スカッと!ヨコワケのすゝめ
2011.09.08
秋である。すっかり秋である。
せぷてんばぁ、夏はいつのまにか後ろ姿だ。
季節の変わり目、衣替えの時期ともなると、髪型をどうしようかなと考える。
しかしながら、元来僕は合理性を好み機能性を重視したファッションを善しとしているので、髪型は小さな頃から(自己顕示欲をこじらせた青臭い一時期を除いて)基本的には短髪だ。
ここ10年来髪を切っていただいているヘアメイクさんにも「洗ったらすぐ乾く髪型で」と短髪をオーダーしているし、うち2年間、そのヘアメイクさんに一切会わなかった(つまり、一度も髪を切らず、長髪だった)時期には、「髪を切りに行かないのが楽」というコンセプトが有った。
このようにして僕と僕の頭髪は、互いに気遣いながら、居心地の良い関係を保ってきた。
「ポマード」を使うとき以外には。
15年前、僕が高校1年生の頃に、僕は「モッズ」と出会った。
英国での暴動によりその結末を得るというやんちゃで洒落た文化にすぐに感化された。
髪型は所謂ビートルズのようなマッシュルーム・カットにした。
高校の制服は手縫いで細身、短丈にリメイクした。
ドクター・マーチンのチェルシーブーツをフリーマーケットで手に入れた。
オートバイは無いので、自転車でM-51パーカをなびかせて走った。
完璧だった。
僕は生まれたときからモダンジャズを聴いているし、気になる古着は殆どが60'S。
リーバイスの501も言われなくても風呂の中で穿いて洗っていた。
だから、ずっと前からこの文化に出会うべくしていたのだ。ああ天職だ、めちゃ2イケテル、俺。と思っていた。
そんなある日、ファッションへの求心が報われてか、地元モッズ界の代表格という人物と知り合った。
彼は日本全国のモッズの方々と繋がっていて、バンドのパートはギター。
玉虫モヘアのモッズスーツが似合う、憧れのパイセンだった。
その時期、僕は彼から本当に様々なことを教わった。
ファッションのこと、音楽のこと、車のこと、かっこいい文化のこと。
ためになることばかりを、今の僕の原料みたいなことを植え付けてくれた。
あるいは彼は悪いことをしていたかもしれないけど、僕にそれを教えることはしなかった。
破天荒で子供みたいだけれど、後輩にはとても優しく、面倒見がよかった。
そして、なにより彼はモッズスーツを着るときには髪をポマードでヨコワケていた。
マッシュルームカットでモッズ俺めちゃ2イケテルと思っていた僕にとって、それは衝撃だった。
ポマードでヨコワケるのはロッカーズのすることだと思っていたからだ。
モッズのクラブイベントでもハウスやポップスをかける異色のDJでもあった彼はいつも輝いていて、
「かっこいいこと、MODERNなWORLDってのは決して狭っ苦しいモノじゃないんだぜ。」
ということを常に教えてくれていた。
それから、僕はバスルームでマッシュルームカットを切って、水性ポマードを手に入れた。
ソーダみたいなニオイがする、彼の使っていた物と同じ銘柄だった。
それから僕はもう15年以上、整髪料といえばヨコワケるためのその水性ポマードを使い続けてきた。
それ以外は薦められて使っても続かないのだ。
ポマードとヨコワケは僕にとってはオシャレ以上の意味を持つモノなのだから。
そして、なにか大事なイベントの度に、僕は僕の頭髪をポマードで押さえつけ、痛めつけるようにコームを通してきたのだ。
そして話は現代に戻る。
僕はふたたびヨコワケる新しい理由に出会った。二つの現代ならではの良き整髪料との出会いだ。
もう半年ぐらい前にポマードが切れてしまい、ずっと買いにいかなきゃと思っていたら、旅先のロサンゼルスの床屋「RUDY'S」でアメリカにしては珍しい水性ポマードを見つけたのだ。
調べてみると、かつてDOGTOWNにも所属していたグラント・フクダという日系スケーターが作った物らしい。
かつて使っていた水性ポマードよりもホールド感があり、固まるのにしなやかで、水溶けも良い。
日本でも買えるところもいくつかあるようだ。
何よりスケーターが作った、というのが興味深い。
Tommy Gunsといい、Freemansといい、最近のアメリカン・ヘア事情は活発でクールだ。
もうひとつ、こちらも旅先で出会い、ポマードではないのに最近しばらく愛用できていた整髪料が、ニューヨークで見つけた「KIEHL'S」の「Malleable Molding Paste」。
こちらは超ハードなワックスに近い感じ。ここんちらしい加水分解シルクや大豆タンパクを配合して、さぞかし髪にも優しいのだ、、と思う。こういったヘルシー系にしてはホールド感はとても良いがポマードには劣るか。
こちらは公式通販サイトにはラインナップされていないようなので、日本で買えないようなら失礼。
東西アメリカで出会った甘酸っぱいニオイの整髪料で、この秋の髪型も引き続きィヨコワケに決定。
なんとなく、ぴったりと撫で付けた髪型が気になっていたところでもあった。自分の髪質にも合う。
思うに、日本の街中にはオシャレな人でも髪の毛に気を遣っていない様に見える人が多い。
あるいは気を遣った結果、さりげなくしているのかもしれないが。
僕の愛すべき後輩などは、ざん切りのドライヘアを素のままにしていながら服にはとても気を遣っている。
ここらでひとつ、ヘアスタイルのバランスも含めた、総合的なファッションを見直す機会かもしれないと思う。
カッコつけすぎてもカッコわるいけど、洋服が華やかになる昨今の傾向の中、一点大きなスキがある様に見えるのもどうなのかなという気がするので。すべてはバランスだ。
というわけで、賢明で洒脱な読者諸兄にはぜひ、ヨコワケとポマードをおすゝめしたい。
スカッとヨコワケにチェスター・コート、細くて短めのパンツとVansのスニーカーなんて、カッコいいと思うな。
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