FEATURE
デザインとアート、都市と自然世界。横断と拡張を続けるYOSHIROTTENの20年。
PROGRESS FOR 20 YEARS

デザインとアート、都市と自然世界。横断と拡張を続けるYOSHIROTTENの20年。

商業芸術から現代アート、さらには音楽やファッションなど様々な分野を横断し、アジア、ひいては世界へとその活動領域を拡張し続ける、日本を代表するアーティストであるYOSHIROTTEN。活動キャリア20年目の節目となる2024年、彼の長い活動キャリアの集大成として開催された2つの大きな展示を通じて、自身のこれまでの歩みを振り返りながら、デザインとアート、さらには芸術表現へかける想いまでを伺いました。

  • Photo_Kenta Sawada(「Radial Graphics Bio」), Kazuki Miyamae (「FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima」)
  • Interview&Text_Yuho Nomura

20年のキャリアを通じて想う、YOSHIROTTENの現在地

―東雲のアートスペース「TOLOT / heuristic」で行われた『FUTURE NATURE』のエキシビジョンは、当時大きな話題を呼びました。

『FUTURE NATURE』を開催したきっかけは、インパクトのある展示を自分発信で実現させたかったのと、自然と未来を繋ぐテーマの下でなにか新しい表現ができないか模索していたことから生まれたものなんです。当時の自分が持ち合わせているエネルギーを全て注ぎ込もうと思ったら、それなりの空間が必要で。それで「TOLOT / heuristic」という印刷製本工場の倉庫跡地を活用した巨大空間を使い、平面や立体、さらには映像や海外からミュージシャンを招いたライブなど、多角的な展示方法を行いました。オープニングから驚くほどのお客さんが足を運んでくれて、ストリート界隈からラグジュアリーブランドまで様々な関係者や企業の方々、多忙な著名人、友人たちまでが一堂に東京の郊外に集まり、今までにない熱量を感じました。ただ、表現としてはまだ自己紹介みたいなものでしかなく、この時に初めてもっとやってみたいことというのが明確になり、自分の展望が広がっていったことを覚えています。

『FUTURE NATURE(2018〜)』
2018年に今は亡き東京・東雲のアートスペース「TOLOT / heuristic」で開催された、アルミをフィーチャーした未来の自然風景をテーマにした大規模な展覧会。400坪の空間を広々と使い、平面作品から立体、映像、音楽ライブなど様々なインスターレションが展示・発表された。

―コロナ禍を経て「SUN」を発表し、改めてご自身の活動や創作意欲になにか変化を感じることはありましたか?

原点というか自然への回帰は強く感じるようになりましたね。これまで自分はグラフィックという表現方法を通じて特にデジタルへ傾倒してきた中で自分の作品や世界観を生み出してきたと感じているんですけど、その反動というか、また別の景色を見てみたくなったというか。

『SUN(2020〜)』
コロナ禍が始まった 2020 年初頭に制作を開始した365点のデジタル・イメージに端を発するアートプロジェクト。インスタレーションからNFT、アルミニウム・プリント、バイナル・レコード、書籍など、多岐にわたる手法とメディアで構成され、近年のYOSHIROTTENを代表する作品であり、2024年にも「福岡PayPayドーム」で同プロジェクトのアートインスタレーションが開催されるなど、現在も進行中。

―誤解を恐れずに言えば、やり切った感覚もあったと。

もちろんまだまだ可能性や挑戦したい分野は沢山あるのでやり切ったとは言えないんですけど、一旦自分の辿った道を振り返ってみたいなと。そんなフェーズだったのかなと思います。でも振り返る間もなくやりたいことがすぐに湧き出てくるので結局作り続けていくんですよね、多分ずっと。

―その感覚が「ギンザ·グラフィック·ギャラリー」での「Radical Graphics Bio」へと繋がり、さらには『FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima』へ帰着している気がします。それぞれの展示を終えた今、YOSHIROTTENさんの今後の展望も改めてお聞きできますか?

まだまだやりたいプロジェクトも多かったり、作品も海外でしっかり発表したかったり、アイデアのイメージは無限大にありますね。ただ、そうしたこれまでのような姿勢も継続しながらも、この地球で自分の活動を生かした面白いことがもっとできたらいいなーと考えるようになっています。新たな観光地とかも作りたいです。デザインはコミニュケーションや問題解決の手段であり、アートは想像や気づきを与えることや自分自身を模索していくことだと思っているので、その両軸の活動は変わらず続けていきたいですね。

『FUTURE NATURE II In Kagoshima』
展示風景 写真Kazuki Miyamae ©︎YAR

PROFILE

1983年生まれ、鹿児島県出身。ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト。また欧米のラグジュアリーブランドや著名なミュージシャン、アンダーグラウンドなクラブから現代美術フェアに至るまで幅広いクライアントを持つアートディレクター。代表を務めるクリエイティブ・スタジオ「YAR」では、広告やロゴタイプ、内装・外装、デザイン、映像など商業において視覚芸術が関わるほぼ全ての範囲で膨大な量の仕事を手掛ける。近年は美術館やギャラリーでの大規模な展示で自身の表現活動も行う。
https://yoshirotten.com/archives/