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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.5 梅田の換気塔。

10年ほど前のこと、再開発が進む梅田駅の周辺を歩いていると、銀色に光る異様な雰囲気を持つ塔があるのに気がつきました。いつもは車で通っていたので気づいていなかったのですが、その塔の持つ空気感たるやただならぬものだったのです。

まず頭をよぎったのは、ロサンゼルスのダウンタウンにある、フランク・O・ゲーリーが設計した「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」でした。

気になってすぐに調べてみると、それは単なるモニュメントではなく、1963年に建築家、村野藤吾により梅田の地下街の吸気用に作られた建造物でした。しかも「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」が2003年の建設なので、それよりも遥か前に作られていたものなのです。

今でも色褪せないステンレス板の硬質な輝きは、柔軟さの印象もあり、僕の中で一番好きな建造物となったのは言うまでもありません。

ちょうどその頃、大阪歴史博物館で『村野藤吾 やわらかな建築とインテリア』が行われていたり、たまたま僕の店のお客さまに村野さんのお孫さんがいたのが分かったりと、不思議な縁があったのも忘れることができません。

近年、様々な名建築と言われる建物が、老朽化や開発により失われつつあります。

携帯電話ばかり見て歩いてないで、上を見ながらもっと建築やそのデザインを肉眼で見て焼き付けておきましょう。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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