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COLUMN

Curry Flight

文・写真:カレー細胞

ラーメンと並ぶ日本のソウルフード・カレー。こと近年は、めくるめくスパイスの芳醇な香りにトバされ、蠱惑の味わいに心を奪われる“中毒者”が後を絶たない。そして食べると同時に、語りたくもなるのもまたカレーの不思議な魅力だ。この深淵なるカレーの世界を探るために、圧倒的な知識と実食経験を誇るカレー細胞さんに、そのガイド役をお願いした。カレーは読み物です。
 
カレーを巡る、知的好奇心の旅。
今日もカレーで飛ぼう。知らないどこかへ。

第4便 この頃、地方のカレーがアツすぎる。

この頃、地方のカレーがアツいのです。
 一口に「地方のカレー」といっても、いわゆる地元食材を用いた町おこしの一環としての「ご当地カレー」のことだけではありません。

SNSによって都心と地方の情報格差がなくなり、ネット販売によって必要なスパイスや食材が地方でも手に入るようになってきた。
 もちろん、その地方特有の地の利や食材、伝統文化など東京にはない要素だってある。
 結果、高い志と強い個性を持ったカレー店が、地方にどんどん現れてきているんです。

今回は注目すべき地方のカレーたちをご紹介。
 他のどの国にもない、日本におけるカレー文化の多様性をお楽しみください。

 

話題沸騰!大阪「スパイスカレー」の世界。

 

もともと大阪のカレーといえば「難波 自由軒」や「インデアンカレー」といった洋食ルーツのカレーライスでしたが、今では「スパイスカレー」が大阪カレーの代名詞となっています。
 ここ1、2年でテレビや雑誌などの全国メディアでよく取り上げられるようになり、みなさんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
 ですが、この「スパイスカレー」という定義自体がかなり曖昧で、私も随分と「スパイスカレーとは?」という記事を依頼され、あちこちに書くことになりました。
 簡単にいえば「小麦粉やカレー粉を用いず、スパイスから仕込んだカレー」なのですが、大阪においては「今までのカレーライス文化に対するカウンターカルチャー」であり、「こうでなければならないという常識から離れ、自由な発想で創るカレー」という文脈が強く存在し、それ故、カレーシェフにミュージシャンが多かったり、音楽やファッションと組み合わせたカレーイベントが多く存在するのが特徴です。

加えていうならば、最近の大阪カレーの特徴は「スリランカ要素」と「和出汁」。
 実は、スリランカ料理のレベルが日本一という大阪、その影響と、関西特有の出汁文化が組み合わさり、新しいカレーの境地を確立しつつあります。

 

大阪スパイスカレーのレジェンド店のひとつ「Colombia8」、他に類を見ない唯一無二のスタイル。

大阪スパイスカレーの代表店「旧ヤム邸」は2017年東京・下北沢に進出。
スパイスカレーが全国区となるきっかけになりました。

大阪の次世代出汁系スパイスカレー「お出汁とスパイス 元祖エレクトロニカレー」は中毒性高し!

急成長を遂げる福岡カレーシーンの凄み。

東京・大阪に次ぐ新たなカレー爆心地といえば九州・福岡。
 長きにわたり、福岡独自のスリランカカレー店「ツナパハ」独り勝ちだったこの地ですが、ここ数年で凄まじいほどのカレーの多様化を見せています。
 大阪スパイスカレーに負けない華やかさと個性に加え、豊富な海の幸山の幸を生かしたカレーが強味。
 近年は南インド料理の浸透も目覚ましく、独自のスパイス料理文化が花開いています。

天才的かつ変態的センスでカレーという料理を再構築する「アフターグロウ」。麻婆カレーも魅惑的だ。

スパイスカレーと南インド料理のエッセンスが組み合わさった「クボカリー」の華やかさ!

北陸で花開く現地式スパイス料理の魅惑

北陸のカレーといえば、古くからの洋食文化にルーツを持つ「金沢カレー」が有名ですが、近年注目すべきはパキスタン料理。
 実は、富山県射水周辺に中古車輸出を行うパキスタン人たちがコミュニティを形成、通称「イミズスタン」と呼ばれるほど、ハイレベルな現地式パキスタン料理店が多数存在しているのです。
 その影響を受けてか、北陸にはかなり尖ったスパイス料理店、カレー店が次々に登場。
 ちょっと目が離せないエリアとなりつつあります。

 

イミズスタン代表店のひとつ「ザイカ」のパキスタン料理ビュッフェ。

富山湾で獲れた魚を贅沢に使った南インド料理。高岡「クシ」にて。

金沢に登場したビリヤニ専門店「ジョニーのビリヤニ」。
写真はプレオープン時のもの。

 

北海道、地元食材を活かしたカレーの底力!

地方のカレー文化といえば、北海道を抜きに語ることはできません。
 札幌を中心に定着した「スープカレー」文化は、「大阪スパイスカレー」文化の大先輩ともいえます。実はこの北海道スープカレーって、インド由来のもの、スリランカ由来のもの、インドネシア由来のものなどルーツはさまざま。
 いわゆるアジア現地のスパイス料理を、北海道の豊富な食材を活かすよう進化したのが、今日のスープカレーといっても良いのではないでしょうか。
 しかし近年ではスープカレー以外にも、北海道の食材をスパイスで引き立てるというコンセプトはそのままに、スパイスカレーや南インド料理のお店も続々登場。
 北の大地の底力を見せつけてくれます。

 

北海道といってもかなり広い! 道内各地に店舗を構えるスープカレーの店「奥芝商店」は、
その土地その土地の地元食材で作ったメニューを店舗ごとに展開。

帯広「ダール」の冬季限定ナンドゥマサラ。ワタリガニを丸々一匹用い、
信じられないほどの旨味が凝縮した南インドカレー。最早カレー蟹味噌と呼ぶべきか。

 

今、キているのは大分・別府1?

 

2019年現在、カレー目線で注目の地方は? と訊かれたなら、私は大分・別府を挙げます。(某料理雑誌でも特集を組んでいただきましたが)近隣の福岡カレー文化の影響だけではありません。
 温泉街として「よそ者」を受け入れる気風、つまりダイバーシティの歴史が育まれてきた別府という土地が、食においても異文化を受け入れ共存するのに適していたのでしょう。
「こんな尖ったものは、地方では受け入れられない」なんて良く聞くフレーズは、別府には全く当てはまらず、面白いカレーが面白いまま、次々と繰り出されてきています。
 なんて幸せな土地!

東京で人気だった独自の重ね煮カレーをひっさげ故郷に凱旋した「青い鳥 別府」。
大分の食材を得て、さらにパワーアップ。

 

地元食材の魅力を活かした南インド料理「TANE」は味も雰囲気も抜群!

 

日本各地から、ネクストブレイクのカレーを見つけよう。

ここに紹介した以外にも、全国各地に面白いカレーが登場してきた今日この頃。
 実に、キリがない楽しみが広がっているわけですが……。

 

いろいろ巡るのもそれはそれで大変(交通費、時間的にもね)。
 実際行けたとしても「あそこ良かったよ!」なんて人に薦めるのも大変(遠いじゃん! で大抵終わります)。

 

けれど、この地方から大きく動きつつあるカレー文化を、なんとか紹介したい。
 文字や写真だけじゃなく、食べてもらわなきゃわからない。
 ということで私、今年の8月から新しい取り組みを始めたんです。

 

その名も「SHIBUYA CURRY TUNE」。

 

毎月一店舗、地方からネクストブレイクのカレー店を渋谷にお呼びして、出店していただくという取り組みなんです。

 

沢山のカレー店がワーッと集まり、ワーッと盛り上がるカレーイベントも良いけれど、一つのカレー店の魅力を、世界感含め味わえるイベントも良いと思いませんか?
 第一回目の8月は福岡「アフターグロウ」、二回目の9月は大阪「お出汁とスパイス 元祖エレクトロニカレー」でいずれも大好評。
 10月は台風でお休みした後、次回11月は静岡「ロストコーナー」、12月は長野「アドゥマン」が渋谷に登場します。

 

静岡のカレーシーンを牽引する「ロストコーナー」。

 

キャプ長野の山あいにある、驚くべきスパイスカレー「アドゥマン」。

 

いずれも東京にはない個性的なお店ですので、皆さんにも是非食べていただきたい。
 詳しくは公式サイトをチェックしてくださいな。
 shibuya-curry-tune.sib.tv

 

今後は東北、四国あたりも注目していきたいところですね。

 

今や日本は、世界に誇るカレーダイバーシティ。
 さて、次回はどんなFlightをしてみましょうか。

PROFILE

松 宏彰(カレー細胞)
カレーキュレーター/映像クリエイター

あらゆるカレーと変な生き物の追求。生まれついてのスパイスレーダーで日本全国・海外あわせ3000軒以上のカレー屋を渡り歩く。雑誌・TVのカレー特集協力も多数。Japanese Curry Awards選考委員。毎月一店舗、地方からネクストブレイクのカレー店を渋谷に呼んで、出店もらうという取り組み「SHIBUYA CURRY TUNE」を開催している。

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