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尾崎雄飛デザイナー/ディレクター/バイヤーなど多角的にニホンの良い物/事/文化を世界へ/未来へ繋げていくことを目指して活動中

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尾崎雄飛
デザイナー/ディレクター/バイヤーなど
多角的にニホンの良い物/事/文化を世界へ/未来へ繋げていくことを目指して活動中

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納涼!「京都・小丸屋の京丸うちわ」

2011.08.04

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ここ最近、涼しい日々が続いている。

夏だというのに今日のような天気が続くと、それはそれでうんざりしてしまう。
真夏日が続けば、それはまたそれで、げんなりするのだけれど。
しかし、夏は夏らしく、暑い方がいい。

僕は元来エアコンが好きではなく、
どの夏も、人が来るか、室温が異常になって熱中症の恐れがあるようなとき以外は、エアコンはつけないでエアサーキュレーターなどでやり過ごしてきた。
空気を循環させれば、激しく暴れたりしない限り死ぬほど暑くはない。
むしろ、エアコンを使って屋外との温度差を作り過ぎてしまう方が、死ぬかもしれない、と思う。

今年の夏は、東京電力の関係で「節電」に対して様々な意見のある夏だ。

ある人は「あの会社、エアコンがんがんにかけてさ、節電する気あるのかな。停電したら大変だよ」と憤り、
ある人は「電力なんて本当は余ってる筈だし、東京電力の嘘には懲り懲り。節電なんて馬鹿みたい」と笑う。

何かに対して意見を持つということはとても良いことだと思うので、意見の中身はどうあれ、とてもいい状況だとは思う。
節電肯定派も、否定派も、お互いを蔑むことなく、意見として尊重して共存して欲しいものではあるが。

僕としては、電気なんてそんなに使わない方が良いと母親や忌野清志郎さんに教えられてきた(90年代、母親が原発反対運動に参加していて、僕も何度となく意見書にサインしたものだった)ので、この夏に限らず節電を推したいと思う。

さて、そんなわけで今回は一番簡単でポピュラーな節電の方法として「団扇(うちわ)」を紹介する。


「京都・小丸屋の京丸うちわ」

IMG_5069.jpg

夏に京都へ小旅行へ行ったりすると店の軒先や壁なんかに、白地に朱の筆文字で「豆千代」とか「小梅」とか華やかな芸妓・舞妓さんの名前が書かれた団扇が飾られているのを見ることができる。
これが「京丸うちわ」といって、京の花街の芸妓・舞妓さんが、夏の挨拶として得意先に配る物なのだそうだ。
この「京丸うちわ」は、花街の各人が、京都に何社かある団扇屋さんにそれぞれ製作依頼をするようで、持ち手の部分に製作社名が書いてある物もある。
2年前だったか、僕が京都でたまたま手に取った団扇は、小丸屋の物だった。
すぐに柄の部分の電話番号に電話して、上の写真の団扇をつくっていただいた。

小丸屋の団扇の歴史は長く、寛永元年、1624年からうちわの製造をしていたという。もうすぐ400年、、、!
この長きに渡り伝統的に、深草の真竹(現在は徳島の真竹)を職人の手で割り、割れた竹の骨に和紙を手作業で貼っていくという製造方法、品質を守っているというのだ。

「最近のうちわの骨はプラスチックや中国製の竹だから、うちわの"かえり"がよくないんですよ」

と、オーナーの住井さんに教わった。
なるほど、徳島の真竹はかえり=しなりがいい。
しなりがいいと余計な力が要らないので、あおぐ行為が楽でにでき、あおいだことで額に汗するようなことも無い。
軽くあおいでも強い反発により起こる風が大きいから、とても涼しい。いい物はいいのだ。

「職人の手作業だから、大量に発注いただいてもコストダウンにはならないんですよ」

ともおっしゃった。
なるほど、一片の竹の切り身を滑らかに削り、総丈の半分ほどまで切れ目を入れて、裂く様にして42本もの骨を作る、そこに丁寧に和紙を貼る。
これらのすばらしい職人技を経て組まれた団扇は芸術的だ。

IMG_5067.jpg

こんな美しくて効率のよい団扇に触れてしまうと、プラスティックの円形の中に小さな円形をくりぬいた"団扇的な物"なんかで必死に風を起こそうという気にはならなくなってしまう。

2011年のこの特別な夏、花火大会は軒並み自粛。
浴衣も団扇もチャンスが減ってしまったが、夏はそれには構いもせず、律儀にやってきている。

蝉と風鈴、縁側とビール。遠くに聞こえる祭り囃子と花火の轟音、光。けむり。
大好きなニホンの夏。


今週末は大きな花火大会がやるらしい。団扇持って出かけよう。
外出するのもひとつの節電になるから。


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