Vol.11 キャベツ - 水月デスロック（渡辺俊美）

一昨年と、去年に急性膵炎になって入院してしまった。
経験したことのない、とてつもない鈍痛で病院の受付の前で失神してしまった。

原因はお酒とストレスだそうだ.....。
お酒は解るが、ストレスとは？！
今まで好きでハマった事を仕事にしていた自分にストレスなどない！と思っていたし、ストレスというのはエコと同じで巧い商売のうたい文句なので、そんな物はそもそもこの世に無い思っている。
でも、４０過ぎて自己管理も出来ず周りの人に迷惑をかけてしまったのは事実なのでそんな自分に深く反省した。
反省をしていると、自分も含めてちゃんとしている大人など本当いないなぁ〜と、つくづく感じながら勇気も沸いた（笑）。
お医者さんには次になったら膵臓癌か重度の糖尿病になると言われたので、現在はお酒は嗜む程度で、消化の悪い食べ物や脂っこいものはなるべく摂らないようにしている。

従って大好きな「とんかつ」が余儀なく食えなくなった。
入院前は都内のトンカツ屋を隈無く回って食べていた。特に、上野から須田町までの昭和の味がする店が好きだった。
双葉、武蔵野、ポン多本家、蓬萊屋、とん八亭、丸五、やまいち、万平、勝漫など、その時のお財布とお腹の具合で選んだ。
それぞれの店の味は違っても自分の食べ方は変えなかった。
最初に日本酒を頼む。店内の雰囲気を満喫しながら香物をアテに静かに呑み、とんかつが揚げ上がるのを待つ。
日本酒が半分ぐらい進んだ所でとんかつが来る。
まずは、とんかつの両端の部分の二切れを残りの塩で食べる。
日本酒に最高に合う。酒を飲み干したらご飯とお味噌汁を注文する。
小皿をもらってソースを入れる。からしも入れる。混ぜる。からしは、ソースに混ぜる事によって香りと辛味が増す。ソースにパンチが出る。
残った真ん中の肉をソースが入った小皿で踊らせてご飯とみそ汁で、幸せを噛み締めながらゆっくりいただく。
最後にお肉と同じ位大好きな千切り『キャベツ』を塩味とソース味で美味終了！

もうすぐ、美味しい春『キャベツ』が収穫される。
夏、秋、冬に採れた『キャベツ』は葉がしっかりしていて歯ごたえがあるので煮込みや炒め物合う。
とんかつを食べた後の口の中は熱い衣の影響で皮膚が弱くなっている。
しっかりした冬キャベツの葉はちょっと刺激が強すぎる。春キャベツは葉が柔らかいので、弱った口内にはピッタリなのだ。
というわけで、とんかつに欠かせない相棒『キャベツ』は春キャベツが良いのだ。
と、言う事はとんかつの旬は間違いなく春になる。

久しぶりにとんかつを食べに行こう.....
いや、優しい『キャベツ』を食べに行こう！！！


渡辺俊美


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