これほど便利な自転車はない。
ーそして、ロンドンの街中では実際のユーザーたちのスナップを撮ってこられたんですよね。
金子: とにかく乗っているひとが多くて。それにまず驚きました。
ー写真を拝見していると、本当に老若男女に愛されているんだなと感じます。
金子: スーツを着て〈ブロンプトン〉に乗って通勤しているひともいるし、本当にいろんなスタイルのひとたちが乗っていましたね。
ーいろんなひとが同じ自転車に乗っている光景は、日本ではあまり見られないですよね。
金子: スポーティなひとがいれば、カジュアルなひとも乗っているし、自転車自体が本当にトラッドだから、どんなスタイルにもやっぱりはまるんだなっていう。本当に道具的な乗り物だなと思います。
金子: この方はロンドンでテーラーを経営されているダニーさんという方で、前に高価なロードバイクを盗まれてしまったそうなんです。しかも、購入して、はじめて乗った日に。
ーそれは災難ですね…。
金子: それで折り畳み式の自転車があるということを知り、〈ブロンプトン〉を手に入れたそうです。ダニーさん曰く「街中を走るならこれで十分」とのことで、競技用の高いバイクは週末にレースにでるときに乗ればいいと話していました。
金子: ロンドンは流れがクイックで、とにかく迅速に動いているから、こうしたコンパクトな自転車が役に立つとも言っていましたね。とにかく〈ブロンプトン〉は実用的な移動手段になっているということでした。平日は〈ブロンプトン〉に乗って、週末はロードバイクやクルマに乗る。それによって節約もできるし、レストランに行ったりバスに乗ってもトラブルはないそうです。
ーこちらの女性も素敵ですね。
金子: 彼女はダニーさんのお店で働く、アリシアです。どうやらティモシー・エベレストさんの娘さんのようですね。
金子: 彼女が〈ブロンプトン〉を愛用する理由は、コンパクトかつ巧みなエンジニアリングで信頼性が高いところにあるそうです。子どもの頃に乗っていたBMXを思い出すそうで、カジュアルで遊び心のある自転車だと話していました。そうした精神性が彼女のスタイルとマッチしているとも。とにかく柔軟性がある自転車なんですよね。クロスバーが低いから、スリーピースのテーラードスーツでも乗りやすいし、とにかく制限がない。
アリシアは通勤距離が長いそうなんですが、それでも〈ブロンプトン〉に乗って毎朝ロンドンまで来ているんです。「疲れたら折り畳んで電車に乗ればいい」と言っていた言葉が印象的でした。
ーこちらの男性はブルーの〈ブロンプトン〉とデニムがマッチしています。
金子: こちらはマックスさんで、おなじくダニーさんのお店で働いているスタッフですね。
金子: 彼が〈ブロンプトン〉を気に入っている理由は、折り畳んでコンパクトになるところ。狭いアパートや、職場のデスクの下に置いておけるし、それがやっぱり盗難防止に繋がると話していましたね。そして簡単に乗りこなせて、どこへでも行くことができるとも語っていました。
ーロンドンの街を〈ブロンプトン〉に乗って走るひとたちをたくさん見かけて、感じたことはありますか?
金子: とにかくローカルの生活になじんでいるなぁと。乗っているひとの共通点がないんですよ。それが〈ブロンプトン〉のすごいところだなと思います。ぼくらからすると、かっこいいし、スタイルがあるし、こだわりを持つひとが選ぶ自転車だと思いがちなんですけど、ロンドンでは普通にみんな乗っている。それがまずありえないですよね。
ーたしかにそうですよね。
金子: 本当にあらゆる面でロンドンにフィットした自転車だと思います。街並みにも合うし、精神的なところでも通じるものがあるんじゃないかと思います。この国でしか生まれなかったものなんだと感じさせるられるというか。やっぱりそういうものには、憧れを持っちゃいますよね。
ー走りが軽快で、コンパクトに畳めて、盗難もされにくいという実用的な部分、そしてそれを支えるしっかりとしたクオリティがある。そこにロンドンの人々に愛される所以を感じるのですが、それは東京の生活にも通じますよね。
金子: そうですね。ぼくの使い方は間違ってなかったなって実感しました。それを確かめられたのがよかったですね。自転車を出先の室内にしまうっていうことが日本には全然ないですよね。自転車は外に置いて、チェーンをかけて、それでも盗まれたらしょうがない。それが当たり前じゃないですか。だからこそ、日本における〈ブロンプトン〉の日本における可能性を感じました。
ー金子さんが以前、別の取材に〈ブロンプトン〉に乗ってやってきて、取材先の場所に「これ置いていいですか?」と尋ねていたのが印象的で。それってこの自転車に乗っているからこそ生まれる新しい所作ですよね。
金子: ご飯屋さんにも持っていきますから(笑)。「すみません、隅っこに置かせてください」って。道を塞がないという意味では街にも配慮している自転車だと思うんですよ。これが広がれば、もっと当たり前にお店に置ける。そうなったらいいですよね。だからもっと認知を広めたいんです。
ーまた違った生活様式が生まれそうな気がします。
金子: そうですね。行動範囲が広がるし、生活が豊かになると思います。雨が降ったらタクシーに乗せられるし、疲れたら電車やバスに乗ることもできる。いかようにも遊べる自転車なので、本当にみなさんに乗ってほしいです。これほど便利な乗り物はないですよ。