長く使えるものをつくりたいと常に思っている。
ひととおりサップを楽しんだあとは、すこしだけ休憩を挟んでご飯の支度に取り掛かります。



エプロンを着て、焚き火台で火をおこし、ソーセージとオニオンをシンプルな味付けで調理。持ってきたギアを自在に操りながら、手際よく料理をする姿に見とれてしまいます。
「自分はものづくりをしているので、デザインしたものや買ったものをこういう場所に持ってきて、使い勝手をチェックするのが楽しかったりもします。こういうフィールドでいろんなものを使ってみたいという好奇心があるんです」

朝倉さんがデザイナーを務める〈ホーボー〉は、街中で使えるバッグや小物類はもちろん、こうしたアウトドアに対応するプロダクトに至るまでラインナップが充実しています。そのどれもがユニークなデザインと実用的な機能を兼備していて、なおかつ高い品質でつくられているところも魅力です。
「パッと見ただけでは気づかないけれど、触れてみたり、実際に使ってみて気づく便利さにぼくは惹かれます。そういうアイテムをたくさん使いたいし、そういうものづくりをしたいという気持ちがありますね」

「たとえば、今日持ってきたイスやテーブルは〈トラック ファニチャー(TRUCK furniture)〉という大阪の家具屋さんと一緒につくったものです。ものづくりにこだわる家具屋さんで、椅子の手すりやテーブルを見てもらうとわかると思うんですが、木の質感がすごくいいんです。それに合わせてパイプはマットでザラザラとした質感にして重厚感のある仕上がりにしているんですけど、実際に持ってみるとすごく軽いんですよ」

「椅子に使ってるのは〈ホーボー〉でもよく使っているレザーなんですけど、撥水加工をしているので急に雨とか降っても大丈夫な仕様になっています。色がチャコールグレーなのは、家の中でも使いやすいようにと思ってのことです。このご時世で自宅で過ごす時間が増えている人も多いと思うので、ぜひご自宅でも試してみてほしいです。焚き火に合わせた高さになっているので、通常の椅子や地面に座るのとは異なる目線で視界が広がるのがおもしろいと思いますよ」
今年でブランドスタートから16年目を迎えた〈ホーボー〉。いまでこそ、ファッションと機能を融合させたバッグ、アクセサリーブランドは多数存在していますが、〈ホーボー〉はそのパイオニア的存在。長い間ブランドを続けてきたからこその説得力がプロダクトに現れています。
「素材感も含めて、使っていくことでその人らしい表情が現れてくるというか、長く使えるものをつくりたいと常に思ってます。制作の段階でサンプルを試しに使ってみたりしながら、創意工夫してるんです。それに16年やっていると、過去につくってきたものもたくさんあるので、それを参考にできたりもします。バッグも服と一緒で旬があるので、むかしのアイテムがいままた新鮮に感じるということもある。そうやって過去から学びながらアイテムをアップデートすることができるんです」


今後のブランドのビジョンや目標について尋ねると、こんな回答が返ってきました。
「いままで続けてきたことをこれからもしっかりとやっていきたいですね。息が長いブランドには、それができるだけの理由があると思うんです。ブレない強さというか、同じことをきちんとやり通す芯の強さを感じるブランドに成長していきたいです。とはいえ世の中も変化していますから、それに対応できる柔軟さも養っていきたい。地に足をつけながらも、フットワークは軽くいたいですね。あとは挑戦することも忘れないように。不安になることも正直ありますけど、どんなときでもしっかりと前を向いていたいです」

日常から解放されて普段よりもっと広い視野を得られる。
昼食を食べ終えるころ、西湖には涼しい風が優しく吹き、気持ちのいい空気が流れていました。「カングー」に乗って都会から自然の中へとやってきた今回。都会とちがって情報量がすくないため、一つひとつのことに集中ができて、自分らしいペースを掴みやすくなります。
「クルマって、やっぱり切り替えのスイッチになりますね。モノを運んだり、移動の手段として見てしまいがちですけど、ぼくにとってはこうして非日常的な場所だったり、新しいところへ行くためのツールでもあります」


都会から1時間ちょっとの時間をかけて訪れた西湖。日々のルーティンから抜け出し、その“1時間ちょっと”の距離感を移動するだけで、得られるものがたくさんあります。
「さっきの話と重複しますがが、やっぱり自然へ来ると視界が開ける感じがする。それはフィジカル的にもそうですし、メンタル的にもそうなのかもしれません。都会だと物事との距離感がすごく近く感じるんですけど、それが自然へ訪れるだけでパッと距離が開ける感じがします」

早朝に東京を出発して、1日の疲れの癒しを求めるように遠くを見つめる朝倉さん。最後にこんなことを話していたのが印象的でした。
「東京にいるといろんなことを同時進行でこなさないといけないですが、いざ外へ出てみると、そこから解放されて普段よりもっと広い視野を得られる感覚があります。都会での生活を俯瞰してみることができるというか、また別の視点で自分や周りのことを見つめられる。それって、都会を道をクルマに乗って数十分動き回るだけでは味わえないものだと思うんです。自然に身を置いてはじめて感じられるものがあります。それがキャンプやアウトドアアクティビティをすることの魅力だと思いますね」
