どこか懐かしい風合いに惹かれて手に取った〈ザ・ロウ(THE ROW)〉のデニムはそれもそのはず、日本では前掛けや半纏に用いられてきた古式ゆかしい硫化染料で染めているという。
硫化染料はその名のとおり硫黄原子を含む染料で、絶妙なアタリも期待できる。淡い陰影が浮かんでいるのは、すでに洗いをかけているからだ。
補強の役割をバータックに担わせるアイデアもいい。リベットを排することでそのデニムの魅力が存分に堪能できる。ガンメタルのシャンクフライにもいえることだが、選んだスペックの一つひとつがいぶし銀の名脇役を思わせる。
足を通せば、スリムフィットの黄金比ともいうべき贅肉のないシルエットが現れる。サヴィル・ロウへのオマージュが根底にあるブランドであることを考えれば、これはわざわざ断るまでもないことかも知れない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa