ひとつは、〈THE LOWBROWS〉や音楽シーンとの仕事ですね。自分たちで始めた『LINDA』というエレクトロパーティーをはじめ、〈THE
LOWBROWS〉は様々なイベントで共演して、20代の多感な時代を共に過ごしてきた特別な存在ですし、CDやレコード、ステッカーからミュージックビデオまで多岐に渡り携わり、思い入れも強いです。また同時に海外のレーベルとのつながりができてきたのもこの頃で、そうした経験というのは、ただデザインをするだけではなく、フロアで遊ぶ体験を設計するまでが大事な活動だったのだと今になって強く感じますね。
そうですね。テクノやエレクトロ・ミュージックのシーンに関してはパーティーを通して出会った人たちが自分のアートワークを広めてくれたことで仕事に繋がりました。特にDJ
HELLとのプロジェクトは奇跡的で、元々ファンだったこともあり、手当たり次第に彼と繋がりそうなアドレス宛にメールをしたら、偶然本人まで辿り着き、来日した際に自分のパーティーに遊びに来てくれたんです。その時に自分のポートフォリオを見せたら話が進んでいき、アートワークを手がけることになりました。スティービー·ワンダーに関しては、独立してから初めてのコンペだった案件なので記憶にも残っていて、特にデザインコンセプトを気に入ってくれたというフィードバックを受けて嬉しかったですね。
『THE LOWBROWS/Danse Macabre(2009)』
「YENTOWN」をはじめ数多くのアーティストのプロデュースを手掛けるChaki
Zuluと夏目漱石を曽祖父に持つEmiによるエレクトロニック・ミュージックデュオ。そのメジャー移籍後初となるフルアルバムのアートワークをYOSHIROTTENが担当。
『Love.Harmony & Eternity~Greatest 50 Of Stevie Wonder(2010)』
スティービー・ワンダーのキャリア50周年を祝し、LOVE (恋愛、家族愛、友情), HARMONY (社会との”調和”、デュエット), ETERNITY
(永遠のメッセージ)をテーマに掲げた、本人公認の日本独自企画盤。独立して間もないYOSHIROTTENが獲得した印象的な初期WORKSのひとつ。
『BOYS NOIZE/OUT OF THE BLACK(2012)』
アメリカの権威あるミュージックマガジン『SPIN』が選ぶ2012年のベストダンスアルバムにも選定されたドイツを代表するエレクトロニック・ミュージックアーティストのBOYS
NOIZEのスタジオアルバム。そのアートワークを担当し、その後もいくつかの作品でアートディレクションを行った。
『TIGA/Bugatti(2014)』
エレクトロニック・ミュージックやハウスを主体に楽曲を制作するカナダ出身の音楽プロデューサーであるTIGAを世に知らしめたヒット曲である『Bugatti』のアートディレクションを担当。
『DJ HELL/14 GIGOLO CD(2014)』
音楽レーベル「International Deejay Gigolos」も主宰するドイツ・ミュンヘン出身のDJ兼プロデューサーであるDJ
HELLがプロデュースするCD作品に自身のグラフィックによるアートワークを提供。本文でも語られている通り、YOSHIROTTEN自身のパーティにDJ HELL本人が訪れたことから生まれたプロジェクト。
そうですね。ずっと東京のナイトシーンで遊んでいた人生だったのでレコードバーやクラブのデザインができることはとても感慨深い話でした。空間に関してはRYUZOさんからの依頼で、初めて渋谷に「BLOODY
ANGLE」を作り、その後も「DOMICILE TOKYO」や「MADAM WOO」、「翠月」など色々作りました。最近だと神泉駅の近くに「TOKYO
ANNA」というスナックも作りました。いずれの仕事もアートディレクションという観点で、空間の演出や内装デザインに限らず、ブランディングに対してもアプローチできる良い機会でしたね。特に「翠月」は未だに「YAR」でフライヤーを毎日1枚ずつアナログで作っています。
『BLOODY ANGLE(2016)』
