生活の中に時代を生き抜いてきたデザインを。
ー知れば知るほど面白いと。〈ノンネイティブ〉のプロダクトは上品さをすごく大切にされていますし、そこには藤井さんの美学が反映されているのだと思います。これらのスツールにも通ずる部分はありますか?
Fujii: それでいえばデザインじゃないでしょうか。ミニマルな中にもデザインが効いている、その品の良さとか。あと、どこの施設のためにつくったかによって異なった材料が使われているのも面白い。アフリカ、インド、メキシコなど、その土地ごとの気候と用途と合った素材が選ばれているんです。その上で、見た目と部屋のインテリアとのバランスで選んでいます。
シャルロット・ペリアンによるラタンのスツールは、どこか和の雰囲気をも漂わせていて、和室にもマッチする。「触った時の質感や雰囲気、インテリアと馴染むかどうかが重要」と藤井さん。
ー藤井さんが選ぶスツールは、フランスのモノが多いんですか?
Fujii: そうですね。フランスのモノは北欧系に比べると遊び心があるし、和室にも美しくフィットするんです。和の要素を取り入れたイサム・ノグチも最初はパリでブレイクしていますし、フランスと和の相性がいいんでしょうね。建築家も装飾芸術家も空間をデザインする職業なので、彼らがつくるファニチャーはインテリアに調和しやすいんだと思います。
ーこれまでに、探しまくった末に手に入れたモノも?
Fujii: そこまではないかな。ヴィンテージ・ファニチャーの世界にもすごいコレクターが沢山いますが、ぼくは「これでなきゃ!」というこだわりというか執着心があまりなくって…。さすがに電化製品のような機能性が重要なジャンルは違いますが、服や車、カメラなんかはその時々のノリで買っちゃいますし。
ーなんとなく、藤井さんのモノ選びの視点が垣間見えてきました。
Fujii: “高くていいモノ”は、もちろん世の中にいっぱいあります。だけど、たとえこういった仕事をしていたとしても、家族がいて生活があるとなれば、現実的に買えるかどうかのラインは自ずと決められてきますからね。
ー家族とモノ選びの話も出ましたが、ライフステージの変化はモノ選びにも影響するものでしょうか?
Fujii: 家族の成長は多分に影響してくると思いますよ。子どもが幼稚園生の頃、ソファにアンパンマンの絵を描かれちゃたなんてこともあったし、犬に噛まれたなんてこともありました(笑)。その点、こういったスツールなら「傷があっても格好良く見えるからいいか」みたいなところはあるかも。
ー今回ご紹介いただくアイテムを決めるとき、他にどんなモノが候補に上がっていたのかが気になります。
Fujii: すごく難しかったです。写真を撮らないからカメラも必要ないし、オーディオ類もあまり興味がない。強いて挙げるなら時計かなとも思ったけれど、よくよく考えてみたら時計も大してコダワリがあるわけではないし…
ー勝手ながら藤井さんはモノ選びのこだわりが強いタイプだと思っていたので、すごく意外です。
Fujii: 思い入れの強いモノに接していると疲れちゃうのかもしれないです。だから靴も服も、汚れたり破けても気にならないっていうのはあって。あと、ぼくはオリジナルであることにそこまでこだわっていません。何だったら持っているのがブートの可能性だってあるし、万が一そうでも「まぁ、しょうがないかな」って。
ーそれでもイイんですか?
Fujii: 以前はヴィンテージデニムもいっぱい持っていたけれど結局売ってしまったし、時計だって〈ロレックス(ROLEX)〉のヴィンテージモデルをすべて手放して、現行モデルに買い替えたりしていて。現行モデルの方が扱いもラクですし、時計好きのマウント合戦に付き合う必要もない。単純に飽きっぽいというのもあるけど、それ以上に自分が所有するモノに対して“どうでもいい”と思っているんでしょうね、ぼく自身が。
ーデニムもスニーカーも時計も日常的に使うという意味では同列にあるように感じますが、スツールだけがエッセンシャルとしてあり続ける。その理由は、なぜでしょうか?
Fujii: 身に纏うモノって鏡でも使わない限り、全体像を自分が眺めて楽しむことができないじゃないですか。車だって運転席から外観は見えないですし。でも、スツールは部屋に置いてるだけでいい。自分の好きなデザインをいつでも眺められるからだと思うんです。どれもイイ顔していますし、生まれてからこれだけの時間が経っても壊れることなく残っている。木材にしろラタンにしろ鉄にしろ、やっぱり天然素材はすごいですよね。
ーなるほど。では、お気に入りのスツールがあることで生活に変化はありますか?
Fujii: 少なくとも、自分の生活空間にあることで変わってくる部分はあると思います。時代を生き抜いてきたデザインが身近にあると何かイイんですよね。数多のファニチャーが現れては消えていった中でいまも残っているということは、それだけ人々の営みと密接に関わって大事にされてきた証拠なわけで。そういった視点でモノについてを考えることができるようになる。というのは、お気に入りのスツールを所有するひとつの良さだと思います。
ーもし、スツールのコレクションを誰かから譲ってほしいと言われたら?
Fujii: そうですね…さすがに少し悩むかもしれないけど、最終的には「まぁ、いいか。どうぞ」と言っちゃうかもしれません(笑)
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