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デンマーク・コペンハーゲンの国際的トレードショーCIFFに、日本のクラフト&ライフスタイルブランドが登場。

世界で最も住みたい都市の上位に常に選ばれる、デンマーク・コペンハーゲン。

今年2月から積極的に脱コロナを掲げ、欧州でもいち早く観光規制を緩和した効果からか、徐々に街に活気が戻ってきた。

「CIFF(シフ)」は、デンマーク語で“居心地が良い時間”“楽しい時間”を指す「ヒュッゲ(HYGGE)」がテーマの国際的なトレードショーで、フイナムでも以前に一度取材に訪れている。

スカンジナビアの風を感じるファッション展示会CIFFに潜入。

年2回開催されており、同時期に開催される「コペンハーゲンファッションウィーク」と合わせて世界中から多くの有力バイヤー、プレスが訪れる、ヨーロッパを代表するライフスタイル・ファッショントレードショーである。

今年は、8月10日〜12日の3日間にて開催され、開催59回目を迎えた。

数あるトレードショーのなかでも、いち早くサステイナブルに注目した国内外のブランドを集約したエリア「CIFF SUSTAIN」を設け、さらにサステイナブル観点に語られるセミナーを会場内で行い、展示会場でも地球環境に考慮したマテリアルを使用するなど、北欧文化に根付くエコロジカルな考えを反映している。

その流れもあり、今回「BEAMS&CO UK LTD」と日本貿易振興機構(ジェトロ)が協業し、日本の優れたクラフトマンシップを紹介する展示「JAPAN: CRAFT&SUSTAIN」が企画された。

展示名にあるように、無駄のないモノ作りをするクラフトメーカー10社に焦点を当て、伝統工芸、職人技の良さを、ファッション・ライフスタイルのトレードショーで展示するという試みが新鮮だった。

日本のモノづくりは、地域の特性、高い品質、持続可能で責任あるものづくりを尊重している。

また、機能的であると同時に、日常を彩る商品としての美しさも追及している点がサステイナブルな動きとも同調して、良いモノをより長く使おうというモッタイナイ精神を伝える展示内容となっていた。

福島県の伝統工芸である会津塗と陶器の技術を融合させた「あさか野窯」や、愛媛県砥部町で採れる良質な”伊予砥”を原料として240年受け継がれてきた”砥部焼”を紹介している「Shiro Ao」。

さらに、1912年東京で創業し、ホウケイ酸ガラスを熔解しているガラスメーカー「小泉硝子製作所」など、百年以上の歴史を持つクラフトメーカーの商品を展示し、北欧を中心とした多くのバイヤー・デザイナーが足を運んでいた。

商品を直接手に取って、細部に渡る日本の高いクラフト技術を堪能した来客者にとってはおおむね好評だったもよう。

北欧の”量より質”を大切にするライフスタイルやコンテンポラリーデザイン、ファニチャーの美学に共鳴する日本の素晴らしいクラフトと各ブランドの持つストーリーに興味を持ったようだった。

また、展示エリアが注目された理由の一つに、同エリアの近くで日本で注目されるファッション・ライフスタイルブランドの5社が参画してくれたことがある。

上質な原料から作る豊かな材料と、日本のファクトリーの確かな縫製でデザインされたメンズウェアブランド〈キャプテン サンシャイン(KAPTAIN SUNSHINE)〉。「CIFF」の印象について「来場者は欧州各国から来場しており、とても熱心なバイヤーが多い印象でした。日本のブランドが注目されていることを実感できました。今後も海外展開は積極的に行いたいと思っています」と語るのは〈キャプテン サンシャイン〉のデザイナー児島晋輔氏。

素材本来の特徴を最大限生かし、オリジナル生地を製作しているメンズ&ウィメンズブランド〈エイトン(ATON)〉。海外マーケティング担当の久保英里奈氏は「〈エイトン〉の生産背景やフィロソフィーに共感して頂けるショップやお客様により多く出会うことを目指して、今回の『CIFF』のように、各国で実際に生地やデザインに触れて頂ける機会を設けたいです。洋服以外のブランドとのコラボレーションなどを行うことも検討しています」と、大きな成果を感じているようだった。

シックでエフォートレスな女性らしさと日本の職人技、サステナブルな素材を融合させたウィメンズブランド〈ラインヴァンド(LEINWÄNDE)〉。ブランドマネジャーの池田氏いわく「国内での展開は、規模感問わずブランドと本当に相性の良い街やお店で展開させてもらってきました。それは海外でも変わりません。グローバルニッチに展開していきたいです。ニットアイテムはサイズフリーとなるので、最初の一枚に手に取ってみていただきたいです」。

日本人にふさわしい、時代に淘汰されないスタイルを追求するアイウェアブランド〈アヤメ(ayame)〉。

デザイナーの今泉悠氏は「国内と比べるとセレクトする商品が独特であったり、各ブランド・ショップのアイデンティティーが明確だったことが印象的でした」と世界的に支持されているセレクトショップのバイヤーと直接コミュニケーションが取れたことに、確かな手ごたえを感じたとのこと。

音楽と同期して歌詞が表示される、次世代型リリックスピーカーを展開する〈コトダマ リリックスピーカー(COTODAMA LYRIC SPEAKER)〉。

日本独特の歌詞カードからアイデアを得ており、その斬新さを一目見ようと訪れた来客者も多かった。

「会期中は天候にも恵まれ、コペンハーゲンは日が長く20時過ぎまで現地の人が川で遊んでいたり、バルコニーで語らっていたりする姿を見ていると、この国で暮らす人々の精神性に触れた感じで、より商品の拡販と認知を高められる可能性を感じた」とはディレクターの沼田氏。

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以上の5社が日本国外で初めて展示した。いずれもオリジナリティあるデザイン、サステナブルな製法で作られるユニークな生地など、日本が誇るテクノロジーを駆使したブランドである。

コロナにより、多くのブランドが国外出張を自粛せざるをえない状況の今、展示会ができずオンラインでのやり取り中心だった昨今だが、今回の出展ではいずれのブランドも改めてフィジカルで取り組む意義を感じたよう。

またバイヤー側にとっても、直接生地や縫製、ブランド・商品の持つストーリーを知ることができる貴重な機会になっていたようだ。

サステイナブルにまつわる問題は人間が今直面している大きな問題のひとつで、良いモノをより長く愛用する、使うという作り手からの想いをストーリーで伝えること、今後はそれが重要になってくるのではないかということを今回の「CIFF」を通じて、改めて感じた。

Text_Narumi Nara
Photo_Maya Matsuura,CIFF

INFORMATION

CIFF

公式サイト

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