1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか17シーズン目! 新たにショップがすべて入れ替わったトップバッターの第129回目は、古着激戦区の様相を呈する東急世田谷線・世田谷駅から徒歩5分にある「スワン(SWANK)」。野上さんと小高さんのお2人は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
野上駿介 & 小高佑樹 / SWANK ディレクター & ショップマネージャー
Vol.129_ゲスのデニムジャケット、ゲット ユーズド バイ エリーのデニムジャケット、パミールのデニムベスト
ー本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマです。まずは“「スワンク(SWANK)」ならではのセレクト”について教えてください。
素材や形、サイズ、柄、ディテールなどが一風変わった、何か気になるアイテムと、多種多様なジャンルをミックスしながらも統一感のあるスタイリングを提案・発信し、より多くの方に、古着のおもしろさはもちろん、古着を通してファッションの楽しさをお伝えできればと思っています。その上で、年齢や性別などの垣根にとらわれず“イケてる”と思えるアイテムと出会える店を標榜しています。
ーそんな「スワンク」が考えるニュー・ヴィンテージの定義とは?
いわゆるトゥルー・ヴィンテージとの違いで言えば、“歴史やディテールなどの情報”に価値を見出すのとはまた違った“視覚・感覚的に格好いいと感じる”という視点で価値を感じるモノ。でしょうか。分かりやすく言い換えるならば“デザインとしての価値があるモノ”。それがニュー・ヴィンテージとなり得るのでは? と思いました。
ーなるほど。となると今回紹介いただくのも、そういったアイテムというワケですね。
トゥルー・ヴィンテージ的価値観というんでしょうか。デニムの縦落ちとかアタリやヒゲなんていう概念が生まれたのって、1990年代以降なワケじゃないですか。なので、それ以前の1980年代のデニムアウターでおもしろいデザインのモノを用意しました。
ー筆者は今年45歳なので、幼少期にリアルタイムで見ていたアメリカのイメージが、まさにこんな感じでした。世代的にも、この辺はギリギリ紙一重に感じます。
おっしゃるように当時を知っている世代の場合、いちばんダサイ時代と敬遠される方も多いかもしれません。ですが、改めて見返してみるとなかなか興味深いんです。というワケで1着目は〈ゲス(GUESS)〉のデニムジャケットです。
ゲスのデニムジャケット ¥37,400(スワンク)
ーここのブランドは80年代〜90年代にかなり流行りましたよね。筆者の中学生時代に、エア・マックス狩りと同じように“ゲスパン狩り”なんてのもあったくらいで。
その当時ってデニム自体がメチャクチャ流行ったんですよね。バリエーションもすごく増えて、当時はこういったシルエット・デザインともに個性的でデコラティブなモノが多く見られました。とはいえこちらは比較的大人しい方。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の劇中で主人公・マーティーが着用していたGジャンを彷彿とさせるデニムジャケットが〈ゲス〉からも何種類かリリースされていて、その内の1着だと思われます。
ーこのストーンウォッシュの感じからも、当時の匂いがプンプンします。
2色のデニム生地を採用し、肩にウエスタンヨーク的な切り替えをあしらい、裾はリブ。さらに着丈短めで絞りもギュンギュン。生地のオンスも高めで厚みがあって裏地付き。背面はアクションプリーツを施すことで運動性も確保したこだわりのパターニングが光ります。
ー裏地には大きくアメフト選手がプリントされています。
なんですかね、これ。正直、デザイン的にもアメフト要素は1ミリも感じないんですし(笑)。こういった“意味の分からなさ”も古着ならではの楽しさ。お次は〈ゲット ユーズド バイ エリー(GET USED by ELIE)〉。90年代初頭に人気を博したデニムブランドで、エッジの効いたデザインがLL COOL Jや2Pacなど有名ヒップホップアーティストを虜にしたことで知られていて、コレクターもいたりします。
ーこの“ヌケ感”なんて考えない感じも、すごく新鮮に感じるんでしょうね。
ゲット ユーズド バイ エリーのデニムジャケット ¥34,100(スワンク)
ですよね。ロイ・リキテンシュタイン風味のアメリカンコミック的イラストをコラージュした切り替えが最大のポイント。手の込んだディテールや作りなどモノ自体がしっかりしていて、そこに価値を見出せるという意味では、まごうことなくニュー・ヴィンテージと呼ぶに値するのかなと。それでいて現代の感覚で取り入れることもできますし、ホワイトデニムなので春先に羽織るのにもちょうど良さげ。
ー先ほどコレクターの話もありましたが、ここのブランドはどれもこういったノリのアイテムばかりなんですか?
80’sテイストという意味では、そうですね。ボトムスもハイエストで、ワタリが太くてギュン! と裾に向かってテーパードしたジーンズとか。最後は、ほか2つに比べると大人しいデザインに思えますが、ケミカルウォッシュ具合が当時らしいベスト。ブランドは〈インクラウド バイ セレブレーション(iN CROWD by CELEBRATION)〉です。
ゲット ユーズド バイ エリーのデニムジャケット ¥34,100(スワンク)
ー聞き慣れないブランドですが、これまた十分すぎるほどの存在感(笑)。
ポケットの配置やちょっとした細部にミリタリー味も感じますし、内側のチェックネル生地はザ・アメカジって感じで。そもそも裏地まで張って中綿も入れておきながら、結局はベストなので寒いんだか暑いんだか分からない(笑)。
ーこの辺は、業界的にデザイン古着にカテゴライズされるんでしょうか?
そこは解釈次第というかラインも曖昧で。素材はデニムという意味ではオーセンティックなアメカジ古着の文脈ですが、用途や機能を前提としたデザインではなく、ファッションとしてのデザインという意味ではデザイン古着とも言えますし…。
ー個人的には“再現性の低さ”はデザイン古着の定義のひとつになるのかなと。
それでいえば、探そうとしても同じモノが見つかる可能性は低め。まぁ、結局は着る人次第なのでどっちでもイイとは思います(笑)
ー間違いないです。この辺のアイテムって、いまだとどう取り入れるのが正解でしょうか?
正解かどうかは分かりませんが、コテコテになるのはイヤなので、別素材のモノとの合わせをウチでは提案しています。トップスはソフトシェルのアウターと重ねて素材の対比を楽しむもよし。そうなると、ボトムスはスポーティーなナイロンパンツやキレイめのスラックスとか。変化を付けつつ、カジュアルになりすぎないようスタイリングすることが多いですね。
ーちょっとズラすのが正解なんでしょうね。特にオジサン世代が着た場合、「当時からいままで、ずっと着続けてる人」と勘違いされそうですし、若い世代でも「実家に転がっていた昔の服を、何も考えずに着ている人」と思われちゃいそう。
だからこそ、アイテムの個性を活かしつつ素材やテイストでベクトルの異なるアイテムを合わせて“狙って着ていますけど? 感”を出すのが大事であると。その上で「自分はこういうのが好きなんだ!」と胸を張って取り入れることで、古着選びがもっと楽しくなるんじゃないかなと思っている次第です。
野上駿介 & 小高佑樹 / SWANK ディレクター & ショップマネージャー
2021年8月にECショップからスタートし、イベント出店を中心に活動。2024年8月に実店舗「SWANK」を東急世田谷線・世田谷駅近くにオープン。USモノを軸としながらも、年代やブランドなどのいわゆる希少性や付加価値にこだわらず、ヴィンテージからレギュラー、クラシカルなモノから、カルチャーを感じさせるモノ、さらにはデザイナーズブランドまで幅広く、その時々の気分を尊重したセレクトを心がける。
インスタグラム:@swank.usedclothing
