誰もが足を踏み入れられるわけではない、特別な祭りに。
ランチを済ませたあとは、石垣島の中でも一番大きい鍾乳洞を観光することに。20万年ものときをかけてつくり出されたという自然の造形です。
ジトっとした空気の中、深い洞窟へ潜っていく。キラキラと光る鍾乳石の間を進む。どんどん暗くなっていき、地面は滑りやすくなっているけれど〈ブランドストーン〉のソールは頼もしい。
田中さんといえば、その個性的なファッションでも注目を浴びています。一方で、自分で選んだ服は、ことごとく似合わないのだそう。
「おしゃれだねって言ってくれるひともいるんですけど、自分で選んだ服を着ると、めちゃくちゃダサい。だから最近は、みんなが『いいね』ってやつを買ってます。ファンの方からのプレゼントもありがたくて。ぼくを客観的に見てくれてるから、全部似合っているんだと思います」
田中さんはその昔、某セレクトショップで働いていたこともあります。ただ、あまりにも店のイメージとは違ったファッションと見た目、そして接客態度だったため、ずっとバックヤードで仕事をさせられていたのは、界隈では有名な話。
夜は川平地区の節祭(シチィ)を見学させてもらうことに。季節やときの折目を意味する節という言葉がつくこの祭りは、八重山諸島に古くから伝わるのもの。地域ごとに特徴があり、川平では漂泊の旅をしてきた神が村の各家々を訪問し、豊穣を授ける来訪神祭祀が行われます。
現場は祭という言葉から想像されるような、三線や太鼓が奏でられるにぎやかなムードというものではありません。執り行われるのは、特異な形式を持つ、古層の祭祀。その空間に漂うのは神の言葉と、神をもてなすひとびとの声、そして風の音だけ。固唾を呑んでただただ静かに見守ったあと、田中さんが発した「いやぁ、すごかったっすねぇ…」という言葉だけを、ここに残しておくことにします。
「奇祭っていうのは結構情報が出ていますが、“秘”祭はちがうんです。宣伝もしないし、祭り側も部外者に来てほしいとも思ってないですから、情報は外に出てこない」
その言葉通り、地域のひとにお願いして観せていただくか、お呼ばれしない限りは、その場に立ち会うことはできません。長いときを超えて受け継がれてきた文化には、その土地に住むひとびとの想いが宿っていますから。