティチュードを示すものになっているかもしれないね。
Selector 02_Cota Mori 〈ル ラボ〉抜きで考えたら大半の記憶がなくなってしまう。
今回プレイリストを担当するのは、10年以上〈ル ラボ〉を愛用し続けているという森 洸大さん。森さんと〈ル ラボ〉の記憶を探ります。

PROFILE
クリエイティブレーベル「PERIMETRON」に属しつつ、極彩色流シ表現集団ことペインターユニットの「DWS JAPAN」としても活動中。常田大希率いる「millenium parade」ではアートディレクター/デザイナー/アジテーターを務めている。
もうかれこれ10年以上〈ル ラボ〉を使っています。というか〈ル ラボ〉以外の香水はまともに買ったこともないくらいです。最初に買ったのが「OUD 27」で、ずっと愛用していたのですが、数年前に廃番になって絶望しました(笑)。そんな折にリフィルだけはしているということを知って、こうして継ぎ足ししながらいまも使っています。
ラベルに刻んだ「my fav」は、もうそのままの意味ですね。“お気に入り”です。だいぶ長く使っているんですけど、プッシュする度に思い出すものがあるんですよ。脳裏にいろんなシーンが浮かんできて。毎日つけているのに、そんな風に記憶を呼び覚まされるからすごく不思議です。大袈裟に言うと、〈ル ラボ〉のフレグランスがなかったら、ここ10年くらいの…いや、オレの記憶ほぼなくなっちまうんじゃねぇかな(笑)。

〈ル ラボ〉OUD 27 ¥33,000[100ml](ル ラボお客様相談室)※2023年4月時点のリフィル金額
現在は廃盤となっているものの、熱狂的なファンのいる「OUD 27」は、ウード、シダー、パチュリ、ガイアック、ベチバーなどが香る、アニマリックな香り。「OUD 27」のボトルを持っている人限定で、〈ル ラボ〉のラボ併設店舗でリフィルサービスを受けることができる。
もう1つ長年使っているのが「PATCHOULI 24」です。これもリフィルをして使っています。「OUD 27」もそうなんですが、両方とも煙たさと怪しさを持ってて、物語を感じるぐらい香りに展開があって大好きです。家でよくお香を焚いていたり、幼い頃から焚き火とか、ワインのコルクの匂いとか癖のあるものが好きだったみたいで。香りそのものがそもそも好きなので昔から香水は欲しくて探してたんですけど、そういった渋さを感じられるものがなかなかなくて、ようやく出会えたのがこの二つでした。
強いて違いを挙げるとすれば、「OUD 27」には煙たさの中に華やかさと危うさがあり、「PATCHOULI 24」には渋みとより複雑な移り変わりがある。意図的に使い分けることはしてないですけど、夏は「OUD 27」、冬は「PATCHOULI 24」をつけることが多い気がしますね。

〈ル ラボ〉PATCHOULI 24 ¥33,000[100ml](ル ラボお客様相談室)※2023年4月時点のリフィル金額
パチュリや、白樺、レザーのようなスモーキーさが香る「PATCHOULI 24」。どっしりとした深い香りの奥には、バニラやバイオレットの甘さもあり、柔らかな丸みも感じさせる。落ち着きと暖かみのある個性的な香り。
そういった雰囲気と時間の経過で移り変わるそれぞれの香りの流れを物語と捉えて、自分なりに表現したプレイリストを考えてみました。共通しているのは煙たさと怪しさがあるのと、めっちゃハッピーでもなければ嘆いているわけでもない、だけど二面性があるという点ですかね。で、基本ちょっと暗めだしくどいとこもあるかも(笑)。
あと『この音を聴くと、昔を思い出すんだよな』というオレ的懐メロも入れつつ、いまの自分のムードにハマる曲もセレクトしてみました。ネガティブでもポジティブでもないけど熱苦しいっていう、すごい自分らしいものになった気がします。
プレイリストをつくりながら思いましたけど、音楽にも記憶を想起させる機能が香りと同じくらいありますね。聴く音楽によって体感的な温度が上下したりする感覚があって。暑さとか寒さみたいな耐える必要がある環境を好きになれることで、その環境に心地よささえ感じられる。それで体感温度が変わって感じるような。目に見えないけど、その分より深く体に入り込んでくる音と香りには、共通して記憶を呼び覚ます力と環境や状況を愛せる力があると思いました。

「PATCHOULI 24」のラベルに刻んだのは「Here we go again.」。これはいまの自分の気分を示している言葉です。これまで生きてきて、学生時代、フリーター時代とかみたいな大きなフェーズを乗り越え重ねてきましたが、また一つ終わり、新たな章が始まるというような感覚です。
詳しくはあまり言えないですが、ここからはmillennium paradeの本領を発揮していきたいと思ってます。これから、しっかりとそのクリエイティブに向かっていく時期がやってくるので、ああ、また大地獄に向かって自分の背中を押さないといけないのか。だいぶ踏ん張って登ってきたと思ったけど、まだまだ麓じゃないか…という。ま、めちゃめちゃ楽しみなんですけどね。なんならいままでで一番ワクワクしてます。貯めてきた気合い全部ぶっこんで、さあもっかい初心から始めるぞという気持ちです。

