まるで楽器のように感じるターンテーブル。

ー まあまあ(笑)。ところで、おふたりとも最初のターンテーブルが〈テクニクス〉だったんですね。そこには何か理由があったんですか?
依田:買おうと思ったときにMU-STARSの藤原さんへ相談したのですが、〈テクニクス〉だと言われて、うん、そうかと従いました(笑)。
サイトウ:ちなみに僕も買うときに藤原くんに相談してます(笑)。やっぱりターンテーブルといえば、のブランドですよね。僕も昔から憧れのアイテムでした。友達が高校の入学祝いに買ってもらっていて、そんな光景を隣で見ながら、いつかは手に入れたいって思いました。ちなみにいまも最初に買った「SL-1200MK5」を使っているんですけど、全然壊れなくて、それもすごいですよね。
依田:本当にタフですよね。僕が〈テクニクス〉に初めて出会ったのは、高校生の頃。親しい友人が〈テクニクス〉のターンテーブルを買ったんですが、彼がヒップホップを好きで、Bボーイだったんですよ。それで、ヒップホップ→Bボーイ→〈テクニクス〉という図式が頭の中に構築されていったんです。その友人が垢抜けててオシャレにも気を配っていたから、そういう世界のものなんだなって思ったのがすごく印象に残っていますね。
サイトウ:僕とは世代が違うけど、その感覚はわかるよ。僕ら世代はCDよりもレコードの時代だったしね。でも、そもそも「DJってどんな存在なんだろう?」って時代だったんです。雑誌ではDJと共に〈テクニクス〉のターンテーブルが機材として掲載されているんですが、ターンテーブルと家庭用のレコードプレイヤーは全然違う形なので、もうデザインからして新鮮だったんですよ。なんだこれはと。初めて友人の家で現物を見たときは、めちゃくちゃかっこいいなって思いましたから。
ー 今日はおふたりがお持ちの「SL-1200」シリーズの最新作「SL-1200MK7」を持ってきたのですが、現在も〈テクニクス〉のターンテーブルは機材としての魅力を感じますか?
サイトウ:間違いなく機材として性能込みで魅力的なのですが、僕にとっては楽器のような印象があります。鳴ってる感があるというか。レコードをかけるときに楽器を鳴らしているような、そういう感覚があります。レコードが回って音が鳴っているさまはもちろん、たとえば、ピッチを変えられるツマミ部分を持ったときの手の感触も楽器のように感じてしまうというか、いい楽器をさわったときのような独特の感触があるんですよね。普通のターンテーブルとはやっぱり何かが違う、そんな特別感があります。
依田:それに純粋にかっこいいですよね。これは少し話がそれますが、オーディオオタクの友達がDJ用ではなく、リスニング用途でレコードプレイヤーを買おうってときに、各社のスペックを調べたらしいんですよ。そうしたら、停止状態から回したときに速度が安定するスピードが〈テクニクス〉が、ずば抜けて早かったらしくて。回転の安定性とかを吟味してもベストだったというか、〈テクニクス〉しか候補に残らなかったと。オタク目線でも高い信頼性があるのってすごいことじゃないですか。そのデータの信憑性はさておきですけど(笑)。
ー (笑)。ところで、いま現在、何かおふたりでやってみたいことや、計画していることなどはあるんですか?
依田:いまのところ、ジュンさんとふたりで何か取り立てて、ということはないです(笑)。
サイトウ:あはは、そうですね(笑)。
依田:でも、何かお誘いいただけたらいつでもお手伝いします、という気持ちですね。DJという意味では、いまはコロナ禍もあって、なかなか以前のようにできないですけど、もし状況が変わって僕みたいなDJの端くれでもプレイしていいような時代になったら、またレコードオンリーでDJをやりたいと思っているんですよ。

ー DJを始めてからかと思うのですが、〈カップアンドコーン〉といえば自転車とハードコアパンクというイメージがありましたが、少しデザインにも変化がありましたよね。
依田:最初は自分が好きな自転車とパンクの要素を織り交ぜたデザインとかを考えてやっていたんですけどね。もちろんいまもパンクもハードコアも自転車も大好きなのですが、現在進行形ですごく夢中になっているのはハウスなどのダンスミュージックだったりもするので、このタイミングでしっかり好きなことに向き合おうと思って。自分から気になるレーベルへ連絡を取って、プロダクトを製作しているんです。