日本のヒップホップシーンを黎明期から支える重要人物であるRYUZO氏がオーナーのひとりを務めるレコードバー。NYのチャイナタウンの一角からインスピレーションを得た内装やロゴのデザインをYOSHIROTTENが担当。
『DOMICILE(2017)』
実際にあった⺠家を改装して“近未来的な⽇本の⺠家”をイメージした、ファッションや⾳楽、アートなど様々なカルチャーへ多角的に焦点を当てたコンセプトショップ。その店舗の外装、内装デザインからロゴグラフィックまでを担当。鹿おどしと伊⾖諸島・神津島から取り寄せた⽯を使⽤し、赤い半透明のふすまや空中に浮く盆栽など近未来的なディテールやポップアップ空間に仕掛けを設けた異文化が混在する空間に仕上げた。
『MADAM WOO(2018)』
「BLOODY
ANGLE」と同じくRYUZO氏が手掛けるジェントルマンズクラブ。海外の著名なラッパーやDJが来日した際にお忍びで来訪することもある場所で、普段は音楽やアートなどを好むカルチャー好きの若者やツーリストで賑わう。この場所の空間演出も」YOSHIROTTENが担当している。
『翠月(2019)』
オレンジ一色の空間が象徴的な渋谷のカルチャーナイトスポットである「翠月」。内装はもちろんイベント毎に制作されるフライヤーのデザインまでのディレクションを一貫して担当している。
ファッションの分野も国内外問わずにこれまで友人のブランドや親交の深いデザイナーやセレクトショップなど音楽とは異なる分野でのアートディレクションも数え切れないくらい沢山やってきました。雑誌だと、〈Silver〉や〈WWD〉、〈Ollie
MAGAZINE〉などはアートワークを提供することもあれば、フォトディレクションという形で携わることもあったり。この頃は様々なクリエイターとの協業やコラボレーションワークも増えていた時期だったのかもしれないですね。
『LQQK “GATEWAY”(2016)』
NYのプリントスタジオ「LQQK
STUDIO」が2016年夏に東京・渋谷の「Contact」で併催したポップアップストア兼音楽イベントのフライヤーデザインと空間映像を担当。かねてよりブランドやデザイナーと親交もあり、当日はNYからエーロン・ボンダロフやエリック・エルムス、ピーターサザーランドなどの海外クリエイターも多く来日し、大いに賑わった。
『AMBISH ®︎ HEAD SHOP 1ST ANNIVERSARY ITEM(2017)』
過去にLOOK BOOKのアートディレクションなど長きに渡って親交のあった〈AMBISH
®︎〉の国内初となる旗艦店のオープン1周年を記念したアイテムのグラフィックを提供。架空の本のジャケットを想起させるグラフィックは、両者の世界観が絶妙にマッチしたデザインとして好評を得た。
『NIKE × SACAI COLLABORATION COLLECTION(2019)』
2019年に待望となる二度目のタッグとなった〈NIKE〉と〈sacai〉による初のスポーツアパレルコレクション。プロテニスプレーヤーの大坂なおみとプロスケートボーダーのスカイ・ブラウンを起用したビジュアルを基にコラージュを担当し、VJの演出も実施。
『WWD(2016)』
2016年に発行された紙媒体の「WWD」では、〈CANADA
GOOSE〉とのタイアップページとカバーのアートディレクションを担当。撮影は当時渋谷にあった施設内や外壁をプロジェクションマッピングで演出したロケーションを活かし、国内を代表するクリエイターと共に作り上げた。
『Ollie MAGAZINE “KICKS PARADISE”(2016)』
ストリートカルチャーマガジンの〈Ollie MAGAZINE〉では、長らくスニーカーに特化した連載企画「KICKS
PARADISE」。そのビジュアルディレクションを担当し、その後、立体的なコンテンツとして”スニーカーの美術館”というテーマのイベントも開催した。
『Silver Magazine No.12(2021)』
グローバルに展開する東京発のファッション、カルチャーメディア。新たな時代の東京をテーマに掲げた本イシューでは、東京を代表するアーティストとしてYOSHIROTTENがフィーチャーされ、同号の表紙デザインを担当。アートワークは森山大道とのコラボレーションによるもの。