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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.9 小鹿田焼のこと。

東京と福岡との2拠点の生活を始めて変わったことのひとつに、小鹿田焼への見方があります。

それまでも何度となく、大分県は日田の皿山という窯元が集まった集落には足を運んでいましたが、頭の中で消化してしまうというか、記憶の中にしまっておく程度になっていました。それが福岡に行くようになり、買い付けの最中に手にする機会も増え、小鹿田焼の魅力を肌で感じ取るようになったのです。

それはとびきり古いものではなく、昭和の頃に作られた30年か40年くらい前のものを持った時に感じる、何というか、手から入ってくる情報、つまり厚みだったり凸凹具合だったり、いろいろな意味での重みでした。今のものにはない、ずっしりとした、ちょっと使いづらいくらいの重さというか、安定感のような。

小鹿田焼には、飛び鉋や刷毛目と呼ばれる独特な装飾があるのですが、古いものはそういう具合もリズミカルで間隔も美しく、現代のものとは違う魅力を感じるのです。また、古い小鹿田焼には、底の裏面などに「小鹿田」「小鹿田焼」という見分けるための印があったり、窯によって印が違ったりと惹かれる部分でもあるのです。

それから福岡に行くたびに、小鹿田焼を仕入れることが増え、個人的にも使うようになり、身近なものへとなっていきました。さらに東京の豊島区には小鹿田焼の専門店「ソノモノ」があり、店主と話していくうちに、その興味にも拍車がかかりました。

目から入ってくる美しさももちろんですが、手からの感覚も大事にすることで、またモノの見え方が変わるかもしれませんね。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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