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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

vol.20 民藝の100年。

ここ4、5年は郷土玩具などを含め日本の古いものを見ている方が楽しくなってきました。 コロナの影響もあり海外へ行く機会なども少なくなった今となっては、それにさらに拍車がかかったように思います。

そんなタイミングで現在、竹橋の国立近代美術館では「民藝の100年」が開催されています。
昨今の民藝に対する注目度の高まりなどもあって、週末には混み合っているとのことだったので、それを避けるために平日の遅い時間で足を運んできました。

民藝の父、柳宗悦の没後60年記念展ということもあって、全国各地の民藝館や個人による貴重な所蔵品が集まっており、民藝の流れや時代背景などを知るにはなかなか見ごたえのある展示内容です。

その中でも、僕がいつかどこかでやってみたかった、民藝運動に携わった先人達が着ていたという服の展示が興味を引きました。
古い写真で見るといつもツイードのジャケットを着て、胸には懐中時計といった服装で行動していた彼らは、さぞかし地方では異彩を放っていた集団に違いありません。そんなことについても展示があり、ツイードはバーナード・リーチを介してイギリスのものを入れていたんだとか。河井寛次郎の眼鏡も、それはもう素晴らしかったです。

きっとどんな業種の人が見ても、何かしらを得たり知れたりする展覧会だと思いました。

そしてこんな内容の濃い展覧会はもう一度足を運ぶことをお勧めします。
一度目では目に入ってこなかったものが見えてきたりと、必ずと言っていいほど新たな気付きがあるのです。
会場内は一部を除き写真はNGなので、もちろん展覧会図録の購入は必須です。

どんなにコンピューターが普及しようとも、美術館などで肉眼で見る情報は頭の中の引き出しを増やしてくれるのです。
それは画面という平面で見るよりも、心に響き残る行為でもあります。

行けるところには行き、良いものはたくさん見るということは、その後の人生を左右するくらい大切な行動だと再認識させられた展覧会でした。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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