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着ぶくれ手帖FOUNDOURを通して見つめる金子恵治の“はずし”の美学。
What is FOUNDOUR?

着ぶくれ手帖
FOUNDOURを通して見つめる金子恵治の“はずし”の美学。

ファッションバイヤーとしてはもちろん、一方ではさまざまなブランドのディレクターとして、八面六臂の活躍をする金子恵治さん。そんな彼がヴィンテージ・ディレクターの河田新平さんをパートナーに迎えて、新たなブランドをスタートさせます。その名も〈ファウンダ(FOUNDOUR)〉。ヴィンテージの山の中から気になるアイテムをピックアップし、そこから服づくりのアイデアを膨らませ、最高のパターンと仕立てでモダンな感性を加える。そうして生まれるのは単なるレプリカにあらず、「ワードローブに差し込める“はずし”となる服」だと話します。毎度一筋縄ではいかないものづくりをする金子さんですが、今回も御多分に洩れず、ファッションに対するあくなき探究心がそこには注がれている模様。ではさっそく、そんな新ブランドについて語ってもらいましょう。

PROFILE

金子恵治

1973年生まれ、東京都出身。「L’ECHOPPE」、「BOUTIQUE」、〈J.B. ATTIRE〉など、ブランドやショップのディレクションを行うクリエイティブディレクター。2024年2月には、自身初のファッションブランド〈ファウンダ(FOUNDOUR)〉をローンチ。
Instagram:@keijikaneko

古着に求めるような“はずし”ができる服。

ーはじめに〈ファウンダ〉とはどんなブランドなのか教えてください。

金子: むかしに一度、高級な生地を使った手縫いのシャツを自分用につくったことがあるんです。パターンはアメトラの老舗ブランドのB.D.シャツを参考にしていたんですが、仕上がりを見て、生地は高級じゃなくてもいいんじゃないかと思ったんです。それでもう一度、普遍的なブロード地で同じようにシャツをつくってみたんですよ。

ー以前、こちらの記事でも話されていたシャツですよね。

金子: それで出来上がったシャツを比べたときに、高級な生地でも、普通の生地でも、あまり大差がないなと思ったんです。もちろん肌触りとかは違うんだけど、ぼくの考える“いい服”の観点から眺めると、どちらも良かった。むしろ高級じゃないぶん普通のほうが当然価格も安くできるし、普段着と考えるとちょうどいい。ある種、正統派じゃないつくりが変化球にもなっていいなと思いました。

ーパターンと仕立てが良ければ、いい服がつくれるということですよね。そうした経験が〈ファウンダ〉に繋がっていったんですか?

金子: そうですね。ぼく自身はデザイナーではないし、なにかをイチからつくったりすることはできない。ただ、バイヤーとして培ってきたこと、たとえばAとBを組み合わせて新しいものをつくるといったことは自信があるし、得意分野です。それで前につくったシャツの考え方を他のアイテムにも応用できるんじゃないかと思いました。

金子: 1年ちょっと前から企画はスタートしていたんですが、とにかく自分でなにか立ち上げたいという気持ちがあって、そのためのチームがちょうどその頃出来上がったんです。

ー多少値段が高くなってもいい生地でいい服をつくることもできるはずなのに、あえてそれをしない金子さんの心境には、以前と比べて変化があったんですか?

金子: ぼくはもともと古着が好きなんですが、その理由は、はずしとしてコーディネートに取り入れたいからなんです。いい服に対して古着ではずす、古着が主役になる場合はいい服を合わせてはずすみたいなことをずっとやってきた。そうやってスタイリングに意味を持たせるのが好きなんです。

だけど古着って一点物だし、出会いじゃないですか。もちろんそれが魅力でもあるんですけど、新品の服でもはずしとなるような、ぼくが古着に求めるような“はずし”ができる服があればいいなって思ってたんです。そういうときにあのシャツができて、これでいいじゃんってなったんですよ。生地は普通だけど手縫いでクオリティがすごく高い。それをカシミアのニットに合わせたら、はずしの感覚が生まれるなと思って。

ー“はずし”のためにあえて高級なものづくりをしない。そこに〈ファウンダ〉の旨味があると。

金子: ぼくがいままでやってきたコラボレーションは、相手となるブランドやデザイナーがいて、彼らのものづくりの方法が前提としてありました。そこにぼくのアイデアを加えて服をつくっていたけど、ぼくが自分でやるとなれば、それに合わせられる服づくりなのかなって思うんです。

INFORMATION

FAIR’S FAIR inc.

MAIL : info@fairsfair.jp
foundour.jp
*2025 年3月1日オープン予定

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