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川田十夢公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。https://twitter.com/cmrr_xxxhttp://alternativedesign.jp/

青雲、それは君が見た光。

川田十夢
公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://alternativedesign.jp/

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旅の発明、それは日常を旅みたいにする道具の発明。

2012.09.20

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不意に更新するフイナムブログ。いま新千歳空港のラウンジにいます。相棒のMacBook(トラックパッド)の調子が悪くなってしまったため、アイスクライマーのような重力のなかでこれを入力しながら、旅について考えています。

たとえば、鞄を新しくします。いままで使っていた鞄に入っていたものの中で、必要なものだけを新しい鞄へ移します。これによって生まれた余白には、新しい生活で必要となる道具を与えます。ちょっとした旅行気分が不意にやってきます。
そもそも、旅と日常の境目は何でしょうか。遠くへ行くためのチケットの有無でしょうか。いつもより大きめの鞄の存在でしょうか。旅先で読みたい本を選ぶという時間でしょうか。この境目が、僕にはちょっと分からないものになりつつあります。
小さい頃、よく使い方の分からない道具の夢を見ました。どう使っていいか分からない道具を、夢の中の住人は当たり前に使いこなしている。僕はそれをただ観察する。そうか、なるほど。そうやって使うのかと分かった頃に目が覚める。現実にその道具は、まだ存在しない。その設計をメモして、いつか使えるんじゃないかと想像する。次の日から、その道具に必要なメカニズムを探す。
いまは、このよく分からない道具を現実に自分で発明することを生業としています。だから、道具の夢は見なくなりました。逆に、税金を納める夢を見るようになりました。現実に税金を納めていない訳でもないのですが、夢と現実のリアリティのバランスをどこかではかろうとしているのだと思います。

話を旅に戻します。ここ北海道へ出掛ける前に、真鍋博という人の本を何冊か鞄に入れておきました。その中の「たびたびの旅」という本に、「旅を発明する」という項目があります。これが、僕が見ていた夢にとてもよく似ていて、奇妙な気持ちになりました。以下に引用します。

ぼくが発明しようとしているのは、"旅する機械"だ。といっても、動力のついた乗り物ではない。その形は芝刈り機に似ている。特別な仕掛けはないが、芝を刈る部分にあたるところが強力な冷却装置になっている。だから、機械といっても乗るのではなく、これを押して旅をするのだ。

道なき道をゆく。それがぼくのやりたい旅だ。道なき道とは海の上だ。地球の表面の三分の二は、海におおわれている。だから、ここは地球ではなく、水球だ。陸地ならどこかで切れているが、七つの海を渡ってゆけば、世界のどこの国へも、どこの島にも辿り着ける。

ここでいう"旅する機械"。僕の夢に登場したことがあります。真鍋博が七つの海を旅する機械で渡ろうとしたように、僕も夢や現実や物語や国境や文化や時間によって分け隔たれた世界を、びゅーんとワープしたり歩いて渡ったりできる道具を発明したい。それは、新しい旅を発明することであり、日常を旅みたいにする道具を発明することでもある。

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