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川田十夢公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。https://twitter.com/cmrr_xxxhttp://alternativedesign.jp/

青雲、それは君が見た光。

川田十夢
公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://alternativedesign.jp/

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「これも自分だと認めざるをえない展」から始まる「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」について

2010.11.04

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始点終点というカテゴリを新たに追加しました。

ここでは、全く関係のなさそうな二点を始点と終点に見立て、ワームホール的な解決と迷宮入りを目指そうとするものです。「AR」「三兄弟」という、一見全く関係のない二つの「属性」を掛け合わせて斬新な見立てを発明した僕の書く文章です。きっと毎回ユニークな展開を見せるのだと思います。

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始点:これも自分だと認めざるをえない展

ピタゴラスイッチ日常に潜む数理曲線など、斬新な見立てをデザインという解決方法を以て発明してきた佐藤雅彦さんが、アートという問題提議に「はからずも」踏み出したことで注目していた展覧会です。

「注文の多い展覧会」と説明される通り、この展示会には、「展覧会を楽しむための4つの準備」が必要です。キーボードで「名前」を入力し、自動「身長体重計」に乗り、空に「星」を描き、「穴」をのぞきます。これらの行動によって、自動的に与えられた「属性」が、この展示会とコンセプトと密接に絡み合い、大きな問題提議を孕みます。

僕の属性は「川田十夢」であり、「175cm65kg」であり、「大きめの星」であり、「2048ビットの虹彩情報」です。僕らは、日々の生活の中で、知らず知らずのうちに「属性」を与えられ、その「属性」に見合った生活を営んでいます。「それを否定すれば事物の存在そのものも否定されてしまうような性質。」が即ち「属性」なのですから、うまいパッケージを発見したものだなと、ギリリと悔しくなりました。

僕も仕事柄、技術や物語をどうやって見立てるか?といった事を日々考えています。どうしたら斬新なのか?どうしたら技術と物語の枠(フレーム)から越えられるのか?そんな事ばかり考えています。だから、この展覧会には徹頭徹尾感心させられました。「今回やってみたことがアートなのか、自分の中でまだ判然としていない」とする佐藤雅彦さんですが、僕の中でアートかどうかはむしろ問題ではなく、その見立てとパッケージの手腕にただただ感服させられた展覧会でした。

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終点:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
(Perfume 結成10周年記念 東京ドームワンマンライブ)
http://www.perfume-web.jp/1234567891011/index.html

Perfume、名前もヒット曲も知ってました。中田ヤスタカっていう、漢字とカタカナのマッシュアップ芸名属性(例 マイケル富岡/コージー冨田)の人が発明したユニットですよね。ポリリズムは、本当にポリリズム(polyrhythm)で出来ているんですよね。「ジェニーはご機嫌ななめ」とか、カバー曲の選曲渋いですよね。TVBros.で連載持っていますよね。
...くらいの印象だったPerfumeでしたが、友人の写真家から「真鍋大度が舞台装置に参加しててヤバいらしい」という甘い誘いをウケて、うっかりお邪魔したのがこのワンマンライブです。

冒頭から、アイコンともいうべきビットビットした映像と、メカニカルかつ身体的な三位一体ダンスで観客を魅了していたPerfume。何度か、その世界に没入しかかりましたが、一応入り口が舞台装置だったので、舞台装置と音楽とパフォーマンスがどう同期しているのかを重点的に見ていました。途中、メインステージの背後に上がったバルーンが、曲のリズムと同期してチカチカ色を変えたり、スクリーンに投影される映像がビジュアライザー化していたり、それらしき箇所はいくつか見受けられましたが、やがてPerfumeという物語に没入したくなった僕は、考えるのを辞めました。

辞めた瞬間、始まったのがPerfumeのステージの見せ場の一つ、「コールアンドリスポンス」です。あ〜ちゃんこと西脇綾香が、おもむろにアリーナ席とスタンド席を指差して「はい、こっからここまでがにんじんね!」と「属性」を与え始めました。僕はこれによって、新たな属性「にんじん」を手に入れました。他の席の人々は、その場所ごとに「たまねぎ」「じゃがいも」を与えられていました。僕は「にんじん」という、斬新な属性を与えられた喜びに酔いしれていました。が、次の瞬間、あ〜ちゃんが「みんな、お肉ね。だってみんなお肉好きでしょ?」と、にんじんとは全く違う属性を全員に与えました。僕は愕然としました。佐藤雅彦から与えられた「属性」に紐付く問題提議は、あ〜ちゃんの「カレー理論」によって、もろくも崩れ去りました。

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単なるネタのような今回の始点終点ですが。案外そうでもありません。Perfumeが東京ドームで繰り広げたパフォーマンス、そして体験した一体感は、どんな装置にも勝る装置だったと思います。「誰でも楽しめる」は、必ずしも「アート」のツラをしてやって来ない。「意味のない」ことに内在する「誰でも楽しめる」こそ、僕が追求したいことはあるなと。うっかり思い至ったドリームファイターなのでした。

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