PROFILE
1979年生まれ。〈メゾン ミハラヤスヒロ〉にて靴・アクセサリーの企画生産を務めたのち、2012年に〈ダブレット〉を設立。2018年6月、LVMHプライズにてグランプリを受賞。日常にユーモアと驚きをもたらすデザインを軸に、国内外でコレクションを発表している。
PROFILE
1976年生まれ。〈メゾン ミハラヤスヒロ〉に立ち上げメンバーとして参加したのち、同社の運営するセレクトショップのバイヤーや店長として従事。2012年に〈ブラン〉を設立。アイウェアをバッグや靴のように日常的に楽しむものと捉え、「ファッションアイテムとしての空気感」を大切にする。
挑戦を繰り返した果てに。
ーまずは2人の関係性から聞かせていただけますか?
Ino: 関係性かぁ…(ドアの方を見ながら)あれ、あそこだけ色を塗らないんですね。ナベさんのアイウェアと同じだ。(※〈ブラン〉のアイウェアはどれも左側のテンプルエンドのみ色が変えてあり、それがブランドのアイコンになっている)
Watanabe: 取れちゃってるだけですよ(笑)
Ino: ああ、そうですか。てっきり会議室までプロダクトと合わせてるのかと。
All: (Laughter)
ーこの会話だけで関係性のよさが伝わってきました。前職でご一緒だったんですよね?
Ino: そうですね、〈メゾン ミハラヤスヒロ〉にいる時期がいっしょで。ナベさんにはすごくよくしてもらってました。パリについて行かせてもらって、現地でもいろんなところへ連れて行ってもらったり。先輩ですね、先輩。
Watanabe: 先輩“でした”かな。過去形ですよ(笑)
Ino: いやいや、いまもですよ! 何をおっしゃる(笑)
Watanabe: ぼくはお店の方で。当時、三原さんの会社の別事業としてやっていたセレクトショップのバイイングとか店長をしていたんですけど、パリで〈メゾン ミハラヤスヒロ〉のショーが終わったあとに買い付けに行くってなったときに、会社の方針で企画側のひとも数人連れて展示会を回っていたんですよ。いい勉強になるからと。
Ino: そうそう、そのときにナベさんがぼくをすごい誘ってくれて。
ーとなると随分前からのお付き合いということですね。
Ino: かれこれ20年の付き合いになりますかね。
ーかなり長いですね。確かブランドを立ち上げたのも同じくらいでしたよね?
Ino: いや、ナベさんの方が少しだけ先だったような…?
Watanabe: ぼくは2012年に三原さんのところを辞めて、その年のうちにサンプルを仕上げて、実際に売り始めたのが2013年でした。まあ、ほぼ同時期ですね。
Ino: その頃のことをよく覚えているんですけど、ぼくのはじめてのコレクションのときに〈ブラン〉のサングラスを使わせてもらったんです。そしてそこから、いままでずっと使わせてもらい続けてるんですよ。アイウェアはずっとナベさんのとこのものですね。
Watanabe: ほんと、おかげさまで。乗っからせてもらってます(笑)
Ino: いやいや(笑)。で、使わせてもらっているうちに、いっしょにつくろうかっていう話になって。
Watanabe: これで8個目。たくさんやりましたねー。
26SS88EW14 – EYEWEAR
¥52,800
ー8個目のコラボアイウェアは、これまでのものと比べて比較的ベーシックなたたずまいですよね。
Ino: いままでのものは、どこにでもありそうな、でもどこにもないサングラスっていうのをコンセプトにつくっていました。ナベさんが思うアイウェア像と、ぼくはそれに対してチャレンジしたいっていう部分で意見を出し合いながら、ナベさんにうまくまとめてもらって形にしてきました。レンズにテンプルをつけましょうよ、とかね。
Watanabe: 井野くんと話しているとぶっ飛んだアイディアがいっぱい出てくるんですよ(笑)
Ino: ホログラムみたいなのやりましたよね!
