古きよき〈セリーヌ(CELINE)〉に慣れ親しんだ世代であればエディ・スリマンがアーティスティック、クリエイティブ、イメージ・ディレクターを務めたのはこの上なく喜ばしいことだっただろう。なぜならメゾンの歴史にたっぷり光を当ててくれたのだから。
そんなエディの置き土産ともいうべき意匠がトリオンフだ。
創業者のセリーヌ・ヴィピアナは1972年、エトワール広場で衝突事故に遭った。そのとき、彼女が視界の隅でとらえたのは凱旋門を取り囲む鎖だった。鎖の輪は左右対称の “C” が連なっているようにみえた。トリオンフのルーツとなるマカダムのアイデアが誕生した瞬間である。
まさに災い転じて福をなしたその意匠をエディはこよなく愛した。そうして自らの美意識を頼んで再構築し、トリオンフと名づけた。トリオンフはフランス語で凱旋門の意。着想源となったモチーフを率直に表現した。
「トリオンフ エンボス カーフスキン バイフォルドウォレット」は文字通りカーフスキンにトリオンフをエンボス加工した二つ折りの財布だ。
総柄のトリオンフはノスタルジーな気分をそそるが、アンスラサイト(ダークグレー)のカラーパレットでクールに塗り替えることに成功している。
スナップボタン付きコインコンパートメント1、クレジットカード用スロット4、ラージノートポケット2、フラットポケット2を擁するその財布は実用性の面でみても申し分がない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa