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COLUMN

Curry Flight

文・写真:カレー細胞

ラーメンと並ぶ日本のソウルフード・カレー。こと近年は、めくるめくスパイスの芳醇な香りにトバされ、蠱惑の味わいに心を奪われる“中毒者”が後を絶たない。そして食べると同時に、語りたくもなるのもまたカレーの不思議な魅力だ。この深淵なるカレーの世界を探るために、圧倒的な知識と実食経験を誇るカレー細胞さんに、そのガイド役をお願いした。カレーは読み物です。

カレーを巡る、知的好奇心の旅。
今日もカレーで飛ぼう。知らないどこかへ。

第18便 ジャパニーズカレーフェスティバルという試み。

私はこれまでずいぶんあちこちでカレーを食べてきました。アジアだけでなく、南米のアタカマ砂漠から南アフリカの海岸、ミクロネシアの小さな島に至るまで。そうして六大陸のうちオーストラリアと南極以外でカレーを食べてきて、気づいたことがあります。
それは「世界的に見て、日本のカレー文化は凄い」ということ。

京都「茶の間」のカレー

日本人の多くは「カレーの本場はインド」と言います。もちろんインド料理は日本のカレーのルーツではありますが、インドの人々には「毎日カレーを食べている」という意識はありません。インドではありとあらゆる料理にスパイスが用いられていますが、彼らの意識ではそれはカレーという食ジャンルではなく、それぞれ別の料理。

日本に「Curry」をもたらしたのは英国やフランスですが、ここでもカレーという食ジャンルが日本ほど独自進化しているわけではなさそうです。
(英国には『British Curry Awards』というイベントがあるのですが、その対象店の多くはオーセンティックなインド料理です)

一方日本では、トラディショナルなカレーライス=日式咖喱飯だけでなく、そこから派生したカツカレー、カレーうどん、北海道のスープカレー、大阪で進化したスパイスカレー、そして世界各国から集まったスパイス料理が日本食材と出会って生まれたフュージョンなど、カレーというジャンルの広がりと多彩さは世界に例を見ないものといえます。

「カレー」という食ジャンルを国民食として取り入れ、独自進化させ、多様性を獲得した国という点において、世界最高のカレー大国は日本と言ってよいでしょう。

和の食材を用い再構築された「Japanese Spice Curry WACCA」のカレー

実際、海外のグルメサイトで“curry”が“Japanese Food”のサブカテゴリだったり、英国でカジュアル日本料理チェーンから火がついた“Chiken Katsu Curry”が空前の人気を誇っていたり、中国や東南アジアだけでなくインドにも「ココイチ」が進出し「インドにカレーがやってきた!」と喜ばれているなど、Curryは日本発の大人気グルメとなりつつあります。

サンチアゴの人気日本料理店「SHOO-GUN」のカツカレー

ですが、肝心の日本から海外へ、日本の多様なカレー文化がまとめて発信される機会はとても少ないのが現状です。
なぜでしょう?
日本人に「カレーの本場はインド」という思いが強すぎるからかもしれません。

けれど「ラーメンの本場は中国」ともはや誰も言わないのと同様に、カレーを日本の食文化として堂々と発信して良いのではないか。そう思うのです。

そこで、2年前から温めていた企画をついに実現させます。

その名も『JAPANESE CURRY FESTIVAL』。

多彩な『JAPANESE CURRY』が渋谷に集結。
期間は2021年10月27日(水)から11月15日(月)の3週間。
渋谷のあちこちに地方からやってきたカレー店が限定営業する一方で、渋谷にあるカレー店が限定メニューを提供したり、カレーをカルチャーとして捉え、バンドとカレー店の対バンイベントや、カレーで街を良くしていくためのトークセッションも行います。

詳細はJAPANESE CURRYFESTIVAL公式サイト公式ツイッターで随時情報公開していきますが、その見どころ(食べどころ?)を少しご紹介していきましょう。

カレー×音楽 対バン@O-nest

ミュージシャンにはカレー好きが多いし、カレー店のシェフにはミュージシャンが多い。
カレーと音楽は、単にどちらもハイになれる手段というだけでなく、クリエイティブ面でも共通項が多いと感じます。そこで、カレーと音楽の対バンをやってみようと思います。

ブッキングするカレー店は、関東・関西・九州という3大カレー圏それぞれでエッジを立てたレジェンド級の3トップ。対するミュージシャンは様々なジャンルで今勢いのある3組。
ここから何が生まれるのか、何が破壊されるのか、ぜひ目撃してみてください。

11/10 Wed.
YANUSHI×Afterglow

福岡カレーシーンで最もクレイジーな鬼才ぶりを発揮する「アフターグロー」。煮干カシミールからRED HOT CHILIカレー、麻婆カレーに至高のカツカレー、果てはカツ丼やナポリタンにも異才ぶりを発揮する入部シェフがYANUSHIの音にぶつけてくるカレーとは?
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11/11.Thu.
IMAI×堕天使かっきー from大阪

泣く子も黙る大阪カレーシーン最強の猛者「堕天使かっきー」。ニッポン・カレーガストロノミーの最先端をひた走るそのカレーは、食材から調理法まで全く予測不可能。 自身もベーシストとして活動するかっきー氏、対バン相手IMAIの音楽をどう解釈しカレーで表現するのか?
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11/12 Fri.
Lucie,too×Spice Drunkerやぶや

横浜で日本酒とスパイス料理のペアリングコースを提供する唯一無二の存在。「Spice Drunker」の名の通り、シェフの藪さんは元プロボクサーという異色の経歴。ハードなスパイス使いと繊細な食材使いで、Lucie,tooの音楽とどうペアリングさせてくるのか?
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全国から渋谷に集結するカレー店たち

会期中は普段東京で食べられない地方のカレー店が渋谷のあちこちにやってきます。 会場別にご紹介しましょう。

◎会場1:偏愛食堂
東京都渋谷区宇田川町21-1 西武渋谷店A館8F

こちら「偏愛食堂」には大阪・京都の超人気カレー店が3店次々に登場します。

・10月27日(水)〜11月3日(水祝)「スパイスカレー43」

大阪のカレー同業者たちから実力派としてリスペクトされる「スパイスカレー43」。今回はドライキーマカレーとポタージュ、トッピングを自在に組み合わせていただく「オーダーメイドドライカレー」を提供します。その組み合わせ、実に27通り!可愛らしいビジュアルに偽装したスパイスマジックに痺れてください。

・11月4日(木)〜8日(月)「INDIA GATE」

先日、西武池袋本店で開催した『東京カレーカルチャー』にて大行列を作り、同場所の売り上げ新記録を樹立した驚愕の話題店が渋谷に。
鯛や煮干しなどの出汁を用いた独自のビリヤニは、インド料理でもあり和食でもある、完全なる未知の領域です。今回は席数も多いため、池袋の行列に断念した方にも大チャンス。
さらに今回は「バスマティ米のジェラート」も準備中だとか。どういうこと!?

・11月9日(火)〜15日(月)「Asian kitchen cafe百福」

大人気店「百福」はネパールの定食「ダルバート」とタイのカレーラーメン「カオソーイ」を提供。「ダルバートもカオソーイも百福が一番好き」という人が後を絶たない絶品の味。作り立てを東京でいただける機会はなかなかありませんよ。

◎会場2:トウカカレー
東京都渋谷区道玄坂1-6-10 早川ビルB1F・B2F

マークシティのそばにある新スポット「トウカカレー」には、私の故郷である神戸のカレーが集結。いずれも東京でいただけることが奇跡といえる、貴重なお店揃いです。

・11月1日(月)〜5日(金)「サヴォイ」

三宮地下街で1988年創業。「神戸のソウルフード」と言われる「あのビーフカレー」が奇跡の渋谷出店! 「あぁ、あの味が食べたい……」と禁断症状になっている東京の神戸出身者のみなさん。こんなチャンス滅多にありませんよ。もちろん、名前は知っているけど食べたことはない、という方にも是非食べていただきたいです。

・11月6日(土)、7日(日)「神戸カレー食堂 ラージクマール」

SNSで #神戸をカレーの街に というハッシュタグを見た方も多いのではないでしょうか。その仕掛け人である「ラージクマール」さんが渋谷に初出店。今回提供するのは「3種のホワイトカレーあいがけプレート」(生クリーム仕立てのホワイトチキンカレー、柚子胡椒ホタテカレー、ナスの中華風炒めの南国キーマ)
昨今のお店には珍しい、リッチな北インドテイストを織り込んだあいがけカレーに注目です。

11月13日(土)、14日(日)「元町チキンカレーの店 パルフェ」

神戸といえば洋食文化の街。チキンカレー一本で行列店となった「パルフェ」さんが渋谷にやってきます。フルーティーな甘さの後にヒリッとくるスパイスの辛さ、フライドチキン仕立ての鶏肉。一度食べるとクセになる美味さです。

◎会場3:ヴァンダリズム
東京都渋谷区宇田川町26-9 太田ビルB1

渋谷センター街、「松屋」の脇の階段を地下に降りると出現する「ヴァンダリズム」では、これまで東京で紹介されなかった「仙台カレー」が集結。東北のアツいカレーシーンを東京で体験できるまたとない機会です。営業はピンポイントなので日程を要チェック!

・10月27日(水)、28日(木)「CAJA LIBRE」

グルテンフリーで、シャバシャバで甘さの後に辛さが追いかけてくる仙台甘辛系カレー。具は玉ねぎと鶏ひき肉で酒のお供にもぴったりの味です。もちろん東京初登場、逃すべからず。

・11月3日(水祝)、4日(木)「紅茶とクラフト酒の店タイフーン」

仙台の老舗ティールームがインドから直輸入した最高品質の紅茶と、特注の宮城県産豚粗挽き肉で作ったキーマ「ゼロ辛紅茶キーマ燻製デュカと絹ごしsoyチーズ」を提供。
米にこだわる仙台らしく、特注の登米産5分づき米を使用。調味料から手作りしている燻製と発酵の創作副菜で変化をお楽しみ下さい。

・11月10日(水)、11日(木)「3FLAVOR CURRY」

通称「スリフレ」として知られる仙台カレーシーンの中心的存在。米にこだわる東北らしく、ライスがおにぎりになっている点は見逃せません。コメが主役のスパイスカレーです。
今回提供するのは「酒蒸し鶏のキーマカレー 古代米ブレンドバスマティライス」
野菜出汁が効いたキーマと純米酒に漬け込み旨味を引き出した蒸し鶏。インドのバスマティライス・宮城県産のつや姫・生命力が極めて強いとされる古代米をブレンドしたおにぎりでいただきます。和と印の親和性をお楽しみください。

・11月15日(月)「はらいそカリー」
仙台の夜、朝までスリランカ料理からチオピア料理まで提供する異色のBAR「ritikuku」のお弟子さんにあたるカレー店。今回はインド料理を独自アレンジしたミールスで勝負します。1日のみの営業なので逃すべからず!

そして……こちら「ヴァンダリズム」ではスペシャルゲスト枠として、八丁堀の名店「Japanese Spice Curry WACCA」も登場!
日本のカレーを進化させるトップランナーが渋谷センター街で提供するカレーとは???
只者であるはずはありません。乞うご期待!
※11月8日(月)のみの限定営業になります。

◎DJ Bar東間屋
東京都渋谷区道玄坂2-14-8 TSUTAYA O-EASTビル2F

私のレギュラーイベント『SHIBUYA CURRY TUNE』の会場となっている「東間屋」では、『SHIBUYA CURRY TUNE』×『JAPANESE CURRY FESTIVAL』のコラボとして11月14日(日)の1日限定で別府を代表するカレー店「青い鳥∞黄い蜂」が登場!

陰陽バランスを整えると言われる「重ね煮カレー」と日本みつばちの蜂蜜を組み合わせたメニューを提供します。こちらは前売り券発売中。 当日券も出す予定ですが、売り切れ御免、確実に食べたいなら前売りをお勧めします。

限定メニューを提供する渋谷カレー店

もともと渋谷で営業するカレー店も名店揃い。会期中は限定メニューの提供をいたします。
参加店は
「エリックサウス マサラダイナー」
「ほるもん倶楽部あじくら」
「カレーショップ初恋」
「パーラー大箸」
「カリカリスパイス -KKS」
「上等カレー渋谷本店」
「ケニックカレー」
「ハブモアカレー」
「アーンドラダイニング渋谷店」

「あじくら」ではスリランカと韓国ミックスのカレープレート、「アーンドラダイニング」ではゴアじゃなくアーンドラのビンダルー(←このヤバさわかります?)、「ハブモアカレー」では発酵野菜スープのポークカレー、「ケニックカレー」ではその名も「渋谷プレート」など。胃袋がいくつあっても足りませんね。ごめんなさい。

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA Idea Session 渋谷x刺激 @ONLINE 11/9 Tue. 16:00~

“アイデアと触れ合う、渋谷の10日間。”として、11月5日(金)~14日(日)に開催される都市型イベント『SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2021』(SIW)とのコラボレーション企画です。SIWのアイデアセッションでは渋谷に集まるクリエイターたちとユニークな視点でテーマを設定したフリーブレストを行います。『JAPANESE CURRY FESTIVAL』では“渋谷x刺激”をテーマに、カレーにまつわる有識者と共に刺激的なトークを繰り広げます。

スピーカー
松 宏彰(カレー細胞)
金山 淳吾(渋谷区観光協会 代表理事)
三嶋 達也(「口癖はカレー」主宰)
稲田 俊輔(エリックサウス総料理長)

詳しくはこちら

秋のカレー3フェス横断スタンプラリー

東京では時を同じくして、『神田カレーグランプリ』『下北沢カレーフェスティバル』という2大カレーフェスティバルが開催されています。これに『JAPANESE CURRY FESTIVAL』を3フェスそれぞれの参加店でスタンプを一つづつ、計3つ集めると、景品がもらえるスタンプラリーを実施します。
景品の引き換えは西武渋谷店A館8F「偏愛食堂」にて。
自宅でカレーが作れるスパイスキットかスリランカのライオンビールが選べます。
(※ビールは年齢確認あり。いずれの景品もなくなり次第終了)
さらに『下北沢カレーフェスティバル』のおまけスタンプ1個もプレゼント。

詳しくはJAPANESE CURRY FESTIVAL 公式サイトの下段「秋のカレー3フェス横断スタンプラリー」から。

ぜひ、神田・下北沢・渋谷を渡り歩いてみてくださいね。

コロナ禍における飲食打撃の中、カレーという食ジャンルの逞しさが目立ってきています。様々な食材を取り入れることができフードロスが少ない特性、テイクアウトやデリバリー、冷凍にも適した特性、異なる文化や食ジャンルをクロスオーバーできる特性。酒類提供ができない居酒屋やBARがランチや間貸しでカレーを提供する場面も一層増えており、「食のオルタナティブ」としてのカレーはますます注目されていくことでしょう。
今回が初開催となる『JAPANESE CURRY FESTIVAL』ではニッポンのカレー文化を、ニッポンから国内外へ発信する。そのきっかけとなるべく、盛り上げていきたいと思います。
みなさんもぜひ、ハッシュタグ(#ジャパニーズカレーフェスティバル)で日本のカレーを盛り上げていただければとおもいます。

さて、次回はどんなFlightをしてみましょうか。

PROFILE

松 宏彰(カレー細胞)
カレーキュレーター/映像クリエイター

あらゆるカレーと変な生き物の追求。生まれついてのスパイスレーダーで日本全国・海外あわせ3000軒以上のカレー屋を渡り歩く。雑誌・TVのカレー特集協力も多数。Japanese Curry Awards選考委員。毎月一店舗、地方からネクストブレイクのカレー店を渋谷に呼んで、出店もらうという取り組み「SHIBUYA CURRY TUNE」を開催している。

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