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FASHION ISN’T DEAD.いま売れているファッション。前編
MONTHLY JOURNAL MAR.2021

FASHION ISN’T DEAD.
いま売れているファッション。前編

服が売れないと言われる日本のファッション業界。年々下がるアパレル消費、相次ぐ大手企業の破産やショップの閉店など、目を背けたくなる報道ばかりが目立ちますが、実はその裏でしっかり売れてるものもあるんです。例えば、ステイホームで需要高まるルームウェア、ベストから一気に火がついたフィッシングウェアなんかがそう。でも、それだけではありません。今回のマンスリージャーナルでは、隠れた人気ブランドやヒット商品にフォーカス。ファッションに精通する5人のインタビューからいまの時代に求められているものを探ります。前編では、いま話題のブランドを世に送り出している「アンシングス」の代表・重松一真さんと、「ビームス」のメンズカジュアルチーフバイヤー柴崎智典さん、そしてスタイリストとして活躍しながら自身のブランド〈サンセサンセ〉も手掛ける梶雄太さんに話を聞きました。

  • Photo_Shintaro Yoshimatsu, Yuco Nakamura
  • Text_Naoki Masuyama, Shogo Komatsu
  • Edit_Yuri Sudo

PROFILE

梶雄太

1998年からスタイリストとしてのキャリアをスタートし、雑誌や広告、ブランドのルックなどを手がける。2007年頃からはフォトグラファーとしても活動開始。そして20年から、ブランド〈サンセサンセ(SANSE SANSE)〉をディレクションする。

感覚で反応してしまうブランドがおもしろい。

ー コロナ禍となり、スタイリストとして、なにか感じている変化はありますか?

梶:正確な答えは分かりませんが、今まではユーザーに寄り添って優しく答えを提示することが多かったと思います、一般的には。だけどコロナ禍になり、その答えが分からなくなった状況ではないでしょうか。

ー それはお仕事から感じたことですか?

梶:そうですね。以前だったら、ブランドやメディアがイメージを持っていて、そこにできるだけ近づけてほしいという依頼が多かったように感じます。でも最近はクライアントから「好きにやってください」と、イメージづくりまで我々スタイリストに任されることが増えた気がします。だから、僕は僕なりに思いっきりできることが広がりました。

ー 〈サンセサンセ〉をディレクションしていますが、そちらはいかがでしょう?

梶:スタイリストとして、特に僕のやり方は、売れているとか、売れていないっていうのは必要な情報ではありません。でも、2年くらい前から、〈サンセサンセ〉をやらせてもらって、今まで売れる、売れないに関わっていなかった僕が、数字という現実的な部分と対面する楽しさを知れたように思います。

ー 〈サンセサンセ〉は、デビューからほぼコロナ禍でしたね。

梶:そうですね。でも不思議と自信があったんですよ。それは、自分なりの答えを持っていたから。基本的にぼくはスタイリストとして、身の回りのことや、自分が思うことを形にしてきたので、そこにトレンドはほとんど関係ありませんでした。〈サンセサンセ〉も、ぼくなりのファッションという言葉を噛み砕いてやっているので、他のブランドと畑が違うと思うんですよ。案の定、コロナ禍でも伸びたので、自分のなかで答え合わせができました。

ー トレンドのど真ん中ではないところに、〈サンセサンセ〉が位置すると。

梶:そうですね。いまの服って、いい素材やいい製法、と“いい”を重ねていくじゃないですか。加点方式で、満点を採ろうとするような。でも、時代が変わって洗練されたのか、満点である必要がなくなりました。でも、それと同時に、なん年代の軍モノとか、ヘリテージとか、そういう分かりやすい言葉が、ブランドの看板の代わりになって、トレンドになっている気がしていて。だから、そうじゃないものを探すと、逆に目立つんです。人間もそうだけど、パーフェクトだけが美しい訳じゃない。服って、自分の感覚で探すから、楽しいと思うんですよ。

ー たしかに、感覚は大事ですね。

梶:ですので、やりたいことをやっているブランドのほうが気になっちゃいます。その理由は、分かりませんが、シルエットやバランスを含めて、「おや?」と反応しちゃうんですよ。匂いだったり風通しのよさだったり、心地よさ、ブランドの在り方が、服から感じ取れるアイテムが好きで、今回ピックアップさせてもらいました。

〈ストックナンバー〉上からハーフジップスエットシャツ / モカシンブーツ、¥22,000+TAX / ¥40,700+TAX(STOCK NO:、090-1197-7326)

ー ご紹介いただくひとつめが、〈ストックナンバー〉です。2点あり、1点目がモカシンブーツ。

梶:「この靴、なんだろう? でも、〈クラークス〉じゃなさそうだ」って引っかかって、「それ、なに?」って聞いちゃう訳です。履いているひとに教えてもらうことで、自分が反応した理由が判明していく。

ー 感覚で反応した部分が、理解できていくんですね。そして次が、ハーフジップのスエットです。

梶:ハーフジップのスエットは、ベーシックでシンプルだけど、ありそうでない。ぼくが気になったのは、些細な理由なんですけど、その些細な理由が大事だと思います。ずっとやっていることは変わっていないとは思いますし、意識しているわけじゃないと思いますけど、気づけばいまっぽい。好きなものをつくっているのが伝わってきます。

〈フミヤヒラノビスポーク〉ビスポーク ブラック × ホワイト ストライプ スーツ、¥450,000-(03-6712-6625)

ー ふたつめは〈フミヤヒラノビスポーク(Fumiya Hirano Bespoke)〉のスーツ。

梶:ロンドンから帰ってきたばかりだったみたいで、ぼくも調べて、やっとたどり着いたブランドです。ちょっと前に、スタイリングで使うスーツを探していて、その時に初めてお伺いしました。アトリエにお邪魔したら、なんとなく居心地のよさを感じたんですよ。スーツづくりと真摯に向き合っていたし、平野さんも話しやすくて。すごく丁寧につくっているのに、いやらしくない、平野さんの落としどころが腑に落ちた訳です。

〈マスダ〉サンマルタン Tシャツ 5L、¥1,610+TAX(ユニフォーム1公式サイト

ー そして、こちらのTシャツは?

梶:〈マスダ(Masuda)〉という、国産のボディブランドです。ブランクボディのTシャツは、20年前から好きでよく着ているんですけど、ここ数年、着こなしているひとが増えましたよね。みんなトレンドとは違うスタイルを追求した結果、ボディブランドでいいんじゃないか、という風潮になったと思っています。そのなかで、国産のボディブランドって、多くはないから、おもしろいな、と。他の定番ボディブランドとは違うところがいいと思います。

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