奥田民生が、女性ボーカルものをあまり聴かないのはなぜか?

ー 音楽に話を寄せると、服と同じように民生さんの音楽性も、変化はしつつも軸は変わらないですよね。
奥田: そうですね。自分のiTunesにある、昔よく聴いていた曲をいまでもたまに聴くんですが、好きな度合いは変わってないですよね。好きなギターの音や演奏とか。当時よりも、もっといい音や曲というのはもちろんわかってますけど、大元の「この曲が好きだから、こうなってきた」っていうものは変わってないんだなと。それは進歩や進化とは関係ない。
ー 最近の曲や新しいジャンルの曲は聴くんですか?
奥田: 聴こえて来て、これはなんだろうという曲はあるんですけど、あえて新しいものを聴こうというのはないですね。さっき言った、ギターの音や演奏を、かっこいいと思うかの一つに自分が真似できるかどうか、という視点があるんです。だから、僕はあまり女性ボーカルものを聴かない。真似してもな…っていうのが浮かんできてしまう。で、そうやって聴いていると、できる・できないが出てくるわけで、だからあまり新しいものに手を出せない。それでも奥が深くて、音楽を続けてあっという間に30年が経つわけですから。
ー ネガティブな意味ではなく、これからも自分を飽きさせないようにして、これからも曲を作り続けていくんでしょうか?
奥田: そうですね、曲を作る理由も少しずつ変わってきてると思います。最初は、こういうことができますよ、こういう曲を作れますよっていう自分をアピールするため。でも、奥田民生を知ってくれている人もある一定数はいるか、くらいになってくると、変わりますね。自分の能力を見せるために曲を作るんじゃなくて、何かのためだったり、それこそ人と一緒にやることがその理由になる。一見、そっちの方が楽をしているようですけど、やはり楽しいんですよね。もういまは、自分を出す、という年でもないと思ってます。もうこれまでに出して来たから、いいやと。でも、そんなことばかり言ってて、同じような曲ばかりというのもまずいんで、ここは頑張らないとね(笑)。「怠けているイメージですけど、最近本当に怠けているじゃないですか(笑)?」って言われても、それは仕事としてよくない。