Selector 01_Daito Manabe. 香りには作品自体の価値を高める作用もある。
1人目は、日本を代表するトップクリエイターの真鍋大度さんのインタビューをお届けします。

PROFILE
1976年東京都生まれ。ライゾマティクス主宰、アブストラクトエンジン取締役。音楽やアート方面における世界のトップクリエイターたちと協業し続けている日本を代表するアーティストであり、プログラマー、DJ。4月1日(土)〜5月10日(水)の間、「光の美術館」で展覧会「真鍋大度個展 – EXPERIMENT -」を開催中。
ー香りと記憶は密接なものというテーマの連載になるのですが、何か香りから思い出されるエピソードはありますか?
真鍋:洋服屋に漂っていたお香の香りは非常に印象深いですね。昔、レコードショップでバイトしていたこともあって、そのときの思い出が香りと共に蘇ってくる感覚があります。
ー特に記憶に残っているお香は何ですか?
真鍋:ナグチャンパですね。90年代終わりから2000年代初頭の頃、すごく流行っていましたし、ストリートを代表する某ブランドのショップでも使われていましたね。いまでもたまに焚きますよ。


ー香りが自分のクリエイションに影響を与えることはありますか?
真鍋:香水とは少し意味合いが異なりますけど、視覚や聴覚に嗅覚が加わることで作品自体の価値が高まっていくことがあると思うんですよね。だから、展示会の会場の香りも重要だと考えています。視覚や聴覚以前に、導入部分として入ってくる嗅覚をどう整えていくのか。香りのコーディネーターに入ってもらったりもするんですけど、それだけ重要な要素だと捉えています。
ー音楽と香りという点ではいかがでしょうか?
真鍋:若い頃、ぼくの家に友達と集まり、部屋を真っ暗にしてお香を焚いて整えて、みんなでメディテーションするような気持ちで音楽を聴くことをやっていました。やっぱり音楽とは関係が強いように思いますね。

〈ル ラボ〉THÉ NOIR 29 ¥26,950[50ml](ル ラボお客様相談室)※2023年3月時点
真鍋さんが〈ル ラボ〉で選んだ香水は、ドライな中に爽やかな甘さを併せ持つ、奥深き香りの「THÉ NOIR 29」。ブラックティーをベースに、ベルガモット・フィグ・ベイリーフの爽やかさと、シダーウッド・ベチバー・ムスクのスパイシーな甘さが包み込みます。
ーこの企画では、〈ル ラボ〉の17種あるクラシック・コレクションから、お気に入りの香水を一つ選んでプレイリストをつくっていただきます。「THÉ NOIR 29」と「ANOTHER 13」で迷われていましたね。
真鍋:「ANOTHER 13」は爽やかな香りで、軽快な気分を引き出し、おしゃれなアクセントを加えたいシーンに適していると思います。一方、「THÉ NOIR 29」は、表現が難しいのですが、柑橘系というよりも甘さのあるメロウな印象があって気に入りました。魅惑的な香りで、時間がゆっくりと流れるような雰囲気を醸し出しています。音楽でたとえるなら、90年代初頭のTrip Hop(トリップ・ホップ)みたいな感じですかね。BPM 80くらいのゆったりした感じです。夜の香りといったイメージがあるので、めかしこんでパーティに行くときなんかに使いたいですね。
ー最終的に選ばれたのは「THÉ NOIR 29」です。真鍋さんなりのプレイリストに落とし込んでいただきましたが、どのような内容でしょう?
真鍋:魅惑的な音響と緻密な調和が織りなす、時間の流れが緩やかに感じられる空気をつくり出すプレイリストにしました。妖艶な響きとリズムが聴く人の心を捉え、現実から解き放たれたかのような感覚をもたらすのではないでしょうか。「THÉ NOIR 29」と合わせて体験すると、音の波紋が広がる中、安らぎと深い静寂が交差し、まるで幻想的な世界へと誘われるような体験ができると思います。
ー改めて、香りと音楽の関係性について思うことを教えてください。
真鍋:世の中には踊るための音楽もありますし、映像の臨場感をより高めるための音楽もありますけど、中には視覚情報を刺激するような音楽もあって、そういう音楽を好きで聴いてきた部分があります。そこに香りが合わさることで、より深くイマジネーションが湧き上がってくる感覚がありますね。それに、そんな視覚に訴えかける音楽を聴くにあたって、空間を清めるという意味でも香りの存在は大きいと思います。
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