PROFILE
1979年生まれ。愛知県出身。モデルとして広告やファッションメディアなどで活躍。4年前、長野県・軽井沢町に移住し、有機栽培をスタート。無農薬のコーヒーを自家焙煎する「渡邉珈琲」は27年間続けている。今年4月から福島県・川俣町で1300年以上の歴史を持つ“川俣シルク”のPRを務め、軽井沢と川俣の二拠点生活を送る。
野菜を育てるために土壌を育てる。
4年前、東京から軽井沢に移住した渡邉さん。着実に歩みを進めていたモデルの仕事でしたが、そのやりがい以上の生きがいを模索するべく、新天地へ踏み出すことに。
「やりたいことは、片っ端からやってみようと思いまして。でも、東京に住んでいると周りに流されちゃって、なかなか行動に移せなかったんですよね。結局、それって自分の気持ちの弱さもあったと思います。そこで、環境を変えれば自分を突き動かせるんじゃないかと思って、軽井沢に移住しました。東京からの距離もちょうどいいし、大自然に囲まれながらも街は洗練されているのが気に入っています」
やりたいことのひとつにあったのが、農業です。もともと料理を趣味に持ち、熊本や宮崎から有機野菜を定期便で購入していましたが、子どもが生まれたことをきっかけに、安心安全でおいしい野菜を自分で作ろうと決意。そして、育てた農作物を加工品に仕上げる6次産業を目指し、レストランやパン屋などで修行を重ねながら、自分の畑を持って今年で3年目を迎えます。この日は畑の様子を確認しながら、少しだけ玉ねぎを収穫。
「この時期はまだ作物が育っていないんですよ。いま収穫できるのは、冬越しした玉ねぎとニンニク、あとルバーブ。夏に向けて2種類のオクラ、4種類の豆類、2種類のトマトなどを育てています。あと、ビーツや葉物系、エンダイブとか白にんじんや紫にんじんといった、少し珍しいものも。周辺のカフェやレストランが珍しい野菜を探しているし、自分も料理に使いたいから、普通に手に入るような野菜は別に自分が育てなくてもいいと思いまして」
収穫した野菜は近所の市場に卸しているものの、根本にあるのは自分の家族や知人たちに食べてもらいたいという思い。労力と費用が膨れ上がってしまいますが、有機栽培に共感してくれるひとに届けたいという気持ちが、渡邉さんの農業を奮い立たせます。
「ここの前に借りていた隣町の畑では、なにを植えても立派な野菜が育ったんですよ。もう、自分に才能があるんじゃないかって勘違いしちゃうくらい。でも、あとから知ったんですけど、土に化成肥料が使われていた。化成肥料って別に悪いものじゃないし、効率よく育てられるから日本の農業を支えてきたことも分かっています。でも、自分がやりたいのは有機栽培。農薬を使わず、野菜くずや落ち葉などで作った堆肥を使って育てたいんです」
植物に必要な栄養を正しく補給でき、即効性もあるため扱いやすいのが化成肥料。しかし、使いすぎると土壌の微生物が減少し、土中の生態系が崩れてしまう恐れもあるそうです。それに気づいた渡邉さんは、野菜を育てる前に、土を育てようと考えました。
「野菜くずや落ち葉が微生物によって堆肥となり、それを使ってまた野菜を育てる。その循環を畑のなかで少しでも再現したいと思っています。自然農の考え方なんですけど、人間が手を加えなくても森は育つじゃないですか。できるだけ、それに近い自然な循環で野菜を作りたいと思っています。でも、思い通りにならないことの連続ですよ。自然を相手にするのは、人間がコントロールできないことばかりなので。自然と向き合い続けることは難しく、同時におもしろいと思います」
農業において、どれだけ手を尽くしても、ひとの力ではどうにもできないものがたくさんある。そのひとつが天候です。近年、全国各地で歴史的な酷暑を記録していますが、避暑地である軽井沢も以前より暑さを感じるようになったと渡邉さんは話します。
「去年まで、畑にポンプで水を引いていなかったから、25Lのタンクを使って、何度も何度も水やりをしていたんですよ。でも、水をまいても2時間くらい経ったら乾いちゃっていました。種から育てた苗を定植しても、翌日には暑さで溶けちゃったこともあります。ぼくの畑の保水力がまだ足りていないこともあるだろうけど、梅雨を利用したり、時期をずらしたりして、暑さとうまく付き合っていかなきゃいけないと思っています」
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