1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
新たにショップが全て入れ替わり、遂に連載は13シーズン目に! 第101回目は、注目エリアである世田谷線沿線は上町にある「Young」の石橋誠也さん & YOSUKEさん! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
石橋誠也 & YOSUKE / Young オーナー、スタッフ
Vol.101_ナイキACGのダウンジャケット&ジップアップジャケット、ノーブランドのビーニーキャップ、ギャップのビーニーキャップ、カルガリー・フレームスのビーニーキャップ
ーさて今回、紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?
こちらの記事がアップされるのが、12月25日(クリスマス)と聞いたので、今回は“ホリデーシーズンとアウトドア”をテーマにしたいと思います。日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカではホリデーシーズンに突入すると「デザインや色使いなどで、クリスマスや新年を盛り上げてくれるようなアイテムを身に付けて楽しもう!」ってノリがありまして。
ーこの時期になると、アグリーセーターなんかが、ネットでもよく話題になっています。
そこでまずはアウターから。こちらは〈ナイキACG(NIKE ACG)〉のダウンジャケット。ロゴから分かるように2000年代のアイテムで、赤と黄色の通称”マクドナルドカラー”がグラデーションで落とし込まれています。
ー日本の街中ではなかなか着用者を見かけない派手色! たしかにテンション上がりそう。
すごく派手で「アメリカ的だなぁ」って思うじゃないですか? ですが多分、日本企画だと思われます。封入されたダウンは800フィルパワー。〈ナイキ〉独自のレイヤリングシステムでいうところのレベル3。アウターとしての着用を想定しており、激しい雨風を凌ぐ機能性を備えています。東京の冬だったらこれぐらいのスペックがあれば十分乗り越えれると思いますし、すごく軽いのもタウンユースにはマッチするのかなと。
ー随所に、おもしろそうなディテールが見受けられますね。
内ポケットに配備されたMP3プレーヤーなどのコードを通すホールなんかはすごく時代を感じますよね。使い勝手も良くて、ハンドウォーマーも兼ねる大ぶりのフロントポケットはグローブを着用したままでも使用可能。みんな大好きで、しかも男女問わず使える万能性。クリスマスっぽい料理で喩えるなら、パーティーの定番であるクワトロピッツァでしょうか。
ーもう1着も同じく〈ナイキACG〉ですが、こちら一見して普通そう。
アイテム的にはウィンドシェルジャケットですかね。このヴィンテージ感のあるホワイトの色合いが、温かみのある良い雰囲気を醸し出しています。
そして注目すべきポイントは裏地。オークなど樹木の木肌がプリントされたテキスタイルを採用しています。やや起毛感もありホッコリムードがクリスマスムードを盛り上げてくれそうじゃないですか? あえて裏地でホリデーシーズンを表現するっていうのも粋かなと。
ーひとつ不思議なんですが、これリバーシルブル仕様というわけでもなく、あくまで裏地じゃないですか。「木肌を纏いたい」なんて需要あるんですかね?
どうなんですかね(笑)。裏地もですがボディに同色糸で入ったステッチも見どころ。ランダムかつアシンメトリーでさりげなく変化を付けてくれます。こちらのジャケットは日本企画ではなく、韓国などで販売されていたアジア企画だったと記憶しています。
ー〈ナイキACG〉には名作と称されるモデルが色々とありますが、今回紹介してもらった2着はどういった立ち位置で認知されているんでしょうか?
名作や人気モデルということは全くなく、むしろ日陰の存在といいますか。好きで掘っていないと決して辿り着くことがないようなアイテムだと思います。90年代のACGで名作とされるモデルって、どれも色鮮やかでコントラストもパキッとしたものが多いんですよね。そこに比べると、ややテンションも異なっていて、ちょっとスタイリッシュだったり可愛さを帯びていたりして、むしろそこが今の空気感にハマるんじゃないかなと思いました。
―では、オススメの取り入れ方を挙げるとすれば?
ガチガチのアウトドアスタイルっていうのはちょっと違うので、味付けを少ししていただきたいっていうところはあります。今ならレザーパンツに合わせてみるとか。あくまでコスプレっぽくならないように、この色や柄を活かす方向で、自由にアレンジを楽しんでもらえればイイんじゃないでしょうか。
ーお次は、ビーニーキャップですね。最近、こういったポンポン付きだったりちょっとファニーなデザインをよく見かける気がします。
ポンポンビーニーは主流とまではいかずとも、たしかに最近の定番になっていますね。ひとつ目に用意したのはノーブランドですが、ノルディック柄の塩梅と配色どちらも調子よくてイイ感じ、ポンポンがヒモの先に付いているからか、より民族的な雰囲気に感じます。
ーもうひとつはビラビラがついていて、より一層ファニー。こちらはニットじゃないんですね。
まだそこまで浸透していませんが、早い子は被っているヘンテコ系を攻めてみるのもイイのかなって。ブランドは〈ギャップ(GAP)〉でフリース素材。デザインとサイズからしてキッズか小さめのウィメンズですが、頭が小さい方なら男性でも普通に被れちゃうと思います。
ーで、3つ目はイヤーフラップ&ポンポンのタイプ。
左サイドに“バドワイザー”のロゴが刺繍されており、フロントにはNHLチームのカルガリー・フレームスのロゴがデザインされています。要はバドワイザーがチ―ムスポンサーってことですね。当然カナダのチームらしくメイド・イン・カナダというのがポイント。
ーニットの本場であるカナダ製というのがアガりますね。なんか信用がおけるといいますか。
この辺は基本的にスキーやスノボで被るようなイメージですが、個人的にも好きでよく被っていますし、普通のビーニーキャップには飽きちゃったという人には絶好のスパイスになってくれると思います。男女問わず取り入れられるけれど、特に女性はコレひとつでコーデが可愛くなるしオススメ。しかもクリスマスって感じがしません?
ーたしかに。『ホームアローン』のマコーレー・カルキンを思い出すというか。
まさにそのイメージです(笑)。今回はニット素材とフリース素材で用意しましたが、後者の方がヘンテコなデザインが多く見つかる気はします。どちらにしても、被り方がポイントです。若い世代の子たちは、ちょい浅めで上の余った部分のシルエットをわざと崩すように被っていたりします。またイヤーフラップの場合、先端のヒモがブラブラするのがイヤなら切っちゃうのもアリ。もちろん、あえてブラブラさせるのもアリ。
ースカーフ巻きに慣れている人は、アゴの下で結んじゃうのも……。
当然アリです! クリスマスに限らず、ホリデーシーズンっていつもよりも浮かれた気持ちになるじゃないですか。そんな時に、服がシンプルだと面白くないので、こういった小物で遊んでもらえればより、ハッピーな気分で過ごせるのではないでしょうか。
石橋誠也 & YOSUKE / Young オーナー、Young スタッフ
ライフスタイルに彩りを添える洋服を取扱う、世田谷区世田谷発のユーズド&ヴィンテージショップ。アメリカのカウンターカルチャーが背景にあるブランドを収集し、デイリーアイテムからデッドストックまで、現地から買い付けた一際目を引く雰囲気の良いアメリカ古着をメインに取り扱う。
インスタグラム:@young_setagaya
公式HP:www.youngsetagaya.com