Watanabe: やったね。いちばんはじめは井野くんが『マトリックス』のことを言っていて。「黒画面に緑の文字が全体にばーっと並んでいるのがいいんです、あの緑って出せますか?」って言うから、ぼくは世の中にある緑色のプラスチックパーツをかき集めて、井野くんに送った記憶がありますね。
過去のコラボアイウェア。
Ino: 結局それは頓挫しちゃったんですよね。
Watanabe: そうそう(笑)。そのほかに井野くんの要求で覚えているのは、「レンズにホログラムプリントをして、右を向いたらハワイ、左を向いたら宇宙、みたいにできないですか?」ってやつ。
All: (Laughter)
Watanabe: そしてそのときぼくは、井野くんの要求に応えるべく、ホログラムプリントを学びに大日本印刷まで行くことにしたんです。まあそれもロット数の問題で断念。あとは、どうしても視界が限られちゃうから、掛けたひとが事故なんかに遭ってしまったらマズいな、というのもあって。
Ino: ほんと、いつもありがとうございます。
ーそういうものを経ての今作。正直、これまでの話と結びついてこないのですが…。
Ino: 過去7回、いろいろとチャレンジさせてもらいました。それらを経て、次回からは違うフェーズにいこうってつくる前に話したんですよ。いままではレンズにテンプルがついているのをアイコンにしよう、としていたんです。誰が見ても〈ダブレット〉と〈ブラン〉のアイウェアだって分かるのが理想、と。
Watanabe: そうですね。あれは特徴的だから。
Ino: だけど7度目のコラボをした後に、自分が365日掛けたくなるような、“自分たちが欲しいと思う”そういう原点に一度戻ってみようと思ったんです。もちろん、これまでのものも欲しくてつくったんですよ? だけど、どうしても掛ける日が限られちゃうじゃないですか。いわゆるアイウェアをデイリーなものとして、というのが8作目のスタートでしたね。
ーそれでこれまでとはガラッとテンションが変わったのですね。なにかモチーフみたいなものはあったんですか?
Ino: ちょうどティモシー・シャラメが出演してた『名もなき者』を観たタイミングで、ボブ・ディランってやっぱかっこいいなーと思って。ああいう雰囲気の、時間が経っても変わらずかっこいいものをつくりたいです、ってナベさんに相談したんですよ。
Watanabe: 新しい…、ぼくらのなかでは本当に新しい会話でしたね。
Ino: まさにオーセンティックというか。サングラスの絵を描いてくださいって言われたら誰もが描くような形のサングラス。そこからナベさんが鋭角にカットを入れるなどのディテールを工夫してくれたんです。少しだけキャッツアイにしたりとかね。
Watanabe: ほんとに少しだけ、だけどね。
Ino: 微キャッツ! みたいな感じですよね。あとはフラットなレンズ。オーセンティックでありながら、当時ボブ・ディランが掛けていたのとは全く違う、いまだからできる技術とかクオリティをふんだんに取り入れた仕上がりになっています。レンズの厚みもしっかりしてますもんね? 平面なのに立体に見えるっていう、建築的なつくりにナベさんが仕上げてくれて。
ー渡辺さんがミリ単位の調整を繰り返すことで生まれた一本ということですね。
Watanabe: そう言うとすごいことに聞こえますけど、メガネって大体はミリの話なんですよね。1ミリって本当にちょっとですけど、メガネの1ミリってだいぶデカいんです。
Ino: 顔ですもんね。
Watanabe: そう、顔そのものなんですよ。だから微調整はたくさんしましたね。
Ino: テンプルのカラビナはメガネチェーンをつけられるってことからスタートしてて。もちろんここにキーホルダーを付けてもいいし、推しのぬいぐるみを付けてもいいし、いろんな楽しみ方ができるアイウェアだなって思いますね。
Watanabe: すごいシンプルなパーツですけど、一応全部、このアイウェア用の特注です。
ーこの立体感というのはどうやって出しているんですか?
Watanabe: 少し技術的な話をすると、レンズの周囲にテレビジョンカットという技法を用いているんです。昔のブラウン管のテレビって、モニターが少し傾斜しているじゃないですか。要はレンズをモニターに見立てて、カットを入れていくというわけですね。
Ino: そんな細かいこだわりのおかげか、ナベさんのアイウェアって似合わないひとがいないんですよ。だからショーで毎回アイウェアが足りなくなるっていう。似合いすぎてみんなに掛けさせちゃうから(笑)
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