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川田十夢公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。https://twitter.com/cmrr_xxxhttp://alternativedesign.jp/

青雲、それは君が見た光。

川田十夢
公私ともに長男。「AR三兄弟の企画書(日経BP社)」、「ARで何が変わるか?(技術評論社)」、TVBros.連載「魚にチクビはあるのだろうか?」、WIRED連載「未来から来た男」、ワラパッパ連載「シンガーソング・タグクラウド」、エンジニアtype連載「微分積分、いい気分。」など。発明と執筆で、やまだかつてない世界を設計している。
https://twitter.com/cmrr_xxx
http://alternativedesign.jp/

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軽いものを重く見せようとする人にも、重いものを軽く見せようとする人にも、ブランドの概念がある。

2012.12.30

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不意に更新するで有名な、ぼくのフイナムブログ。多分、今年最後の更新となります。

興味深い騒ぎがありました。大ネットレーベル祭というWOBM渋谷で開催されたイベントで、渋谷慶一郎さんの顔がプリントされたステッカーを無断で配布した人たちが、本人に呼び出されて謝罪したというものです。怒る気持ちもステッカーを配布したくなる気持ちもわかりますが、いまはもう完全に鎮火した話。これについてぐだぐだと掘り下げる野暮はしません。ただ、この一連の騒動には、ブランドに関する重要な要素があるように感じています。ので、あらためて別の角度から、話を進めようと思います。

前提として、世の中には、軽いものを重く見せようとする人と、重いものを軽く見せようとする人がいます。ブランディングというと、つい前者の方に重きを置いてしまうのですが、ブランドという概念が内包するのはそれだけじゃないと僕は思います。重いものを軽くする人にだって、ブランドの概念がちゃんとある。そして、それを必要とする人たちがちゃんといる。

全然違う話をするようでつながった話をしますが。こないだ、東浩紀さん、津田大介さん、清水亮さん、速水健朗さん、梅沢和木さん、藤村龍至さんらと、福島へ同行しました。福島第一原発観光地化計画という、重いものを重くあつかう人からすると、狂気だとか簡単に言われてしまうかもしれない企画を、相馬市のみなさんに直接説明するという難しい場所でした。ここでは色々なことが巻き起こったし、その経過はおそらく来年発売の思想地図でまとめられるはずなので、ここでは細かく報告しませんが、ひとつだけ。軽い重いの話に通じる重要な出来事があったので伝えておきます。
福島第一原発跡地をどうやって観光地化してゆけばいいのか。中心メンバーたちのプレゼンテーションが終わった頃合い、次は僕がAR三兄弟としてARでこういうことが出来るんだよと、おもしろプレゼンショーを繰り広げようと思った矢先でした。会に参加していた現地の学生が突然声をあげて泣き始めました。おもしろプレゼンショーはいったん中断。東さんが学生に駆け寄って、話を聞いて、諭して、また再開。どんよりとした重苦しい空気がそこに蔓延していました。でも、僕はビームを出しました。鳩を出しました。ARは重いものを重く見せるだけじゃない、重いものを軽く見せることだってできるし、そっちの方がはるかに観光地らしい。最初にまず興味をもってくれれば、重いものに一緒に取り組んでくれるようになる。そういう、メッセージでもありました。
そして、懇親会。ここで現地の人たちの本音を聞くことができました。「さっきの川田さんのプレゼン見てて思い出したんですけどね。わたしらが最初に笑ったのは、コロッケだったんです。慰問に来てくれてね。笑うなんて気持ち、ずっと忘れていたから。もう涙が出るまで、お腹を抱えて笑った。ああいうのが、本当はいちばんありがたい。」

いつだったか、渋谷慶一郎さんがDOMMUNEに出演されたとき、AR三兄弟の話題に触れていました。映像は、シアタープロダクツのARファッションショー。前後ちゃんと見てないので定かではないですが、僕が見た場面だけで集約すると「ブランドよりも本人たちが前に出ている意味がわからない」ということでした。これには、重いものを軽くするものとして、補足したいことがあります。あの試みは、震災直後のものでした。ファッションショーの開催が不謹慎なのではないかと、そういう風潮が蔓延していた時期でした。だから、僕らは顔を出すことにしました。これ以上の説明は省きます。ユーモアは本来、説明するものではないからです。

話を元に戻します。世の中には、軽いものを重く見せようとする人と、重いものを軽く見せようとする人がいます。どちらにも、ブランドの概念があります。もっと平たく具体的な言い方をすると、プライドがあります。どちらが一方的に正しいということはないし、敵対することもないです。むしろ、お互いの立場から、世の中のバランスを保てばいい。おもしろくすればいい。一緒になって、重さと軽さを配合して、悲しみを吹っ飛ばせばいい。そういう話です。

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