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COLUMN

How to see -モノの見方-

文:郷古隆洋

普段どうやって買い物をしていますか。ネットで情報を集め、比較しながら吟味を重ね、モノを買うのが当たり前になっていませんか。例えば蚤の市で見つけたライトやオブジェのような、世界にひとつの存在感で暮らしに彩りを与えてくれるようなモノ。衝動買いがいいとは言いませんが、もう少し自分の感性や気持ちに忠実にものを買うのもいいかもしれません。ここでは、世界各国から集められたインテリア雑貨をはじめ、ヴィンテージアイテム、工芸品、郷土玩具など、ジャンルや年代、地域を限定せず、独自の感性で蒐集している郷古さんに、モノの見方や楽しみ方を教えてもらいます。

Vol.13 キム・ホノさんの器。

キム・ホノさんは愛知県瀬戸市に工房を構える陶芸家です。

キムさんの作品に出会ったのは、2015年に京都のKAFE工船という喫茶店に行ったときのことでした。京都の2月ということもあって底冷えしていたので、暖かいカフェオレをいただこうとオーダーをすると、出てきたカップが、今までに見たことのないとてもインパクトのあるものだったのです。文字が入っていたり、色の入り方も自由で、僕の中では宇宙のような壮大さを感じるものがありました。もう誰の作品かを聞かずにはいられずに尋ねると、瀬戸市で作陶をしているキムさんの物と。

そして初めて工房を訪れることができたのはその4年後、去年のこと。この世界観も持ったキムさんという人物は一体どんな人なんだろうと、僕は興味津々に対面したのです。

やはり物の芯を追求したようなことを多く話しましたね。白という色についてや陶器以外のことなど、いろいろと物にまつわる話に花が咲いたのは言うまでもありません。ちょっといままで会った人にはいないタイプの方で、正直キムさんの頭の中がどうなっているのか覗いてみたくなりました。

おとなしい定番的な食器もいいのですが、キムさんのような作品を食卓に取り入れるのも、なんとも楽しくて時間の流れを変えてくれます。変な先入観は一度取り払って、こんな宇宙のような作品で食事をいただくのもいいのです。意外にもいろいろな料理と相性が良く、今までにない世界を見せてくれますよ。また、季節やシチュエーションで使い分けができるくらいの食器の量があるといいですね。

いまの僕の目標は、自分の店でキムさんの個展を開催してもらうことで、どうラブレターを書こうか悩んでいる毎日なんです。

PROFILE

郷古隆洋
Swimsuit Department 代表

ユナイテッドアローズ、ランドスケーププロダクツを経て2010年に Swimsuit Department を設立。輸入代理店をはじめ、世界各国で買い付けたヴィンテージ雑貨などを販売する BATHHOUSE も運営のほか、店舗のインテリアコーディネートやディスプレーなども手がけています。2015年9月には、日本で初の開催となるモダニズムショーを主宰。
http://swimsuit-department.com

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