ムッシュ イヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの死去にともない、21歳で〈ディオール〉の後継デザイナーとなった。ムッシュはそこで発表したトラペーズラインと〈サンローラン(SAINT LAURENT)〉の立ち上げによりニューモードの旗手として盤石の地位を手に入れた。晩年にはジャック・シラク大統領からレジオンドヌール勲章コマンドゥールを授与された。
そのサクセスストーリーとともにあったのがカサンドラロゴだった。手がけたのは、グラフィックデザインの巨匠、アドルフ・ムーロン・カッサンドル。
彼のペンネームがA.M.カサンドラだったことからいつしかそう呼ばれるようになったカサンドラロゴは気持ち長体のかかったフォント、直線と曲線が支えあうような “Y” “S” “L” の組み合わせを特徴とする。キュビズムの影響が色濃く感じられるミニマルなデザインは慣習を打ち破り、新たなファッションを創造したムッシュの服にこれ以上ない相性の良さをみせた。
昨年、カサンドラロゴを配したその名もカサンドラと名づけられたバッグがウィメンズでリリースされて話題になったが、メンズにおいてもレザーグッズで展開されている。
マットレザーならシルバー、シャイニーレザーならゴールド、グレイン・ド・プードルエンボスレザーならブラックといった具合に、そのロゴは使っているレザーに応じて化粧を変えている。ボディに溶け込みつつ、存在をさり気なく主張する絶妙なさじ加減だ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa