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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.12 タピオ・ヴィルッカラの木製品。

僕がいちばん好きな北欧のデザイナーは? と聞かれたら、答えるのはフィンランドのタピオ・ヴィルッカラです。その活躍はガラス製品からケチャップのボトルなどの工業製品までと多岐に渡ります。

ガラスメーカーである「イッタラ」でもたくさんのアート作品や製品のデザインを残していますが、僕が彼の作品でいちばん魅了されたのは積層の木材を使った作品群でした。

それは北欧ではポピュラーな木材であるフィンランドバーチ(白樺)を用いた合板から作られており、その接着面の色の違いを葉の葉脈などに見立てたり、年輪のような表情を持たせたものなのです。見ていてうっとりとしてしまう美しさを持っており、何時間でも見ていられるほど。

ボウルが美しいのはもちろんのこと、テーブルの天板についてはどう作っているのか、全く理解できません。波打たせたように接着をして断面を使っているのか、板状のものから曲がった刃で削り出しているのか…

いずれにしても箱根の寄木細工のように、表面を鉋のようなもので薄く挽いているのは確かなようです。しかもタピオは削った際に出てくるこれらの柄を、頭の中で計算できたそう。

自然界からインスピレーションを受けているタピオらしい作品でもあり、フィンランドバーチ特有の経年の変化で飴色になったその姿は、一層その魅力に拍車をかけるのです。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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