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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.64 “歳を重ねるごとにシンクロ値上昇” いまこそオービスのフィッシングベスト。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

ショップが全て入れ替わってリスタートした8シーズン目も、これでラスト! 第64回目は「カラーアットアゲインスト(Color at Against)」の高橋優太さんの2巡目で、シメていただきましょう。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


高橋優太 / Color at Against 店主
Vol.64_オービスのフィッシングベスト

―今回はどういったニュー・ヴィンテージなアイテムを紹介いただけますか?

以前にもこの連載で取り挙げられている〈オービス(ORVIS)〉です。歴史やどういったブランドなのかという説明は、その記事を読んでいただければ分かると思うので置いといて……今回紹介するアイテムはフィッシングベスト。

―〈オービス〉といえば1850年から存在する、フィッシング、ハンティングギアやウエアを主に展開しているアメリカ生まれの老舗アウトドアメーカーですよね。高橋さんはフイナムの他記事を通して、釣り好きであることが周知されていますが、〈オービス〉を知った入り口もそういったアウトドアアクティビティから?

それで言うと逆ですね。以前この連載で〈コロンビア(Columbia)〉を紹介した際にもお話ししましたが、そもそもヴィンテージを買うお金がなく、まだ価値が見出されていなかったレギュラー古着からピックアップして着ていたのがアウトドアブランドでした。で、そのなかでも新品として日本の服屋で展開されていなかった〈オービス〉が妙に気になって調べるうちに、自分自身がキャンプや釣りといったアウトドアアクティビティに興味持つようになり、だんだんと近づいていってという感じです。

―なるほど。そんな高橋さんにとって〈オービス〉はどういったブランドですか?

ぼくの好きな〈エルエルビーン(L.L.Bean)〉や〈エディー・バウアー(Eddie Bauer)〉と同様に、アウトドアっぽいアイテムからタウンライクなアイテムまで見つかり、かつちょっとお高め。なので個人的には“アウトドア界の〈ポロ・ラルフローレン(POLO RALPHLAUREN)〉”と認識しています。実際、アメリカでも金融街のようなエリアに店舗があったりして、ラフな格好では入店できない雰囲気を醸し出していますしね。〈バブアー(Barbour)〉や〈ダブルアールエル(RRL)〉がポジション的には近いかと。

オービスのフォッシングベスト ¥19,800(カラーアットアゲインスト)

―今回ピックアップしていただいたフィッシングベストは、1980年代~90年代のモノだとか。

はい! フィッシングベストは〈コロンビア〉のPFGがちょっと前に流行った際に感度の高い人たちが取り入れている感じでしたが、今はもう普通に誰でも着るようになりました。なんだったら男性よりも女性の方が反応もいいかなって感じています。最大の特徴が収納力。これもスマホに財布、タバコにAirPodsなど日常生活における必須アイテムを入れてなお収納が余りまくっていますし、多種多様なポケットがファッション的アクセントになるんだと思います。まぁ、ぼく的には「釣りに便利だな」としか思えませんが(笑)。

―ディテールも見どころだらけですね。

内側のゴムベルトとかおもしろいですよね。サイズ調整用で、着丈を変えることでよりフィットを得られるようにするのと同時に、ポケットにモノを詰め込んで重量が増えた際に荷重を分散せて軽減させる効果があります。また背面の大型ジップポケットはフライケースを収納したり、リュック代わりにも。

―釣りは荷物も多いですもんね。

そうスね。ぼくの場合、渓流釣りがメインなので移動しながら釣るんですが、その時も手持ちのケースだと邪魔になるんです。あとこの着丈の短さも大事。釣りで川に入る時は腰ぐらいまで水に浸かりますからね。ファッションとして着るならインナーに重ねたトップスとの着丈の違いも楽しめます。それにポケットの多い服って男心をくすぐりません? なんか『AKIRA』のような近未来的な作品に出てくる服もそんな感じじゃないですか。

―非常によくわかります。それでいうと近未来感漂うコチラは?

オービスのフォッシングベスト ウルトラライトベスト(私物)

こっちは現行でラインアップされている「ウルトラライトベスト」という最新型フィッシングベストで、超格好イイんですよ! 立体的にマチが施された胸ポケットにはハサミを挟んだり、その他のポケットもフライケースを入れたりと使い方自由自在。あと首部分のパッドもフィッシングベストでは定番のディテール。柔らかくて伸縮性があるので、荷重がかかった際のクッションとして機能します。そして背面の三角ループには釣った魚をすくう時に使うランディングネットが装着できます。

で、これがまた着てみると非常に軽い! 5~6年前からアウトドア業界、特にトレイル界隈ではギアのUL(ウルトラライト)化が常識となっていましたが、最近はそのカウンターとして「命の危険を晒すような場所なのに、最小限の装備で行くのは間違っている。もっと荷物を増やしてもいいんじゃないか?」っていうオールド回帰に向かった流れもあるそうです。ぼくは両方をその日の気分で使い分けています。

―スタイリング的には、どう着こなすのが正解でしょうか?

ぶっちゃけ適当でイイかと。無地Tシャツでも羽織るだけで格好がつくし、夏以外ならクルーネックのスウェットに極太のパンツというのもオススメ。ただ素材感はボトムスと合わせないように意識した方がベター。見ようによっては軍モノっぽくも見えちゃうのでセットアップ風にならないように。またオーバーサイズのアイテムに合わせることで野暮ったさを軽減させるのもアリ。「ウルトラライトベスト」の方は、ぶっちゃけ釣りでしか着ませんが、最近若い世代の間で人気のY2Kスタイルやテック系の着こなしにも、多分めちゃめちゃハマると思います。

―大人世代でもイケますか?

むしろ年齢を重ねることでより似合うようになるというのがポイントかなと。ウチのお客さんにもそう仰る方が多いですしね。あとは単純にギアとして見た際のユーティリティ性の高さ。自転車に乗る時なんかもバッグ要らず。そして前回の〈マウンテンハードウェア(MOUNTAIN HARDWEAR)〉でもお話したように、アウトドアギアならではの素材や機能性の進化過程をオンタイムで追っていくことができるのも魅力。こういった本来はファッション用途ではないアイテムを、どう取り入れるかを考えるのも楽しいんじゃないでしょうか。

高橋優太 / Color at Against 店主
秋田県出身。〈ステューシー(STUSSY)〉、某アメカジ系セレクトショップを経て独立。東京・代々木上原の駅近くの住宅街にて“遊び心を忘れない、童心を忘れたくない大人たち”をコンセプトに、アメカジをベースとし、古着や国内外を問わず面白さや楽しさを連想させるアイテムを提供するセレクトショップ、〈カラーアットアゲインスト(Color at Against)〉を営む。最近はキャンプや釣りなど、アウトドアにハマっている。
インスタグラム:@color_at_against

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