Vol.6 練り上げという宇宙。
この美しく大きな鉢は直径55センチあるとても大きなものです。作家の名前は広島県の福山で窯を構える掛谷康樹さん。
そして、この独特な柄は、釉薬や絵付けではなく「練り上げ」という技法によるものです。もちろんただでさえロクロを挽いて、この大きさのモノを作ることは簡単なことではないのですが、この手法で作るとなると、破損やキズのリスクもあったりと、気を使う製作過程などを考えると、ちょっと頭が下がるというか、緻密さや精密さは計り知れません。
その「練り上げ」というやり方は違う色の土を重ねたり練り込み、それをカットして、型で成形するというもの。金太郎飴に例えると想像ができるかもしれません。まあ口で言うのは簡単ですが、少しでもくっつきが悪いまま焼いてしまうと、割れやねじれが生じ、商品にはならなくなってしまいます。しかもひとつでも破損が生じると、そのロットで作ったものは同じところに問題を起こすことになるそうです。
それがこの大きさですから、僕にとっては見た目的にも軽く宇宙に見えてきます。
そんな作る姿や人柄を想像することから見てみると、またモノが愛おしくなったり違う角度で見えてくるのです。
それゆえに、これは僕の宝物なのです。


PROFILE

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com