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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.7 ピーター・シャイアのこと。

ピーター・シャイア(Peter Shire)はロサンゼルスを拠点に活躍するアーティストです。陶芸を中心としたその作風は、今年73歳とは思えない、見る者を楽しませてくれるモノばかりです。80年代にはイタリアの伝説的なデザインチームであったMemphisに所属し、ポストモダンのムーブメントを引率していたメンバーのひとりでもありました。

そんなピーターとの出会いは7年くらい前のこと。もちろん彼の功績は知っていましたが、ロサンゼルスの知人から紹介されスタジオを訪れてから、僕の中のスイッチが入っていくことになったのです。

正直それまでの彼らの作品の印象は、派手で手元には置いておくにはちょっと…、という感じでした。ただ彼に直接会い、ピーターの人柄や世界観を目の当たりにし、手に取ってみるとすんなりと受け入れられて、取り扱いを始めることを決めるまで、まったく時間は必要ありませんでした。

それは僕が見てきたテーブルウェアで、こんなに生活を楽しくしてくれるものは、今までないものでした。特にマグカップに関しては、朝のコーヒーを淹れるという楽しさを教えてくれたり、習慣付かせてくれたりと、普段の生活を変えさせるものでした。朝の日の光の中で使うそれはまた格別で、1日のスタートを心地よくしてくれるのです。

作り手に会うという行為も、またモノの見え方を変えてくれるものです。人柄を感じて作品を手にしたり、手にして人柄に触れてみるのも、モノを愛していく上でとても大切な行為だと思います。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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