PROFILE
ファッションバイヤー。セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後に独立。自身の活動を経て、2015年に「レショップ」を立ち上げる。現在は同ショップのコンセプターを務めると共に、さまざまなブランドやレーベルの監修も行う。
PROFILE
1974年、東京都生まれ。2000年よりファッションブランド〈ユージュ〉をスタート。一方ではミュージシャンのレコードジャケットなども手がけ、アートディレクターとしても活躍。2018年には代々木上原にレコードショップ「アダルト オリエンテッド レコーズ」をオープン。さらには2020年にクロージングブランド〈アダルトオリエンテッドローブス〉を始動。音楽とファッションを融合させたクリエイションを行っている。
ファッションの文脈にカルチャーの視点が混ざることで厚みが生まれる。
ー今回は金子さんが着たい〈AOR〉をつくるのがテーマだそうですね。
金子: 〈AOR〉のパターンやデザインが好きで、ずっと憧れがあったんですよ。だけど、このブランドにはカルチャーがあるから、それがぼくにとってはすごくハードルが高かったんです。やっぱり弓削さんって音楽好きだから、それを知らずして着れないというか。
弓削: そういうのって、やっぱり気にされるんだなって金子さんと話しててよく思うんです。もちろんぼくは音楽を意識したものづくりをしていますけど、それを気にせず着てもらいたいという気持ちもあって。
金子: 〈もちろん音楽を知らずして着るのも素敵だなと思うんですが、ぼく自身はそれだと物足りなくて。知らずに着て、かっこよくなる自信がないというか。
ー金子さんにもそんなことを思うときがあるんですね。
金子: 実は弓削さんとは過去に2度ほど「レショップ」でイベントをやったことがあるんです。服好きのお客さんと音楽好きのお客さんが交わることができればいいなと思って。
弓削: 音楽好きの視点で話すと、「レショップ」のようなお店はハードルが高くて。音楽が好きなひとってオタク気質なところがあるから、服に無頓着だったりするんですよ。〈AOR〉はその両方の感度を融合できないかなと思ってはじめたんです。
ー音楽とファッションの橋渡し役として。
弓削: だけど、やっぱり簡単にはいかなくて。バランスよく両方とも好きっていうひとがあまりいないんです。だからぼくとしては、カルチャー的背景のないひとでも手に取りやすいラインみたいなものをつくりかった。それをぼく自身がやるわけにはいかないので、金子さんみたいな服オタクに監修してもらうのがいちばんいいなと思ってお声がけをさせてもらいました。
ーそもそもおふたりの付き合いって長いんですか?
金子: いや、割と最近なんですよ。〈アウトドアプロダクツ〉と〈AOR〉のバッグをつくったときにはじめてお会いしました。
弓削: ぼくはずっとウィメンズのデザイナーをやっていて、いわゆるメンズ界隈の方々と繋がりがなかったんです。金子さんの存在はもちろん知ってましたけど、交わることはなかったですよね。
金子: ぼくも弓削さんがやっていた〈ユージュ〉の存在は知っていましたよ。
弓削: 服好きが集まる「レショップ」はずっと気になっていたんですよ。マニアックなお店だし、そのディレクターである金子さんとはちょっと近づいておきたいっていう下心もあったりして(笑)。
ーそして「レショップ」でも〈AOR〉を取り扱うことになるわけですね。
金子: 〈AOR〉の展示会にはじめてお邪魔したときに、シーズンヴィジュアルが飾ってあって。音楽が背景にあるブランドなんだけど、しっかりとファッションに落とし込まれていたんです。ぼくはカルチャーの人間ではないけど、カルチャーのひとたちへの憧れがあったし、そのひとたちが着ている服に興味があった。服オタクのお店である「レショップ」に、そうした香りのする服を取り入れたかった。それでお取り扱いさせてもらうことを決めて、お店ではイベントもやったんです。
弓削: DJブースを持ち込んで、ファッションと音楽が融合するようなイメージでやりましたよね。
金子: ファッションの文脈にカルチャーの視点が混ざることで、スタイリングに厚みが生まれるというか、単純にめちゃくちゃかっこよく感じるじゃないですか。だけど、そうゆうことを叶えてくれるブランドってそんなに多くはないんですよね。そのときは自分の気分的なものと〈AOR〉のムードがすごくマッチしたんです。弓削さんのいい意味で軽いノリと、服の雰囲気がリンクしていて、「いいかもしれない」と思ったというか。