工夫を重ねることで、自分らしい着こなしが定まってくる。
ーこれまで異なる文脈でファッションの道を歩んできたおふたりが、このような邂逅を果たしたのは、どんなきっかけがあったんですか?
金子: 前々から西山さんが手掛ける〈ディセンダント〉が気になっていて。あるとき広島のセレクトショップで見かける機会があったんです。むかしの自分だったら手に取ることはなかったけど、年齢を重ねたからなのか、チャレンジしてみようという気持ちが湧いてきて。チノパンを購入したんですよ。
ーこちらのインスタグラムの投稿にも、当時の気持ちが書かれてますね。
金子: いつもならヴィンテージのチノに革靴を合わせていたけど、そうしたコーディネートにどこかマンネリを感じていたんです。そこで〈ディセンダント〉のチノを発見して、西山さんのカルチャー由来のデザインにトラディショナルなものを合わせる楽しさを覚えて。
ー金子さんの中に新しい何かが生まれたわけですね。
金子: 自分が選ぶものはきちんとした文脈があって、生まれた背景みたいなものがハッキリしているものが多いんです。だから言語化がしやすいし、その中でありそうでなかった組み合わせを見つけてコーディネートを楽しんでいました。

金子: 一方でこうしたカルチャー由来のデザインは、自分の文脈を通して理解するのが難しい。勝手に抽象的に捉えてしまうんです。だけどそれを乗り越えて穿いてみると、それがすごく楽しくなってしまって。
ぼくが買ったパンツは股上が深くて、ウエストの位置もどこが正解なのかがわかりづらい。だけど穿いていて、「それでいいんだろうな」っていう気持ちにさせられるんです。
ー正解はないというか。
金子: そうですね。それがきっかけでカルチャーからファッションを見ているひとのバランスみたいなものに興味が湧いてきました。オールドスケートの古着を探すようになったのもその影響ですね。どんどん掘っていると、まだ言語化はできないけど、なんとなくわかるようになってきたんです。
西山: あれはブランド初期から展開している定番のパンツなんですよ。当時って、ツイルのタックパンツがカジュアルの市場になかったんです。古着で探せばあったと思うんですけど、自分が知る限りでは現行の市場にはなかった。
もしかしたらタックに抵抗があってみんなつくらないのかなと思って、タック入りっぽいノータックのチノをつくったのがはじまりなんです。
金子: なんかすごく腑に落ちました。タックが入ったようなゆとりが腰回りにあるんです。

西山: 腰回りの膨らみをどこで収めるか。それがいつも議題になっていて、正解がないんですよね。要するに合わせづらいんです(笑)。
金子: その話、聞けてよかったです(笑)。
西山: たとえば「501®」を正解の位置で穿けば、みんな同じように見えるんです。だけど、それだと個性が生まれない。だからみんなインチアップしたり、ダウンしたり、もしくは丈を詰めながら試行錯誤をしますよね。そうやって工夫を重ねることで、自分らしい着こなし方みたいなものが定まってくる。そういうものをぼくはつくりたいと思っているんです。
ー攻略をする楽しみというか、余地みたいなものをあえて残しているんですね。
西山: おなじアイテムでも、金子さんが穿いているのと、ぼくが穿いているのでは違うものになると思うんです。そうゆうものが本来あるべきだと思って〈ディセンダント〉でつくっていますね。
金子: めちゃくちゃいい話ですね。もっとあのパンツを穿きたくなりました。作り手の意図を知れてよかった。
西山: 取説がないので、わかりづらいブランドだと自分でも思います。だけど、わかったときにおもしろがってもらえる。ひとを選ぶというか、クローズになりがちなので、もっとオープンにしたいって思うんですけどね。
