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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.11 舩木研兒という画家。

舩木研兒は昭和2年生まれの島根県の陶芸家です。父、道忠(みちただ)と共に親子二代に渡り、駒場にある日本民藝館に作品が所蔵されるという、輝かしい功績を持った人でもありました。残念ながら2015年に他界をされましたが、僕の中では今でも一番の陶芸家です。

舩木さんの最大の魅力は、なんと言ってもその描写力。なんでも画家を目指していたそうで、その腕前もたしかなものです。なので今回のタイトルは「陶芸家」ではなくあえて「画家」としました。幼少期には河童の絵を描き、母から褒められたことで、それ以降は河童の描写の作品を多く作ったそうです。

濱田庄司氏に師事をし、その後バーナード・リーチにその才能を見出され、1942年には渡英しリーチのもとで作陶をします。そして日本民藝館で結婚式を挙げた唯一の人物と聞くと、濱田氏などの民藝第一世代の先生方からもかわいがられていたであろう、その人柄のよさを垣間見ることができますね。

描写する才能と陶芸家としてのセンスが混ざり合うのですから、ほかに見ることのない唯一無二の作品となるのは必然であり、素晴らしい世界が広がるのも納得できます。

数々のテクニックをこなす舩木さんの作風は、これからも僕の心を掴んで離さないもののひとつなのです。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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